2024年12月2日更新.2,476記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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保湿剤のエモリエント効果とモイスチャーライザー効果

保湿剤のエモリエント効果とモイスチャライザー効果

薬剤師

保湿剤のエモリエント効果とモイスチャライザー効果ってなに?

保湿剤には、エモリエント効果と、モイスチャライザー効果を有するものの2つがあります。

エモリエント効果とは、外用剤そのものが皮膚表面に被膜を作り、皮脂膜の代用をする効果のことです。
表皮に油脂膜をつくることで水分蒸発を防ぎ、角層を柔らかくする。

代表的な外用剤としてはワセリンがあります。

一方、モイスチャライザー効果とは、外用剤に含まれる水分と結合する成分が、角質層内で水分保持を行う効果のことです。
モイスチャライザーは天然保湿因子(NMF)など水分を保持する作用を持つヒューメクタントを含み、NMFを補うことで保湿作用を発揮する。

具体的には、尿素製剤、ヘパリン類似物質、といった製剤があります。

モイスチャライザーである尿素製剤やヘパリン類似物質含有製剤は2週間連用した場合では、エモリエントの白色ワリンに比べて、有意に保湿効果が高い。

どのタイプの保湿剤を選ぶかは、塗り心地、価格、合併症の有無などによりケースバイケースです。

エモリエントとモイスチャライザー

保湿剤は作用機序から、皮膚を覆うことで皮表に油脂膜を作り体内からの水分蒸発を防ぐ「エモリエント」と、NMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)を補う作用のある「モイスチャライザー」に分類される。

前者の代表がワセリン、後者が尿素製剤(ウレパール、ケラチナミン、パスタロン他)やヘパリン類似物質含有製剤(ヒルドイド他)だ。

これらについて保湿効果の指標となる伝導度を調べた結果、ワセリンに比べてモイスチャライザーの方が保湿効果は有位に高かった。小児では両者に差はないとする意見もあるが、少なくてもNMFが減少している高齢者などでは、モイスチャライザーを用いることは理にかなっている。

また、保湿剤には軟膏、クリーム、ローションの3つの剤形があり、一般的にはクリームが最も皮膚透透過性に優れるとされる(ヒルドイドソフト軟膏やザーネ軟膏やザーネ軟膏などは、商品名は「軟膏」でも剤形はクリームである点に注意が必要)。

ただし、角層除去皮膚ではローションの方がクリームに比べて透過性に優れ、正常皮膚ではその逆だったとの研究結果もある。

ローションは伸びがよいため、患者が指摘だと思って塗る量が、クリームより4割少ないとのデータもある。

ローションは必ずしもクリームに劣るわけではないことを念頭に、季節や使用部位などに応じて選択するといいだろう。

ただし、ヒルドイドローションには還元ラノリンが、ヒルドイドクリームにはラノリンアルコールが、それぞれ含まれている。

ヒルドイドソフト軟膏からこれらに切り替えた際、中にはかぶれる人もいるので注意したい。保湿剤は医療用医薬品以外にも、医薬部外品や化粧品など多く市販されている。

①皮膚の表面に油脂性の被膜を人工的につくり、水分の蒸散を防ぐ働きの保湿剤

白色ワセリン、プロペトやさらに純度の高いサンホワイトは、冬場などの乾燥がひどい皮膚やアトピー性皮膚炎のドライスキンに使用する。

べとつくのを嫌がられることがあるが、油脂膜をしっかりつくるため効果が長く持続する。

顔に塗るときはサンホワイトがよい。

アトピー性皮膚炎の炎症部位をステロイド外用薬で治した後、維持療法として使うのにも適している。

②水分と結合して保湿効果を発揮する働きの保湿剤

ヘパリン類似物質であるヒルドイドや、ヒアルロン酸を含有した市販のクリームなどは、水との親和性が高く、強力に結びついて水分子を放さない性質を利用している。

軽い乾燥肌の子どもの全身または露出部に塗るのに適している。

アトピー性皮膚炎の炎症部位や、乳児湿疹のある顔などに塗ると、かえって刺激や痒みを生じることがあるので注意が必要である。

あくまで、炎症のない乾燥のみの症状に使用すること。

ヒルドイドは血行促進作用もあるので、寒い季節の手足や耳に塗れば、しもやけの予防にもなる。

③天然保湿因子としての働きの保湿剤

尿素入り軟膏であるパスタロン、ケラチナミン、ウレパールなどは、角層の柔軟化作用と保湿作用を併せ持つので、手足や肘・膝の角質が厚くなり、ガサガサした皮疹を柔らかくしっとりとさせるのに適している。

