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使用部位がわかりにくい?専門用語を読み解く
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤. タグ:薬剤一覧ポケットブック. この記事は約2分40秒で読めます.
2,836 ビュー. カテゴリ:わかりにくい使用部位の名称

処方せんや薬袋に記載される「使用部位」が、患者さんにとってはもちろん、薬剤師であっても一瞬「どこだっけ?」と戸惑うことがあります。特に整形外科や皮膚科でよく登場する部位名は、日常的にはあまり耳にしない専門用語も多く、確認に時間がかかることも。
例えば「母指CM関節」ってどこ?
ある処方せんにロキソニンテープの貼付部位として書かれていた「母指CM関節」。これは親指の付け根にある「手根中手関節(carpometacarpal joint)」を指します。
DIP関節:指先から1つ目の関節(末節骨と中節骨の間)
PIP関節:指先から2つ目の関節(中節骨と基節骨の間)※親指にはなし
MP関節:指の付け根の関節(中手骨と基節骨の間)
CM関節:親指のさらに根元、手首に近い関節
母指CM関節症という病名もあるように、親指の基部に痛みが出る疾患で、外用薬が処方されることがありますが、「親指の付け根」と書いてくれるとありがたいところです。
薬剤師も知っておきたい人体の部位表現
薬袋や服薬指導書に記載される部位は、診療報酬や薬剤情報の都合上、正式な解剖学用語に基づいていることが多く、以下のような表現があります。
よく使われる専門用語と対応する部位
体の部位 | 読み方 | 説明 |
---|---|---|
項 | うなじ | うなじ |
腋窩 | えきか(えきわ) | わきの下のへこんだところ |
外果 | がいか | 外側のくるぶし |
踵 | かかと・きびす | かかと |
下肢 | かし | 大腿+下肢 |
下腿 | かたい | ひざより下の足 |
眼瞼 | がんけん | まぶた |
環指(環趾) | かんし | 薬指 |
躯幹 | くかん | 胴体(頭や四肢を除いた体) |
口尻 | くちじり | 唇の両端 |
踝 | くるぶし | くるぶし |
鶏眼 | けいがん | ウオノメ |
頸部 | けいぶ | くび |
肩峰 | けんぽう | かた |
口蓋 | こうがい | 口腔の上壁 |
口角 | こうかく | 唇の両側の部分 |
臍部 | さいぶ | へそ |
耳介・耳殻 | じかい・じかく | 耳の外に張り出して飛び出している部分のこと |
四肢 | しし | 上肢+下肢 |
示指(示趾) | じし | 人差し指 |
耳朶 | じだ・みみたぶ | 耳の下部の垂れ下がった肉の部分 |
膝窩 | しっか | ひざの裏側 |
膝蓋 | しつがい | ひざがしら |
手掌 | しゅしょう | てのひら |
小指(小趾) | しょうし | 小指 |
上肢 | じょうし | 上腕+前腕 |
上腕 | じょうわん | ひじより上 |
心窩 | しんか | みぞおち |
前腕 | ぜんわん | ひじより下 |
足趾 | そくし | あしのゆび |
足趾間 | そくしかん | あしのゆびの間 |
足蹠 | そくせき | 足の裏 |
足背 | そくはい | 足の甲 |
鼠径部(鼠蹊部、鼡径部) | そけいぶ | あしのつけね |
体幹 | たいかん | 胸部+腹部+背部 |
大腿 | だいたい | ひざより上の足 |
肘窩 | ちゅうか | 肘の内側 |
中指(中趾) | ちゅうし | 中指 |
臀部 | でんぶ | おしり |
内果 | ないか | 内側のくるぶし |
鼻溝・人中 | はなみぞ・じんちゅう(にんちゅう) | 鼻の下から上唇にかけて縦にくぼんでいる部分 |
腓腹 | ひふく | ふくらはぎ |
鼻翼 | びよく | 鼻の先の左右両端にふくれている部分、こばな |
脹脛 | ふくらはぎ | 足の脛(スネ)の後方のふくらんだ部分、こむら |
臍 | へそ | 腹のまんなかにある小さなくぼみ |
胼胝 | べんち | タコ |
母指(母趾) | ぼし | 親指 |
鳩尾・心窩 | みぞおち・しんか | 胸骨の下、胸の中央にあるくぼんだ所 |
指の呼び名の違い(手と足)
手:母指(親指)、示指(人差し指)、中指、環指(薬指)、小指
足:母趾、示趾、中趾、環趾、小趾
「母指」と書かれていても、「親指」ではなく「人差し指のこと?」と誤解されることもあるため、丁寧な表記や説明が重要です。
また、指の呼び名として、親指から数えて、第一指(親指)、第二指(人差し指)、第三指(中指)、第四指(薬指)、第五指(小指)という呼び方もある。足の場合は第一趾になる。
薬剤師としてできること
・患者にわかるような薬袋表記にする(例:「母指CM関節」→「親指の付け根」)
・使用部位に関する質問には具体的な身体部位を交えて答える
・外用薬の使用法説明時にイラストを用いるのも効果的
解剖学用語を“翻訳”する視点を持つことで、薬剤師の服薬指導はより親切かつ丁寧なものになります。わかりにくい言葉を、わかりやすく届ける。それも薬剤師の大切な仕事のひとつです。