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リピディルが糖尿病性網膜症に効く?
公開. 更新. 投稿者:眼科.この記事は約6分44秒で読めます.
2,281 ビュー. カテゴリ:リピディルと糖尿病性網膜症
日本人成人の失明原因第1位である糖尿病性網膜症に脂質異常症の薬リピディルが効くらしい。
2型糖尿病患者を対象に行われた大規模臨床試験であるACCORD eye studyやFIELD study では、フィブラートの使用により糖尿病網膜症の進展が抑制される可能性が示された。
リピディル(フェノフィブラート)が糖尿病性網膜症の進行を抑制する作用機序は不明ですが、糖尿病性網膜症に対する効果と血中脂質改善作用は独立したものと考えられ、試験結果を示した論文では、「網膜症の発症機序においては、血清脂質よりもむしろ網膜における脂質輸送が重要である可能性がある」と考察されています。
網膜に高頻度で発現しているPPARαの活性化を介した炎症抑制作用や臓器保護作用などが推察されている。
フェノフィブラートのヒト網膜内皮細胞のアポトーシスを抑制する作用、糖尿病性網膜症で増加している炎症性サイトカインを減少させる作用、内皮細胞や酸化ストレスを抑制する作用、などが寄与しているとも。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・糖尿病神経障害とともに糖尿病の3大合併症として知られている。
高血糖の持続により網膜の細い血管が傷害され、血管癌や出血、血液成分の沈着などを引き起こし、物を見る中心である黄斑部に病変が及ぶと視力が低下する(黄斑症)。
さらに進行すると、網膜の虚血を補うため新生血管が発生し、硝子体へ伸びてくる(増殖網膜症)。
新生血管は非常にもろく、容易に破れて硝子体出血を起こしたり、増殖膜を形成し網膜剥離の原因となる。
糖尿病網膜症は、日本人成人の失明原因の第1位となっている。
重症例を除き自覚症状がない場合が多く、気づかないうちに進行しているケースが少なくない。
少なくとも年1回は眼科を受診するのが望ましい。
失明の原因は糖尿病?
糖尿病で目の病気の合併症といえば、糖尿病3大合併症のひとつ、糖尿病性網膜症です。
日本の中途失明の第2位を占めます。
1位は緑内障。
網膜は無数の細小血管で栄養補給されていますが、高血糖が続くとこの細小血管が損傷されて血液が漏れたり詰まったりするようになります。
この状態が続くと、からだは血液が届かないところに栄養素や酸素を届けようとして新しい血管を伸ばし始めます。
これが網膜や硝子体の内に生じて硝子体出血や網膜剥離を起して視力障害に陥ります。
新生血管は構造が弱いので容易に出血してしまいます。
白内障や緑内障のリスクも高まるので、糖尿病患者には必ず眼科も受診してもらったほうが良いです。
糖尿病網膜症の末路
糖尿病の三大合併症、網膜症、腎症、末梢神経障害。
このうちの1つ、糖尿病性網膜症について。
糖尿病によって血糖値が高い状態が長く続くと、血管に多くの負担がかかり、血液の流れが悪くなってきます。細かい血管が密集している網膜は、高血糖の影響を非常に受けやすいため、変形したりつまったりします。血管がつまると網膜のすみずみまで酸素が行き渡らなくなり、網膜は酸欠状態になってしまいます。そこで酸欠状態を補うため、新しい血管(新生血管)を作って酸素不足を補おうとします。しかし新生血管はもろいために容易に破れて出血を起こします。また網膜に増殖組織(増殖膜)が張ってきて、これが網膜を引っ張り、網膜剥離を起こすことがあります。
糖尿病の影響の表れやすいのは、細い血管。
細い血管が多い体の部位が、眼、腎臓、手先、足先、というわけだ。
糖尿病になり、糖尿病性網膜症になり、新生血管が作られ、破れ、出血(眼底出血)する。
その出血が硝子体の中にたまると(硝子体出血)、飛蚊症が見えたりする。
眼底出血が起きて、網膜にかさぶたのような膜ができると、それが網膜を引っ張り、網膜が剥がれる。
いわゆる網膜剥離。
網膜が全部剥がれてしまえば失明。
これが糖尿病から失明に至る流れ。
足を切断するのも、透析も嫌ですが、個人的に一番嫌なのは失明だと思う。
糖尿病網膜症とは?