アトピー性皮膚炎で掻き壊した部位のような、細かい傷のついた皮膚では、尿素による刺激が生じ、「ピリピリする」と嫌がることがあるので注意が必要である。

これは尿素による角質融解作用のためにバリア機能を低下させることがあるためで、アトピー性皮膚炎には用いにくい。

目や口の周り、外陰部など粘膜に近い部位にも刺激感が生じ、適さない。

④バリア機能を強化し、さらに保湿効果を発揮する働きの保湿剤

角層細胞間脂質である、セラミド、コレステロール、脂肪酸などを含む市販の保湿ケア製品が中心となる。

とくにセラミドは、実際の角層細胞間脂質の半分を構成している成分であり、最も保湿効果・バリア機能補強効果が高い。

植物から抽出した天然セラミドと合成セラミドがあり、セラミド成分を3%以上の高濃度に含有する製品が優れた効果を発揮するが、保険適用がないため高価である。

⑤その他の保湿剤

ビタミンEを含有するユベラ軟膏、ビタミンAを含有するザーネ軟膏、アズレンを含むアズノール軟膏、亜鉛華軟膏などが保湿剤として使われることもある。

ユベラやザーネは角化性の病変に使われ、アトピー性皮膚炎には向かない点は尿素軟膏と同様である。

アズノールは粘膜にも刺激が少なく嘗めてもいいので、唇の乾燥性病変に頻繁に塗るのに適している。

亜鉛華軟膏は単独よりも、アズノール軟膏と1:1で混合して保湿剤としてよく使われる。

アトピー性皮膚炎の保湿剤としても、少々の炎症がある部位でも刺激が少なく、またステロイド外用薬を塗った上からの重層法としてもよく使われる。

ただし、べとつき感や下着が汚れるなどの苦情も多く、使用感は決していいとはいえない。

保湿剤特徴
油脂性軟膏(ワセリン、プラスチベース、亜鉛華軟膏など)・コストが安い ・刺激感が少ない ・べたつき、衣類を汚すことがある
ヘパリン類似物質・保湿効果が高い ・べたつきが少ない ・塗りやすい
尿素・保湿効果が高い ・べたつきが少ない ・亀裂部位や炎症部位に塗ると刺激感が出ることがある
セラミド(キュレル、AKマイルドクリームなど)・皮膚の保湿機能を担う角質細胞間脂質である ・保険適用がないためコストが高い
その他(アズノール、ユベラ軟膏、ザーネ軟膏など)・比較的べたつきが少ない

保湿剤・保護剤

低下している皮膚の保湿性を補うためには、保湿性の高い親水性軟膏(水中油型、o/w型)や吸水性軟膏(油中水型、w/o型)を外用します。
また、傷害された皮膚のバリア機能を補充・補強または代償するためには、皮膚に対して保護作用がある油脂性軟膏を外用します。

【保湿を主としたもの】
●尿素含有製剤:角質内の水分保持作用、角質の融解作用があるため、乾燥や角質肥厚に対して使用する。亀裂部へは刺激となることがある。
●ヘパリン類似物質含有製剤:角質内の水分保持能が高く、環境の湿度の影響を比較的受けにくい。

【保護を主としたもの】
●ワセリン:作用時間が長く、刺激や感作性がない
●亜鉛華軟膏・亜鉛華単軟膏:局所の収斂作用、保護作用および軽度の防腐作用を持つ
●アズレン軟膏:抗炎症作用、創傷治癒促進作用などを持つ

保湿剤使用のタイミング

保湿剤の塗布は入浴後がよい。
肌になじみやすい。

入浴後は、角層が水和状態(しっとりした状態)で、保湿剤が角層になじみやすい。
入浴後は皮膚が滑らかで延びがよい。

尿素で保湿できるのか?

ウレパール、パスタロン、アセチロールなど、尿素の外用薬は皮膚科からもよく処方される。
尿素は天然保湿因子という皮膚の保湿成分です。
真皮の水分を保湿しているのがヒアルロン酸やコラーゲンで、表皮の角質層の潤いを保っているのが天然保湿因子やセラミドです。

尿素は水分子と結合するので、保湿作用があるという風にも言われますが、逆に皮膚から水分を奪い取ることもあり得る。
「保湿」という目的で尿素配合クリームを使うのは大した効果は期待できないような気がする。
「角質溶解作用」の目的で使われていることのほうが多い。
皮膚の浸透力を高めて、併用薬の効果を増すような働き。

尿素は尿だけではなく、肌の角質層にも含まれる天然保湿成分です。皮膚用外用薬や肌クリームなどにも広く使われますが、実は若い人の肌、とくに風呂あがりのかゆみをケアするには向かない成分なのです。

冬の寒さや乾燥で表皮の外側にある角質層の水分が失われ、皮脂の分泌が少なくなることによって起こるかゆみは、肌を保湿する必要があるはずですが、なぜ保湿成分である尿素ではダメなのか?

尿素のおもな効果として、保湿以上に「角質溶解作用」があります。

これは、ガサガサになった角質層を溶かして削りとるような作用なので、角質が分厚く堆積した高齢者の肌や、角化症と呼ばれる皮膚病には効果的ですが、若い人の乾燥肌の場合は、ただでさえ不足している角質をさらに削ぎとるので逆効果になってしまいます。

傷ついた肌に尿素を塗るとヒリヒリします。小児科だとヒルドイドとかワセリンみたいなのしか使わない。

尿素の働き

天然保湿因子の一つで水分保持作用のほか、蛋白変性作用、角質溶解作用もあり、皮膚を滑らかにして弾力性を増やす働きがある。

同様の働きをもつものには、アミノ酸、乳酸、クエン酸塩などがある。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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