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アミノレバンは寝る前に飲む?
公開. 更新. 投稿者: 12,473 ビュー. カテゴリ:肝炎/膵炎/胆道疾患.この記事は約5分13秒で読めます.
目次
アミノレバンは寝る前に飲む?― 肝硬変患者と「夜の栄養補給」の重要性 ―

肝硬変の治療では、「薬」だけでなく「栄養管理」が非常に重要な役割を担っています。中でも近年注目されているのが、「寝る前に栄養を補う」という考え方です。
その代表的な方法が、アミノレバンなどの肝不全用栄養剤を就寝前に摂取することです。
・なぜ肝硬変ではエネルギー不足になりやすいのか
・なぜ寝る前の栄養補給が大切なのか
・アミノレバンはどんな薬(栄養剤)なのか
・正しい飲み方・注意点
について、できるだけわかりやすく解説していきます。
肝臓は「体のエネルギー工場」
肝臓は、私たちの体の中で「栄養の司令塔」ともいえる重要な臓器です。
主に次のような働きを担っています。
・糖質の代謝
・脂質の代謝
・たんぱく質の代謝
・ビタミン・ミネラルの調整
・有害物質の解毒
つまり、食べたものをエネルギーとして使える形に変える工場のような役割を果たしているのです。
ところが、肝硬変になると、この働きが大きく低下します。
肝硬変とはどんな病気か
肝硬変は、長年にわたって肝臓に炎症や障害が続くことで、肝臓の細胞が壊れ、硬く変化してしまう病気です。
主な原因としては、
・B型・C型肝炎ウイルス
・アルコール性肝障害
・脂肪肝(NASHなど)
・自己免疫性肝疾患
などがあります。
肝硬変が進行すると、
・肝細胞の数が減る
・血流が悪くなる
・代謝機能が低下する
といった変化が起こります。
その結果、「栄養をうまく使えない体」になってしまうのです。
肝硬変では「糖の貯金」ができない
健康な人の肝臓は、「グリコーゲン」という形で糖を蓄えています。
グリコーゲンとは、
ブドウ糖をたくさんつなげて貯蔵したエネルギーの貯金
のようなものです。
食事をすると血糖値が上がり、余った糖は肝臓にグリコーゲンとして蓄えられます。
そして、食事をしない時間帯(夜間や空腹時)には、このグリコーゲンを分解してエネルギーとして使います。
しかし、肝硬変になると、
・肝細胞が減る
・グリコーゲンを蓄える場所が少なくなる
ため、糖の貯金がほとんどできなくなります。
睡眠中に「早期飢餓状態」になる
肝硬変患者さんは、夜に眠っている間に問題が起こります。
健常者の場合
→ 一晩寝ても、グリコーゲンが残っている
肝硬変患者の場合
→ 数時間で使い切ってしまう
つまり、肝硬変の患者さんは、夜中〜早朝にかけてエネルギー切れ状態になるのです。
この状態は、医学的には
健常人の2〜3日絶食に相当する飢餓状態
とも言われています。
かなり過酷な状態です。
筋肉や脂肪を削って生き延びる体になる
エネルギーが足りなくなると、体は次の手段を取ります。
・筋肉を分解する
・脂肪を分解する
・アミノ酸をエネルギーに変える
つまり、自分の体を削って生き延びる状態になります。
その結果、
・筋力低下
・こむら返り
・疲れやすい
・朝からだるい
・体重減少
・サルコペニア(筋肉減少)
といった症状が出やすくなります。
この状態が長く続くと、予後(寿命)にも悪影響を及ぼします。
注目される「夜間就寝前捕食(LES)」
そこで考え出されたのが、
夜間就寝前捕食(Late Evening Snack:LES)
です。
これは、
寝る前に軽く栄養補給をして、夜の飢餓状態を防ぐ方法
です。
目安としては、
・200〜300kcal程度
・消化に負担が少ないもの
が推奨されています。
これにより、
・絶食時間を短縮できる
・筋肉分解を防げる
・朝の疲労感が改善する
といった効果が期待されます。
肝硬変ではBCAAが不足する
肝硬変患者では、アミノ酸バランスにも異常が生じます。
特に重要なのが、
分岐鎖アミノ酸(BCAA)
です。
BCAAには、
・バリン
・ロイシン
・イソロイシン
があります。
これらは、
・筋肉の材料
・エネルギー源
・肝性脳症予防
に関わる重要なアミノ酸です。
しかし肝硬変では、BCAAが著しく低下します。
アミノレバンとは何か
アミノレバンは、肝不全用に開発された特殊な栄養剤です。
特徴は、
・BCAAを多く含む
・芳香族アミノ酸(AAA)を少なくしている
・エネルギー補給ができる
という点です。
簡単に言えば、
肝臓が弱っている人のために作られた栄養補助食品
です。
薬というより「治療用栄養剤」に近い存在です。
寝る前に飲むとどうなる?
臨床試験では、
アミノレバンを3か月間、就寝前に1包(約200kcal)摂取
したところ、
・全身倦怠感の改善
・疲れにくくなる
・QOLの向上
が認められました。
そのため現在では、
寝る前のアミノレバン摂取は推奨されることが多い
のです。
ちなみに添付文書上のアミノレバンの用法は、「1日3回食事と共に経口摂取する。」となっており、寝る前の服用については確認が必要になります。
肝不全用栄養剤Q&A
Q1.飲めば寿命が延びる?
明確なエビデンスはありません。
ただし、
・栄養状態の改善
・肝性脳症の予防
・体力維持
には役立つと考えられています。
Q2.味はおいしい?
正直に言うと、
「おいしくありません」
という方が多いです。
そのため、飲み続けられない人も少なくありません。
フレーバーを活用するなど工夫が必要です。
Q3.ジュースに混ぜていい?
果物ジュースは避けてください。
酸性のため固まることがあります。
野菜系や専用フレーバーがおすすめです。
Q4.溶かす水の量は?
アミノレバンの場合:
1包(50g)+約180mLの水
が目安です。
Q5.作り置きしてもいい?
溶解後は10時間以内が基本です。
保存する場合は冷所で管理しましょう。
Q6.牛乳アレルギーがある場合は?
必ず医師に相談してください。
アミノレバンの作用機序
アミノレバンは、フィッシャー理論に基づいて設計されています。
肝不全では、
・BCAA ↓
・AAA ↑
という異常が起こります。
この比率を改善することで、
・脳内の偽神経伝達物質の生成を抑制
・肝性脳症を改善
する効果が期待されます。
フィッシャー比は約38と高く設定されています。
肝性脳症との関係
肝性脳症とは、
・意識障害
・ぼんやりする
・性格変化
・記憶力低下
などが出る状態です。
重症肝不全の代表的症状であり、病状評価の重要指標です。
アミノレバンは、これの予防・改善にも役立ちます。
まとめ:アミノレバンは「夜の命綱」
肝硬変患者さんにとって、
夜間の栄養不足は深刻な問題です。
その対策として、
・夜間就寝前捕食
・アミノレバンの活用
は非常に重要です。
ポイントをまとめると、
✔ 肝硬変では夜に飢餓状態になる
✔ 筋肉分解が進みやすい
✔ 寝る前の栄養補給が有効
✔ アミノレバンはBCAA補給に適している
✔ 継続が何より大切
「たかが栄養剤」と思われがちですが、
実際には生活の質と予後を支える重要な治療の一部です。
飲みにくさはありますが、主治医・薬剤師と相談しながら、無理なく続けていきましょう。




