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マイコプラズマはオリンピックの年に流行る?
公開. 更新. 投稿者:風邪/インフルエンザ.この記事は約5分41秒で読めます.
1,707 ビュー. カテゴリ:マイコプラズマ肺炎の診断
マイコプラズマ肺炎ってどうやって診断してるの?
オリンピックの年に流行るとされている、長引く咳の原因「マイコプラズマ肺炎」。
今年はパリオリンピックの年だったので、テレビでもマイコプラズマ肺炎に関する報道がされており、患者からも「咳が続くのはマイコプラズマが原因ではないか?」という相談を受けることもある。
発熱、全身倦怠、頭痛などの初発症状から3~5日後に乾性の咳が出始め、解熱しても3~4週間咳が続く。昔から「異型肺炎」として、肺炎にしては元気で状態も悪くないことが特徴とされてきたが、時に重症化することもある。咳止めや総合感冒薬などのOTC薬はあまり効果がない。
マイコプラズマ肺炎はよく聞く疾患ではあるが、診断は難しい。
血液検査で診断する方法もあるが、マイコプラズマの疑い程度で採血してきたという患者は聞いたことが無い。IgM抗体を調べる迅速診断キットを用いた診断を行っていることが多いが、大人では反応が薄いという。そのため、陰性であったとしてもマイコプラズマの可能性を否定することはできない。
そして、感染後症状が治まった後も長期に抗体を出し続けるため、過去に感染があって現在は感染していなくても、検査結果で陽性となる可能性がある。また、マイコプラズマに感染して実際に肺炎になる患者は感染者の3~5%という。
「マイコプラズマが流行っている」という話を聞いて医療機関にかかった患者が、医師からはっきりとマイコプラズマと言われなかったことにモヤっとして、薬局で「マイコプラズマの薬ですか?」と聞かれたときには、そのような事情にも配慮した受け答えをしよう。
小児の肺炎マイコプラズマ感染症は、通常であれば自然治癒する疾患であり、抗菌薬投与は必ずしも必要としない。
抗菌薬を使用する場合、マクロライド系抗菌薬が使われるケースが多いが、最近は小児にマクロライド耐性マイコプラズマが多く見られるということなので、オゼックス(トスフロキサシン)やミノマイシン(ミノサイクリン)などが使われることもある。
長引く咳の原因として、多いものに、後鼻漏、咳喘息、胃食道逆流症(GERD)があります。この3つが三大慢性咳嗽と呼ばれます。
また、三大慢性咳嗽に加え、結核・ACE阻害薬・肺がんが鑑別疾患として重要にはなります。
そのほかに百日咳、マイコプラズマ、クロミドフィラといった微生物が挙げられます。
マイコプラズマはオリンピックの年に流行る?
マイコプラズマ肺炎は4年周期で大きな流行があり、ちょうど夏季オリンピックの開催年になるたびに流行することから、「オリンピック病」と呼ばれています。
近年はこの傾向も薄れつつあるようですが。
なぜ4年ごとに流行るのか?という理由については不明です。
季節ごとに流行る感染症は気温や湿度と関係あることはわかりますが。
4年ごとというのはちょっとしたこじつけもありそうですが、各国の疫学調査では3~7年ごとの流行がみられるようだ。
オリンピックが行われると世界中の国の人々が一堂に会するので、そこで感染症が流行って全国に広がる…というのはありそうですけどね。
マイコプラズマ肺炎に罹ったら出席停止?
マイコプラズマ、流行ってます。
学校に行かせてもいいですか?はよくある質問です。
急性期が過ぎて、全身状態が改善すれば登校・登園は可能。
第3種学校伝染病のその他の伝染病として、
「学校で流行が起こった場合にその流行を防ぐため、必要があれば、校長が学校医の意見を聞き、第三種の伝染病としての措置を講じることができる」
ともされています。
出席停止の措置がとられる可能性もあります。
肺炎の原因は肺炎球菌?
肺炎の原因菌の約2~3割が肺炎球菌、約2割がマイコプラズマやクラミジアなどの非定型病原体が占めるといいます。
病原微生物は、65歳以上の患者では肺炎球菌が最も頻度が高く、それにインフルエンザ菌、マイコプラズマが続く。
60歳未満の患者では、肺炎球菌に次いでマイコプラズマが多い。
一方、脳血管障害を起こした高齢者に頻度の高い誤嚥性肺炎では、口腔内常在菌や嫌気性菌が原因となる。
ペニシリン系やセフェム系は肺炎球菌には効きますが、マイコプラズマやクラミジアには効きません。マイコプラズマは他の細菌と異なり細胞壁を持たないので、ペニシリン、セフェムなどの細胞壁合成阻害の抗菌薬には感受性がない。
マイコプラズマやクラミジアに効果的なマクロライド系やテトラサイクリン系は、肺炎球菌には効きが弱いです。
そのため、肺炎球菌にもマイコプラズマにもクラミジアにも効くニューキノロン系の抗菌薬が好まれて使われます。
マイコプラズマにはマクロライド
マクロライド系薬とは環状ラクトン構造を持ち、リボソームに結合して蛋白質合成阻害を示す抗菌薬です。
βラクタム系薬が細胞壁合成阻害を示す一方で、細胞壁を持たない菌に対しても効果を示すという特徴を持っています。
その代表的な菌がマイコプラズマです。
マイコプラズマ感染症は、成人、小児を問わず、気道感染症を惹起し、1980年代まではオリンピックの開催年に流行しました。
その原因は人の大きな移動によるものとも解釈されていますが、詳細な原因は不明です。1990年代以降、その4年おきの流行は見られなくなりました。
気道感染症は気管支炎、肺炎などが主ですが、症状は肺炎球菌などの感染症と異なり、症状が比較的軽度であることから、マイコプラズマは通常の細菌と異なるという意味で非定型菌と呼ばれ、肺炎では非定型肺炎(異形肺炎)と呼ばれます。
非定型肺炎の原因となる菌として、他にクラミジア、レジオネラ属などもありますが、これらの菌は一貫して細胞内寄生菌であるという特徴があります。
マクロライド系薬が非定型肺炎に対して効果を示す理由として、細胞壁合成阻害ではない点に加え、細胞内への移行性がよい点が挙げられます。
レジオネラ属やクラミジアは細胞壁をもっていますが、それでもβラクタム系薬が効かない理由として、βラクタム系薬は細胞内への移行性が弱いことが挙げられます。
マクロライド系薬の作用点であるリボソームは多くの菌が持っているので、多くの菌に対して感受性がありました。
さらにペニシリン系薬で懸念されるようなアレルギーの問題も小さいために、通常の市中肺炎にも使われてきました。
マクロライド系薬は肺炎球菌からマイコプラズマまで幅広い菌をカバーすることが可能でありましたが、そのように使用されてきた結果、肺炎球菌はマクロライド系薬に対して耐性を獲得し、80%以上の耐性化率となっている現代ではもはや使うことが不可能になりました。
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