網膜は、眼底にある薄い神経の膜で、物を見るために重要な役割を果たしている。
網膜には光や色を感じる神経細胞が敷き詰められ、無数の細かい血管が張り巡らされている。
高血糖状態が続くと、網膜の毛細血管が徐々に損傷を受け、糖尿病網膜症の最初の段階である単純糖尿病網膜症になる。
この段階では、毛細血管が詰まってもろくなり、さらにそれによって血流が滞ると、血管の弱い部分がコブ状に膨れて毛細血管瘤ができる。
毛細血管瘤には圧力がかかっているので、血液中の水分、蛋白質、脂肪が血管の外へ漏れ出し、浮腫を起こしたり、網膜の深層に硬性白斑と呼ばれる白いシミができたりする。
また、毛細血管瘤が圧力に耐え切れなくなると、破裂して点状出血が見られる。
だが、この段階では自覚症状はほとんどない。
血管の閉塞、出血、沈着物が増加すると、網膜の毛細血管における血流が悪くなり、広範囲で閉塞して、第二段階の前増殖糖尿病網膜症に至る。
十分な酸素が行き渡らなくなるため、網膜は酸欠状態になる。
そのため生体は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を発現し、新しい血管(新生血管)を生やして酸素不足を補う準備段階に入る。
硝子体の近くにある網膜の表層には、軟性白斑と呼ばれるシミができる。
単純糖尿病網膜症に比べ、病変部は、硝子体により近い網膜表層に及ぶようになる。
この時期になると、目がかすむなどの症状を自覚することが多い。
最終段階である増殖糖尿病網膜症になると、新生血管が網膜や硝子体に向かって伸びてくる。
新生血管はもろいため、容易に破裂し、出血を起こす。
そして、出血したところにまた新生血管ができ、再出血を繰り返すようになる。
眼球の大部分を占める硝子体に出血が及ぶと、視野に黒い影やゴミのようなものが見える飛蚊症を自覚したり、視力が急激に低下したりする。
出血した部分は線維組織に置き換えられ、網膜正面に増殖膜が張ってくる。
硝子体がこのような状態になると、引きつれが起こり、網膜も一緒に引っ張られて網膜剥離を起こすことがある。
こうなると失明リスクが極めて高くなる。
糖尿病を発症してから5年以上たつと網膜に障害が起こり始め、25年以上で8割近い糖尿病患者さんに網膜症が生じるという報告があります。
網膜症は徐々に進行し最終的には失明に至る場合もあります。日本では年間役3000人が糖尿病を原因として失明しており、新たに失明する患者さんの原因の第1位です。
網膜の血管壁細胞の変性、血流障害、血液成分の漏出が原因で、出血・白斑・網膜浮腫などの初期症状が発症します。
高度に進行すると黄斑症を起こしたり、網膜前・硝子体内に新生血管が生じて硝子体出血や網膜剥離を起こして視力障害に陥ります。
糖尿病白内障、緑内障
糖尿病に関連する眼疾患として、ほかには糖尿病白内障や血管新生緑内障などがあります。
糖尿病白内障では霧視と視力低下、血管新生緑内障では視野狭窄や頭痛が起こります。
糖尿病白内障では高血糖により水晶体の変性を起こし、水晶体が白濁します。
水晶体の中心部より起こることが多く、早期に視力が低下する点が老人性白内障との相違点です。
カリーユニは糖尿病の処方?
糖尿病患者は眼科の受診を勧められることが多い。
網膜症や白内障のリスクが高いので。
なので、半年に1回程度、眼科の定期検診を受けているという人は多い。
で、そういう患者さんを引き留めたいのか、処方料が欲しいのか、好意的に受け止めれば、次回の診察時期を忘れないように、ということでなのか、本当に必要なのかどうなのかわからないような目薬が処方されたりする。
糖尿病患者は白内障のリスクが高いし、手術まではまだ大丈夫だけど、白内障気味の患者さんにカリーユニが処方されたり。
ドライアイ気味とか、眼がゴロゴロすると訴えれば、ヒアレインが処方されたり。
疲れ目を訴えれば、サンコバが処方されたり。
眼科の受診目的は定期検診なので、ついでに処方された薬。
最近のHbA1cとか聞いた方が話は広がるかも。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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