記事
去勢すれば前立腺癌は治る?
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約8分32秒で読めます.
2,562 ビュー. カテゴリ:目次
前立腺癌で去勢する?
前立腺癌の原因は男性ホルモンなので、去勢すれば良くなります。
しかし、実際に去勢するのは抵抗があるので、薬で去勢と同じ状態にします。これを内科的去勢術といいます。
調剤薬局で受ける処方せんで、前立腺癌の薬といえば、カソデックスが多い。
カソデックスは抗アンドロゲン薬。
精巣(睾丸)から分泌されるホルモンと副腎から分泌されるホルモンを前立腺がん細胞に働きかけないようにする薬です。
病院ではGnRHアナログ製剤の注射が使われていたりする。
リュープリン、ゾラデックスなど。
脳に働きかけて、精巣(睾丸)からの男性ホルモンの分泌を止める薬です。
リュープリンはLH-RHアゴニストと呼ばれる薬で、LH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)と似た構造をしているため、LH-RHが受容体に結合するのを阻害します。
その結果、下垂体からのLH分泌がストップし、精巣からテストステロンが分泌されなくなるため、前立腺がんは縮小していきます。
最近はゴナックスというGnRHアンタゴニストも前立腺癌に使われているらしい。
そこらへんの注射剤については別の機会に勉強する。
MAB、CAB
MAB療法という、GnRHアナログ製剤の注射と抗アンドロゲン剤の内服薬を組み合わせる治療法もある。
maximal androgen blockade療法で日本語に訳すと、最大アンドロゲン阻害療法。
CAB療法(combined androgen brockade:複合アンドロゲン阻害療法)とも呼ばれる。
カソデックスが処方されていたら、病院で注射も行っているのかどうか確認してみよう。
抗アンドロゲン薬にはオダインもある。
ホルモン療法は、当初はほぼ全例に奏効しますが、約半数は数年の経過において、効果がみられなくなり、がんの「再燃」がみられることがあります。
種々のホルモン治療を加えても全く反応しなくなったものは「去勢抵抗性前立腺がん」といわれます。
CAB(MAB)療法によって癌の進行を抑えることができるのは3年程度とされ、その後は抗アンドロゲン薬に治療抵抗性を示すようになる。これは、アンドロゲン受容体の発現亢進や変異などが原因とされている。
抗アンドロゲン除去症候群
中には、これまでアンドロゲン受容体に拮抗的に作用していた抗アンドロゲン薬が、治療目的とは逆に、アゴニストとして作用、前立腺癌細胞の増殖に寄与してしまうケースもあると報告されている。
こうした場合に、抗アンドロゲン薬のみを中止することで一過性にPSA値が低下することがある。この状態を、抗アンドロゲン除去症候群と呼ぶ。前立腺癌患者の1~3割に見られるとの報告もある。
抗アンドロゲン薬中止によるPSA値低下の持続期間は数か月程度とされる。また、PSA値の変化だけでは把握できない前立腺癌細胞の増殖も起こり得るため、中止後はザイティガやイクスタンジなどによる薬物療法や、放射線療法など、幅広い治療を考慮する必要がある。
アンチアンドロゲン交替療法
薬が効きにくくなったら別の薬に替える、抗アンドロゲン剤(アンチアンドロゲン)交替療法というやり方もある。
第1選択薬のカソデックスから第2選択薬オダインに変更する方法です。
オダインでは肝機能障害の懸念が強いため、カソデックスが最初に用いられることが多い。
カソデックス→オダイン→次にプロスタールという流れが多い。
プロスタールは黄体ホルモン。
黄体ホルモンは男性ホルモン(アンドロゲン)と似たような構造をしているらしい。
