2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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メトグルコを不妊治療に使う?

メトグルコと不妊症

薬剤師

メトホルミンが不妊治療に使われるのはなぜ?

メトグルコ(メトホルミン)は、インスリン抵抗性の改善を介して卵胞の発育を促します。
インスリンによってアンドロゲン産生が亢進しているタイプの不妊症では、メトグルコ(塩酸メトホルミン)の服用で、排卵率や妊娠率が上昇すると報告されています。

不妊症の原因となる病態の一つに、多嚢胞性卵巣症候群(PCOSまたはPCO)がある。
PCOSは、腫大した卵巣の被膜下に、発育を停止した卵胞が多数見られる病態(多嚢胞性卵巣)で、背景には内分泌系の異常がある。
卵子を成熟させ、排卵を促す女性ホルモンの分泌量は、脳下垂体から分泌される2種類のホルモン、すなわち卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)によって制御されている。
PCOSの患者では、血中のFSH量は正常だが、LH量が高値になっており、女性ホルモンのプロゲステロンだけでなく、アンドロゲン (男性ホルモン)の産生も亢進する。
アンドロケンが過剰になると、卵胞の発育が抑制され、無月経や無排卵周期症などの排卵障害が表れる。
このほか、日本人には少ないものの多毛などの男性化徴候や肥満、糖尿病などを合併することもある。

PCOSの治療法として、メトホルミン塩酸塩(グリコラン、メトグルコ)などの、インスリン抵抗性改善作用を持つ糖尿病治療薬が処方されることがある。
これはPCOSによる排卵障害にインスリン抵抗性が関与しているとの知見が得られているためである。
PCOSの患者では、血糖値は正常範囲でも、インスリン抵抗性が増強しており、代償性に血中インスリン濃度が上がっているケースがある。
インスリンはLHと同様に、卵巣に直接作用してアンドロゲン産生を亢進する。
そこで、インスリン抵抗性を改善する薬を使って代償性の高インスリン血症を改善し、排卵機能を高める治療が行われるようになった。
中でもメトホルミンは、単剤、あるいはクロミフェンクエン酸塩(クロミッド)などの排卵誘発剤との併用で、高い排卵率・妊娠率が得られたと報告されている。
そのため、欧米ではPCOSによる 排卵障害治療の第一選択薬としてメトホルミンが使用されるようになっており、日本でも処方されるようになった。
PCOS治療にメトホルミンを用いる場合、卵胞が発育を始めてから排卵するまでには80日程度かかるので、メトホルミンのみを2カ月程度、漸増しながら服用した後、クロミフェンなどの排卵誘発剤を併用するという処方が一般的である。
ただし処方にはバリエーションがあるため、患者には医師の指示通りの服用を行うよう説明する必要がある。
また、処方量にもよるが、メトホルミンの服用で、およそ半数の患者に下痢、4分の1に吐き気や嘔吐が表れるとされる。

PCOSと肥満

近年、PCOSの本態は、インスリン抵抗性に基づくものであり、肥満・脂質代謝異常・高血圧・糖尿病などのインスリン抵抗性症候群のひとつとして捉える疾患概念が提唱されている。

日本産科婦人科学会の生殖内分泌委員会の報告によると、PCOS患者の肥満頻度は20%となっています。そして違う報告では、肥満婦人の48%に無月経がある、あるいは44.8%に無月経や稀発月経などの月経異常が出現するとあります。

PCOSが肥満を起こしやすい原因は、男性ホルモンの高値がアナボリックな効果を発揮して脂肪を蓄積させてしまうこと、あるいはインスリン抵抗性が脂質代謝の異常を引き起こすことなどが考えられます。

不妊と肥満の関係は難しくなっています。太っていることが必ずしも不妊に結びついているのではなく、肥満が月経異常を引き起こすことが多く、そのような場合には不妊原因となります。

PCOSでは「月経異常」が最大の問題であり、よって「肥満そのものに対する治療がPCOSの治療に結びつく」と考えられているのです。

毛深いのは多嚢胞性卵巣症候群のせい?

女性や小児において、男性ホルモン(アンドロゲン)依存性の発毛が認められる場合を多毛症と呼ぶ。

「多毛」といっても、毛の本数が増加するわけではなく、軟毛(産毛)が肥大化、あるいは硬毛へと変化する。

多毛症は、原因不明の「特発性多毛症」と原因疾患を伴った「続発性多毛症」に分類される。
特発性多毛症は多毛症全体の約5割を占めており、血液中の男性ホルモンは正常だが、皮膚のアンドロゲン感受性が亢進している。
一方、続発性多毛症は特発性多毛症と病態を異にしており、男性ホルモンが過剰に産生されている。

続発性多毛症の原因疾患として最も頻度が高いのは多嚢胞性卵巣症候群で、多毛症全体の約4割を占める。

多嚢胞性卵巣症候群とは、小さな嚢胞が卵巣に多数出現する疾患で、黄体化ホルモンの異常分泌によって卵巣間質でのアンドロゲン産生が増加することが知られている。
その結果、多毛症を含めた男性化徴候が現れるものと考えられている。

処方例

メトグルコ錠500mg 3錠  
 1日3回毎食後 30日分

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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