2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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デパケンでカルニチン欠乏症?

デパケンで足がつる?

デパケンによる副作用にカルニチン欠乏症がある。カルニチンが欠乏すると足がつる、こむら返りを起こすことがある。

カルニチンは、リジンがメチル化されたアミノ酸誘導体で、脂肪酸をエネルギーとして利用するための必須栄養素です。主に肝臓と腎臓において、リジンとメチオニンから合成されるほか、鶏肉や魚肉、乳製品などの動物性食品の摂取によっても補われる。体内に入ったカルニチンは、骨格筋や心筋、肝臓などの組織に分布するが、摂取量の低下、吸収の低下、遊離カルニチンの排泄の増加や、有機酸・脂肪酸代謝異常症などにより、カルニチン欠乏症を来すことがある。臨床症状としては、意識障害、痙攣、筋緊張低下・筋力低下・重度のこむら返り・重度の倦怠感、横紋筋融解症などが表れる。

カルニチン欠乏症は、生合成量が少なく、また貯蔵部位である筋肉量が少ない小児で発症しやすいが、小児特有のものではなく、小児から成人まで幅広い年齢層で発症し得る。例えば、⑴先天性代謝異常症患者、⑵腎不全により血液透析・腹膜透析を受けている患者、⑶カルニチンを含まない経腸栄養・完全静脈栄養の患者、などでも起こり得る。

薬剤性のカルニチン欠乏症を来す薬剤として、バルプロ酸ナトリウム(デパケン/セレニカ)、ピボキシル基を有する抗菌薬(セフカペンピボキシル塩酸塩水和物(フロモックス)、セフジトレンピボキシル(メイアクト))、プラチナ製剤(シスプラチン)などが挙げられる。

カルニチンは主に尿細管で再吸収される。カルニチンの消化管吸収、血液から細胞への分布、腎臓での再吸収は、主に細胞膜のナトリウム依存性高親和性カルニチントランスポーターのOCTN2を介して行われるが、バルプロ酸はOCTN2を阻害し、カルニチンの腎尿細管での再吸収を阻害する。

カルニチンの役割は?

エルカルチンというカルニチン欠乏症に使う薬がある。
成分はレボカルニチン。カルニチンです。

カルニチン欠乏の原因としては、先天性代謝異常症によるものや、肝硬変など後天的医学的条件によるもの、さらには長期間の透析や薬剤の投与などの医療行為によるものがあります。

カルニチン欠乏症というのは、その名の通りカルニチンが欠乏した状態。
カルニチンってサプリメントで売られていますが。
脂肪を燃えやすくしてくれる成分としてダイエット目的で使われたり、その際にエネルギーが発生することで慢性疲労に使われたりする。

それ以外にも色々な働きがあります。
カルニチンはミトコンドリアの働きに影響を及ぼすらしい。
ミトコンドリアへの脂肪酸の運搬の役割を担うのがカルニチン。
カルニチン欠乏状態だと脂肪酸β酸化ができず、糖新生が行えないため、低血糖を来たします。

体内のアンモニアを尿素に分解する尿素サイクル。
これもミトコンドリア内で行われるので、カルニチン欠乏状態だと高アンモニア血症になる。

デパケンでカルニチン欠乏?

話をもどして、エルカルチンの添付文書に、

バルプロ酸投与による二次性カルニチン欠乏症患者において、レボカルニチン50mg/kg/日 経口投与により、高蛋白摂取時の血漿中アンモニア濃度の上昇抑制が認められた。

とある。
デパケンでカルニチン欠乏症が起こるらしい。

デパケンの副作用には、カルニチン減少、そしてそれによる高アンモニア血症が記載されている。
そして、デパケンの禁忌には、「尿素サイクル異常症の患者[重篤な高アンモニア血症があらわれることがある。]」とある。

バルプロ酸が尿素サイクルに必要な酵素、カルバミルリン酸合成酵素Ⅰの活性を阻害するという話。

高アンモニア血症を伴う意識障害があらわれることがあるので、定期的にアンモニア値を測定するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

とあるので、意識障害まで出たらデパケンは服用中止ですが、どうしてもデパケンを止められないような難治性のてんかん患者ではエルカルチンを併用することもあるらしい。

バルプロ酸による高アンモニウム血症の機序

人は、ミトコンドリア内のカルバモイルリン酸シンターゼⅠ(CPS-Ⅰ)によって、生体にとって有毒であるアンモニアを尿素に変えて無毒化する。

カルニチンは、生物がエネルギーを取り出すために利用する脂肪酸を燃焼の場であるミトコンドリア内部に運搬する役割を担う。

バルプロ酸による高アンモニア血症の機序は、
①バルプロ酸ナトリウム代謝の過程でプロピオン酸、バルプロイル-CoAが増加し、尿素サイクルにおいて重要な酵素CPS-Ⅰの活性が阻害される
②カルニチン低下によって脂肪酸のミトコンドリア内への取り込みが低下し、β酸化が抑制されCPS-Ⅰの必須活性化因子であるN-アセチルグルタミン酸の産生が低下することでCPS-Ⅰの活性が低下する
という理由で、アンモニアが上昇することが考えられている。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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