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加齢臭とノネナールの正体
公開. 更新. 投稿者:皮膚外用薬/皮膚病.この記事は約4分55秒で読めます.
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加齢臭とノネナールの正体とは?

「なんだか自分の体がにおう気がする」「家族から“お父さん臭い”と言われてしまった」──。
40代以降になると、多くの人が気にし始めるのが 加齢臭 です。加齢臭という言葉自体は世間に広く浸透しており、ドラッグストアには“加齢臭対策”をうたったボディソープやシャンプーがずらりと並んでいます。
では、そもそも加齢臭とは何なのでしょうか?どんな仕組みで発生し、なぜ年齢とともに強くなるのか?今回はその原因物質「ノネナール」を中心に、加齢臭のメカニズムと対策について薬学的・皮膚科学的な視点からわかりやすく解説します。
加齢臭とは?
加齢臭とは、主に中高年層に特有の体臭の一種です。一般的には40歳以降に発生しやすくなる体のにおいを指します。
加齢臭の特徴:
・青臭く、脂っぽいにおい
・「古本」「ろうそくのロウ」「古い油」のような香りに例えられる
・シャツの襟元や枕に残りやすい
この加齢臭、実はしっかりとした科学的根拠があり、皮脂中の成分が酸化・分解されてできるノネナールという化合物がその正体とされています。
ノネナールとは何か?
ノネナール(2-ノネナール)は、不飽和アルデヒドの一種で、非常に揮発性が高く、においを放ちやすい物質です。特に脂質が酸化したときに生じる物質で、皮膚からにじみ出た皮脂の成分が酸化または分解されることで生成されます。
なぜノネナールが出てくるの?
年齢を重ねるとともに、皮脂の成分も変化します。若年層にはほとんどみられない「オメガ7不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸など)」が、40歳を過ぎた頃から皮脂に多く含まれるようになります。
このオメガ7系脂肪酸が…
・空気に触れて酸化される
・皮膚の常在菌により分解される
…このようなプロセスを経て生成されるのが、ノネナールなのです。
女性にも加齢臭はある?
加齢臭というと「中年男性特有のにおい」と思われがちですが、女性にも加齢臭はあります。特に閉経後、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少すると皮脂腺の働きが変化し、男性と同じように加齢臭の原因物質が増えてきます。
女性でも40代後半から50代にかけて、加齢臭を自覚するケースが多くなります。
30代の体臭「ペラルゴン酸」とは?
実は、30代頃から「加齢臭とは違うにおい」が出てきます。その原因物質が「ペラルゴン酸」です。
・酸っぱいにおいが特徴
・汗のにおいと混じるとより強くなる
・皮脂が酸化して生成される
このペラルゴン酸は男女問わず、皮脂の分泌が盛んな部位(頭皮・背中・胸元など)に発生しやすく、いわゆる“ミドル脂臭”の原因のひとつと考えられています。
ノネナールはどこから出ているのか?
加齢臭が特ににおいやすいとされるのが、「耳の後ろ」「首回り」「胸」「背中」などです。その中でも特に「耳の後ろ」は加齢臭の温床として話題にのぼることが多い部位です。
◆耳の後ろが臭う理由
耳の後ろが臭いやすい理由として以下の3つが挙げられています:
・皮脂腺が多く、皮脂が出やすい
・洗い忘れやすい部位で、皮脂が酸化しやすい
・他人の鼻に近いため、においが届きやすい
つまり、「出やすく、溜まりやすく、気づかれやすい」場所なのです。
加齢臭を強くするライフスタイルとは?
ノネナールの生成を助長するライフスタイルには以下のようなものがあります。
悪化要因
・脂っこい食事:動物性脂肪や揚げ物中心の食事が皮脂の分泌を増やす
・運動不足:新陳代謝が低下し、皮脂の代謝産物が残りやすくなる
・喫煙・飲酒:活性酸素の発生が促され、脂質が酸化しやすくなる
・ストレス:自律神経が乱れ、皮脂分泌のコントロールが崩れる
加齢臭対策:ノネナールを抑えるには?
◆食生活の見直し:
・抗酸化作用のある食品を積極的に摂取(緑黄色野菜、ビタミンC・E)
・肉や揚げ物よりも、魚・大豆などの良質な脂質に切り替える
・水をしっかり摂り、代謝を促進
◆運動習慣の確立:
・有酸素運動(ウォーキング、ジョギング)で汗をかき、代謝を上げる
・血流を改善し、皮膚の酸化物を流す
◆皮膚の清潔を保つ:
・耳の後ろ、首筋、背中など皮脂が多く洗い残しやすい部位を丁寧に洗う
・皮脂を取りすぎないよう、洗浄力が強すぎないボディソープを使用する
・清潔な衣類・寝具を保つ
◆ストレス管理:
・睡眠を十分にとる
・リラックスできる時間を意識的に作る
・深呼吸や軽いストレッチで自律神経を整える
市販の加齢臭対策製品は効くのか?
現在、ノネナールをターゲットとした製品が多数販売されています。これらの製品は次のような作用を期待して作られています。
・ノネナールを中和する香料の配合
・酸化皮脂を落とす専用洗浄成分
・皮脂分泌を抑える保湿剤
ただし、製品に頼るだけでは不十分です。根本的な対策は、生活習慣の改善とスキンケアの両輪によって成り立ちます。
まとめ:加齢臭は“年のせい”ではなく“代謝のサイン”
加齢臭は「老化の証」と思われがちですが、実際には皮脂の代謝や酸化が関係する“生理現象”です。若くても生活習慣が乱れていれば出やすくなり、逆に年齢を重ねても日々のケアで軽減することが可能です。
ノネナールという言葉を知ることで、加齢臭という現象に対して正しい理解が得られます。
加齢臭は避けられないものではなく、「防ぐことができる体のサイン」と捉え、日々の生活の中で上手に向き合っていきましょう。