女性が飲めばアンドロゲン作用、男性が飲めば抗アンドロゲン作用、ってことなのか詳しくはわかりませんが、とにかくプロスタールはアンチアンドロゲン作用を期待して前立腺癌に使用される。
カソデックスやオダインを非ステロイド系の抗アンドロゲン薬、プロスタールをステロイド系の抗アンドロゲン薬とも言う。
次にエストロゲン製剤が使われる。
プロセキソールやエストラサイト。昔はホンバンという薬もあった。
プロセキソールはエチニルエストラジオールで純粋なエストロゲン製剤。
エストラサイトはエストラジオールとアルキル化剤のナイトロジェンマスタードを化学的に結合させた化合物、ということでナイトロジェンマスタードといえば毒ガスをイメージするのでちょっと怖い気がする。
そして、それらのホルモン療法が効かなくなった場合、去勢抵抗性前立腺がんとなり、ザイティガやイクスタンジの出番となる。
前立腺がんと男性ホルモン
前立腺がんは、精巣や副腎から分泌される男性ホルモン、すなわちアンドロゲンの働きによって成長します。
アンドロゲンの中には、テストステロンをはじめアンドロステネジオン、デヒドロエトアンドステロンなど様々なホルモンがありますが、テストステロンがもっとも生理活性が高いと言われています。
前立腺のがん細胞には、これらアンドロゲンと結合する受容体(AR)がたくさんあり、アンドロゲンがARに結合するとがん細胞が増殖します。
抗アンドロゲン剤は、アンドロゲンよりも先にARに結合することで、がん細胞の成長や増殖を抑制します。
MAB療法とCAB療法
LH-RHアゴニスト製剤は、脳の下垂体に作用して、精巣からの男性ホルモンの産生を持続的に抑える薬です。
LH-RHアゴニストを投与すると、精巣からの男性ホルモンの産生を、精巣を摘出したときと同じレベルまで抑制することができます。
一方、男性ホルモンは、副腎からも作られています。
抗アンドロゲン剤は、このLH-RHアゴニスト製剤が作用しない副腎で作られる男性ホルモンのがん細胞に対する作用をブロックします。
抗アンドロゲン剤とLH-RHアゴニスト製剤との併用療法はMAB療法又はCAB療法と呼ばれ、2つの薬の作用を同時に発揮することで、前立腺がん細胞における男性ホルモンの影響を最大限に抑えることを目的に実施されます。
去勢抵抗性前立腺癌?
「去勢抵抗性前立腺癌」という効能効果の薬は現在、イクスタンジカプセルとザイティガ錠の2種類。
イクスタンジカプセルについて。
イクスタンジカプセルは、1日1回投与の経口剤で、前立腺癌の成長に重要なアンドロゲン受容体シグナル伝達を、複数の作用で阻害します。前
前立腺癌治療剤 「イクスタンジ®カプセル」 製造販売承認取得のお知らせ
難しそうな作用機序。
中でもホルモン療法は、その有効性が外科的去勢法と同等(非劣性)であることが確認され、現在、中心的な治療として広く行われている。ホルモン療法では、精巣でのアンドロゲン合成を抑制するゴセレリン(商品名ゾラデックス)などのLH-RHアゴニストや、副腎由来のアンドロゲンの作用も抑制するビカルタミド(商品名カソデックス)などの抗アンドロゲン薬が使用される。さらに、これらを併用するmaximum androgen blockade(MAB)療法も行われている。しかし一方で、ホルモン療法を長期間継続すると、徐々にホルモン療法に抵抗性を示す癌細胞が増え、治療効果が消失してしまうことが知られている。このホルモン療法抵抗性となった状態は、外科的去勢後に症状が増悪した患者と合わせて「去勢抵抗性前立腺癌」と称されている。去勢抵抗性前立腺癌の治療には、タキサン系抗癌薬のドセタキセル(商品名タキソテールほか)などが使用されている。
エンザルタミド:去勢抵抗性前立腺癌に有効な新規抗アンドロゲン薬:日経メディカル
去勢といっても実際に局部を切除しているというわけではなく、ホルモン療法で男性の機能を無力化しているということ。
