2025年6月30日更新.2,506記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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管理薬剤師が学校薬剤師をしてもいいか?学校薬剤師の業務

管理薬剤師が学校薬剤師をしてもいいのか?

薬剤師の仕事といえば、薬局での調剤や服薬指導をイメージする人が多いかもしれません。しかし薬剤師の活躍の場はそれだけにとどまりません。その一つが「学校薬剤師」という存在です。「管理薬剤師が学校薬剤師を兼務できるのか?」という疑問も含め、学校薬剤師の仕事や制度、実態を勉強します。

そもそも学校薬剤師とは?

学校薬剤師は、学校保健安全法に基づいて、各学校に任命・委嘱される薬剤師です。対象となる学校は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、特別支援学校(盲学校、聾学校、養護学校)など大学を除くほぼ全ての教育機関です。

学校設置者(公立なら教育委員会、国立なら文部科学省、私立なら学校法人など)が薬剤師資格を持つ者の中から任命・委嘱します。公立学校では地方公務員法に基づく地方公務員の特別職、国立では非常勤の国家公務員、私立では各法人による委嘱という扱いになります。

学校薬剤師の主な業務内容

では実際にどんな仕事をしているのか見ていきましょう。

【1】 環境衛生検査
・教室内の照度(明るさ)
・黒板の視認性
・空気の質(CO2濃度、温湿度、換気状況)
・ストーブ使用時の温熱環境
・騒音レベル

【2】 飲料水・プール水の水質検査
・プールの残留塩素濃度
・水道水の水質チェック

【3】 保健指導、保健教育の支援
・教職員への啓発活動
・感染症や薬物乱用防止教育への協力

【4】 保健計画の作成支援
・学校保健委員会への参画
・健康管理体制の整備支援

これらの中には、理屈の上では教職員が測定・管理可能な項目もありますが、専門的な判断や長年の経験が必要とされる場面も多く、薬剤師が担う意義とされています。

管理薬剤師は兼務できるのか?

さて本題です。管理薬剤師が学校薬剤師を兼務しても良いのでしょうか?結論から言えば「可能」です。

保険薬局の保険薬剤師の兼務に関しては以下のような整理がされています:

・管理薬剤師でなければ、複数の保険薬局を兼務可能(届出必要)
・管理薬剤師は基本的に他薬局との兼務は原則不可

ただし、学校薬剤師との兼務は例外的に認められている

つまり、管理薬剤師であっても学校薬剤師の業務には従事可能です。これは学校薬剤師の業務が平日昼間の営業時間内に固定的に重なるわけではなく、年数回の定期業務が中心だからです。

また、薬剤師会が管轄する夜間休日当番薬局なども、地域事情によっては管理薬剤師が担当するケースも例外的に認められています。

学校薬剤師の報酬は?

では、学校薬剤師の報酬はどの程度なのでしょうか。

これは自治体や学校法人によって異なりますが、概ね以下のような実態があります:

・年間数万円〜10万円程度
・例えば福井市では年間5万円程度が目安
・日本学校薬剤師会や各都道府県学校薬剤師会への会費負担も必要

純粋に収入目的で従事するには物足りない額と言えます。ただし、地域貢献や教育支援としての社会的意義を感じて携わる薬剤師も多いのが実情です。

学校薬剤師になるには?

「なりたい」と思えば誰でもなれるわけではありません。多くは以下の流れで決まります:

・各地区の薬剤師会が候補者リストを作成
・学校設置者が薬剤師会から推薦を受けて任命
・既存の学校薬剤師が高齢化や退任する際に後任を引き継ぐ

先輩薬剤師に頼まれて引き継ぐケースが多く、積極的に空きが出ることはあまりありません。一方で、後継者不足で困っている自治体もあり、興味がある人は薬剤師会に問い合わせるのが現実的な方法です。

学校薬剤師は必要なのか?

近年、学校薬剤師制度については賛否の声もあります。

【肯定派の意見】
・専門知識に基づいた環境管理ができる
・薬物乱用防止教育などの役割が重要
・客観的第三者の視点で学校保健をチェックできる

【否定派の意見】
・教職員で十分対応可能な項目も多い
・実態は形式的な測定・報告に終始している場合もある
・既得権益化していると見られがち

文部科学省も近年、衛生検査業務をすべて実施する必要はなく、必要性の有無を学校薬剤師が判断するという柔軟な運用方針を示しています。

現場の薬剤師の中でも「頼まれて渋々引き継いだができれば辞めたい」「制度そのものを見直すべき」という声が少なくありません。一方で、熱心に活動している学校薬剤師も多く、地域差が大きいのが実態です。

薬剤師会の負担感も課題に

学校薬剤師制度を維持する上で、薬剤師会が負担している面もあります。

・会員薬剤師の中から人選する負担
・新任者への教育・指導負担
・適切な報酬交渉や行政との調整役

一部地域では「やり手がいないから兼務している」「何校も抱えている」という声もあり、後継者育成は今後の課題となっています。

まとめ 〜管理薬剤師でも兼務可能だが…〜

管理薬剤師が学校薬剤師を兼務することは制度上認められています。しかし、学校薬剤師の仕事は意外に多岐にわたり、決して名誉職的な肩書きだけでは済まされません。

その仕事内容は、純粋に薬学的知識を活かせる部分もあれば、機器の操作やデータ記録、報告書作成など淡々とした作業が大半を占める側面もあります。業務負担の割に報酬は決して高くなく、誰もが積極的になりたがるポジションではないのが現状です。

とはいえ、学校薬剤師の活動は子どもたちの健やかな学校生活を支える重要な役割でもあります。薬剤師として地域貢献の意義を感じられるのであれば、前向きに挑戦してみる価値はある仕事と言えるでしょう。

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