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わかりにくいてんかん症状 ― 見逃されやすい睡眠てんかんや欠伸発作
公開. 更新. 投稿者:てんかん.この記事は約4分31秒で読めます.
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わかりにくいてんかん ― 見逃されやすい症状と正しい理解

「てんかん」と聞くと、一般的には「突然倒れてけいれんする病気」というイメージが強いかもしれません。泡を吹いて意識を失い、全身を硬直させてけいれんする――いわゆる強直間代発作(全般強直間代発作)は典型的な症状です。
しかし、てんかんはそれだけではありません。実際には、けいれんを伴わない発作や、ごく短時間で終わる発作も多く存在します。中には、患者本人も周囲も「てんかんだ」と気づかないまま長期間過ごしてしまうケースもあります。
「わかりにくいてんかん」に注目し、特に睡眠中に起こる発作や欠伸発作などを中心に、診断の難しさや注意点について勉強します。
てんかんとは?
てんかんは、脳の神経細胞が一時的に過剰に興奮し、繰り返し発作を起こす慢性の脳疾患です。
発作の症状は非常に多様で、
・意識消失
・全身けいれん
・局所的なけいれん
・感覚異常(匂い・音・視覚の異常)
・精神症状(不安、恐怖、幻覚)
など多岐にわたります。
このため、てんかんがあっても「気づかれない」「別の病気と間違えられる」ことが少なくありません。
睡眠てんかんとは?
睡眠中にだけ発作が起こる
「睡眠てんかん」とは、睡眠中にのみ発作が起こるてんかんを指します。
1974年に2,825人のてんかん患者を対象にした調査では、
・睡眠中のみ発作:44%
・覚醒中のみ発作:33%
・両方に発作:23%
と報告されています。
つまり、てんかん患者のおよそ半数近くが「睡眠中に発作を起こす」ということです。
発作の起こりやすい時間
・睡眠直後
・起床の1〜2時間前
この時間帯に特に発作が出やすいことが知られています。
睡眠てんかんの症状
睡眠中の発作は、必ずしも「全身けいれん」のような分かりやすいものではありません。
主な症状
・手足の大きな痙攣
・顔面のけいれん
・舌を噛む
・舌なめずり、口をもぐもぐする動作
・突然の覚醒
・寝ぼけのような「まさぐり動作」
・尿失禁
・発作後の錯乱や深い眠り
これらは睡眠障害国際分類にも「睡眠てんかんの症状」として記載されています。
子どもに多い症状
・繰り返す夜尿症(おねしょ)
・睡眠中の異常な動作
「ただの夜尿症」と思われていた症状が、実は睡眠てんかんだったという例もあります。
入眠時のジャーキングとてんかんの違い
寝入りばなに「ビクッ」と体が動くことがあります。これは入眠時ミオクローヌス(ジャーキング)と呼ばれるもので、正常な生理現象です。
・睡眠への移行期に起こる一過性の筋収縮
・しゃっくりもミオクローヌスの一種
・基本的には病気ではない
ただし、これが頻繁で異常な動作を伴う場合は「てんかんとの区別」が必要です。
欠伸発作(けっしんほっさ)
あくびとは違う「欠伸」
てんかんの一種に欠伸発作(Absence seizure)があります。「けっしん発作」と読み、あくび(欠伸)とは別物です。
症状
・数秒間、動作や会話が止まる
・目がうつろになる
・周囲からは「ぼんやりしている」「上の空」と見える
本人には自覚がないことが多く、発作後は何事もなかったかのように行動を再開します。
誤解されやすい例
・「注意力がない」
・「居眠りしている」
・「発達の問題かも?」
実際には、脳の一過性の異常興奮による症状であり、てんかんの重要なサインの一つです。
診断が難しい理由
発作が短く、周囲が気づきにくい
→ 数秒で終わるため、見逃されやすい。
検査で異常が出ない場合もある
→ 脳波検査は発作時でなければ正常に見えることも多い。
本人に自覚がない
→ 特に部分発作では、患者自身が「発作」と思わない。
他の病気と誤診されやすい
→ 精神疾患、認知症、注意欠陥などと間違われることがある。
放置するとどうなるか
・睡眠てんかんを放っておくと、日中にも発作が出現することがある
・欠伸発作が繰り返されると、学習や仕事のパフォーマンスに影響
・発作時の転倒・事故のリスク
「命に関わらないから大丈夫」ではなく、生活の質や安全を守るために早期治療が重要です。
治療について
てんかんの治療は主に抗てんかん薬の内服です。
・発作型に応じた薬剤を選択
・睡眠発作や欠伸発作には有効な薬が存在
・適切に治療すれば、発作を大幅に減らすことができる
また、生活習慣の工夫(睡眠不足を避ける、過度の飲酒を控える、ストレスを減らす)も大切です。
まとめ
・てんかんは「けいれんして倒れる病気」だけではない
・睡眠中にのみ発作が起きる「睡眠てんかん」や、数秒間意識が途切れる「欠伸発作」など、わかりにくい発作も多い
・夜尿症や寝ぼけ行動が実はてんかんのサインであることもある
・放置すると日中にも発作が出る可能性があり、早期の診断・治療が重要
・てんかんは適切な薬物治療でコントロール可能な病気
1 件のコメント
てんかん専門医の小出先生のXでのポストをご紹介します。
『ネット上でよく見かけるのは「欠伸発作」「欠伸てんかん」という誤字です。けっしん=欠神であり、欠伸(あくび)ではありません。私の辞書では「けっしん」と入力しても欠伸にはならないのですが・・・ #てんかん』