そのホルモン療法に反応の悪い前立腺癌を去勢抵抗性前立腺癌と呼んでいる。
前立腺癌は男性ホルモンのアンドロゲンにより増殖する。
そのため前立腺癌の治療には、精巣の摘出(外科的去勢術)やホルモン療法(内科的去勢術)が行われる。
ホルモン療法には主に、精巣に作用してアンドロゲンの合成を抑えるホルモン製剤のリュープリン(リュープロレリン酢酸塩)が用いられる。
しかし、これらの去勢術を行っても癌が再発・進行するケースがあり、それらは去勢抵抗性前立腺癌と呼ばれる。
アンドロゲンは精巣由来から95%だが、5%は副腎により産生されており、副腎由来のアンドロゲンが前立腺癌を増殖させてしまうと考えられている。
このため、副腎でのアンドロゲン合成またはアンドロゲンでの受容体への結合を阻害する抗アンドロゲン薬の投与が必要となる。
薬物的去勢療法
前立腺がん・乳がん発症の主原因は、それぞれ男性ホルモンと女性ホルモンの調節異常です。
これらのがんに対する有力な薬物療法として、「薬物的去勢療法」と呼ばれる性ホルモンの生産を遮断するアプローチがあります。
性ホルモンの生産は視床下部、下垂体、性腺の各ホルモン分泌により調節を受けます。
調節は、視床下部における性腺刺激ホルモン放出ホルモン(LH-RH)の周期的な分泌により開始されます。
LH-RHは下垂体に作用し、下垂体からは黄体刺激ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)が産生分泌されます。
最後にLHは精巣では男性ホルモン、卵巣ではプロゲステロン、またFSHと協力して女性ホルモンの産生分泌を誘導します。
性ホルモンはフィードバックにより視床下部に作用してLH-RHの産生分泌を調節します。
薬物的去勢法では、LH-RH作動薬あるいは拮抗薬によりLH-RH受容体に対するLH-RHの作用を遮断して、性ホルモンの産生分泌を抑制します。
作動薬でも拮抗薬でもどちらでも同様の結果が得られるとは一見不思議ですが。
LH-RH作動薬と拮抗薬
LH-RH受容体は、下垂体細胞の膜表面に存在するGタンパク質共役型受容体(GPCR)ファミリーに属するタンパク質です。
LH-RH受容体は、LH-RHの周期的な刺激を受けてLH、FSHの産生分泌を誘導しますが、常時高濃度のLHRHに曝露されると、LH-RHの結合したLH-RH受容体は膜ごと粒子となって細胞質に取り込まれ、受容体は膜から消失します。
したがって、LH-RHのシグナルは減弱し(ダウンレギュレーション)、LH,FSHの産生分泌は抑えられることになります。
LH-RH作動薬は、LH-RHに代わって上記の機序でLH-RHのシグナルを遮断します。
一方、LH-RH拮抗薬はLH-RHの受容体への結合を阻止することによりLH-RHのシグナルを遮断します。
同様にシグナルを遮断するのですが、作動薬の場合は受容体のダウンレギュレーションが始まる前に一過性の作動薬作用を引き起こし、その結果性ホルモンの産生分泌を一過性に誘導するという欠点を有しています。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
1 件のコメント
通常、ホルモン注射+抗アンドロゲン内服(カソデックスなど)ですが治療しますが、長期使用で抗アンドロゲン薬の反応性が悪くなります。その場合抗アンドロゲン薬を変えたり、エストラサイトやステロイド、化学療法を行います。
イクスタンジの効果はスーパー抗アンドロゲン薬(既存の抗アンドロゲン薬の数倍の阻害効果+別の機序での増殖を抑制)です。なので他の抗アンドロゲン薬とは併用しないようです。
現在は保険適応の関係で化学療法後ですが、今後はより早期に導入できることを期待されているようです。