2024年4月19日更新.2,754記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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空打ちはもったいない?

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空打ちはもったいない?

空打ちは「試し打ち」という保険です。

患者さんが空打ちを忘れている、または、無駄だと思って行っていないことがあります。

空打ちを行わないと、大量の空気混入、針のトラブル、インスリンカートリッジの破損、インスリン注入器の不具合を事前に見つけることができないので、正確なインスリン量が注射されないことがあります。

空打ちは、適正に注射できることを確かめる「試し打ち」ですので、注射前に異常を確認することができます。

気泡は完全に取り除けない?

インスリン注射を行うとき、毎回の使用の前に「針を上にして2単位分の注射液を押し出す」という空打ちの作業を行うことととされています。

これには、注入器が正常に動作するかどうかを確認するとともに、注入器内の気泡を追い出すという目的があります。

しかし、注入器の構造上、すべての空気を抜くことが難しい場合があります。

インスリン注入器内に空気が入っていた場合、懸念されるのは注入量への影響です。

空気があると、ピストンを押した際の圧力を空気が吸収してしまい、設定した量より少なくインスリンが注入される危険性があります。

しかし、気泡の直径が5mm以内であれば影響は小さく、注入量の誤差も許容範囲内に収まるとされているため、適切な空打ち作業を行っても抜けないような微小な泡に関しては無理に除く必要はありません。

小豆より大きな気泡は誤差を生む?

インスリンカートリッジ内の気泡は完全に抜くことはできませんが、空打ちにて、できるだけ抜くことが重要です。

インスリンカートリッジ内の空気(気泡)の直径が小豆大以上になると、注射の際、インスリン液が正確に出ないことがあります。

その理由は、インスリン注入器の構造に由来します。

注射はインスリン単位を設定して注入ボタンを完全に押しますが、注入ボタンを押した力をインスリンカートリッジに入った空気が吸収し、針からインスリンを出す圧力を弱めてしまいます。

せっかく正確にインスリン単位を設定しても、インスリンカートリッジ内に多量の空気が混入することで、精度が低下することがあるのです。

気泡の原因

小豆大以上の空気が入っていたら、必ずその空気が抜けるまで空打ち(空気抜き)を行います。

しかし、ここで重要なことは、なぜそのような大きな空気が入っていたのかということを突き止めることです。

直径5mmより大きな空気が入る原因として考えられるのは、①空打ちを行っていない、②インスリン製剤に高温や凍結などの極端な温度変化が生じている、③インスリンカートリッジのゴム栓やゴムピストンに異常が生じている、④インスリンカートリッジのガラスが破損している、そして⑤インスリン注入器に注射針を付けたまま保管している、などです。

②~⑤は、空気を抜いてもインスリン製剤や注入器の品質に異常が生じていることが考えられますので、新しいものに交換するのが望ましいでしょう。

空気を注射すると死ぬ?

インスリンの自己注射をしている人で気泡が抜けずに、「空気を注射すると死ぬ」と心配している人がいます。

空気塞栓といいますが、これは血管に空気が入ることで肺や脳などの末梢血管が閉塞する現象です。

一般に10mL以上の空気が入った場合に起きるものであるため、10単位(=0.1mL)程度の少量を皮下に注入するインスリン注射では問題となりません。

インスリン注射内の気泡が問題となるのは、注入量に誤差が出るためです。

空打ちの意義

◦針から薬液が出ることを確認するため
◦針が貫通していることを確認するため
◦空気(気泡)を抜くため
◦ゴム栓に破損がないことを確認するため
◦ガラスに破損がないことを確認するため
◦注入器に異常がないことを確認するため

空打ちは非常に重要な操作です。

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薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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4 件のコメント

  • 藤崎 のコメント
         

     はじめまして。1型糖尿病の子を持つ母です。yakuzaic先生のお話、大変興味深く、勉強させていただいております。質問があります。お答えいただけると大変助かります。
     うちの子はインスリン注射器の破損がよくあるといいます。中のゴム等が不具合を起こし注射液が注入されないと。そうなると液が残っていてもそれ以上は使用不可のため経済的負担が大きい。何故なら壊れたと言っても自己責任とされ取り替えてはもらえないと。これは事実でしょうか?実は先日、注射後食事をし帰宅途中で倒れてしまいその原因も破損のため注射液が注入されていなかったことが原因でした。何故交換不可が常識なのかまた、今後そうならないための対策があれば是非教えていただけると助かります。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    破損の原因が何なのかが気になりますね。
    注射器側に問題があるのであれば、薬局としては引き取ってメーカーを呼んで、問題解決のために交換するのが普通だと思っています。その場合、メーカーが代替薬を持ってくるので、薬局が負担することもないですし。
    ただ、原因が、操作や保管状況など、患者側にある場合、繰り返し交換することは、メーカー側としても拒否する可能性は高いです。
    しかし、使えなくなったインスリン注射器については、交換可能か否かにかかわらず、メーカーに見てもらって、破損の原因を探ることが必要と思います。

  • 中田智子 のコメント
         

    ノボラピットの空うちのとき、中の小さいキャップは外して行うべきですか。はずさなくても中は透き通って見えるのでそのままでおこなっています。スタッフから指摘をうけてしまいました。おしえてください。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    キャップを外さずに空打ちというのがよくわかりませんが。
    通常キャップは外して行うものだと思っています。

コメント

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本の紹介

yakuzaic
yakuzaic/著
2023年09月14日発売

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
SNS:X(旧ツイッター)
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