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当帰芍薬散と加味逍遥散と桂枝茯苓丸の使い分け
公開. 更新. 投稿者:漢方薬/生薬.この記事は約3分59秒で読めます.
10,247 ビュー. カテゴリ:女性3大処方
婦人科でよく処方される漢方薬の使い分けは?
女性に用いられる漢方処方として、一般に3大処方といわれる当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸が代表的なものとしてある。
漢方医学的には水毒と血虚があれば当帰芍薬散、気逆があれば加味逍遥散、お血があれば桂枝茯苓丸ということになる。
それぞれに特徴的な使い方は以下のようになる。
当帰芍薬散:竹久夢二の美人画に出てくるような色白で虚弱そうな美人(当芍美人)。むくみやすく、胃下垂があることが多い。
加味逍遥散:冷えのぼせがあり、更年期症候群、あるいは自分は更年期症候群だと訴えるような愁訴の多い人(不定愁訴)。
桂枝茯苓丸:比較的しっかりした体格の人で、月経困難症やにきびがある場合。
当帰芍薬散
対象として、虚弱な女性のさまざまな症状に用いることができる。はかなげな感じの美人が多いといわれている。
代表的な疾患は、月経不順、月経困難症、貧血、冷え症、めまいなどである。
水毒があるために皮膚の張りがあり、年齢より若くみられることが多い。ほっそりしているが、むくみやすいので足首は引き締まっていないことが多い。
水毒と虚血の処方である。
水毒の兆候として、むくみ、めまいや耳鳴り、頭重、尿量の減少などがみられる。筋肉が柔らかいのもこのタイプの水毒の特徴の一つといわれている。
血虚があるために、顔色が青白くなったり、貧血やめまいを起こしやすかったりする。
いずれの症状でも、疲れやすいと訴えることがある。
もともとは婦人の妊娠時の腹痛の薬であり、安胎の薬として知られ、妊娠高血圧症候群の予防や治療にも用いられる。
加味逍遥散
更年期症候群の代表的な処方として有名であり、不定愁訴に対してよく処方される。
更年期症候群においてはホルモン補充療法(HRT)がよく用いられる。一般にホットフラッシュなどの血管運動神経系障害による症状が主であればHRTの有用性が高いと考えられる。
愁訴も多く加味逍遥散の適応になりやすい。
更年期でよくみられる症状は漢方でいう気逆の所見とよく一致するため、気逆の処方である加味逍遥散を用いる。
気逆に対する処方には他にもあるが、貧血や月経困難、冷えのぼせ(頭はのぼせるのに足は冷える)、抑うつなどの精神症状にも幅広く用いられるのが加味逍遥散で更年期では最も力を発揮する処方である。
漢方では心と体の問題は一緒に考える「心身一如」という考え方がある。
この処方以外でも香蘇散や半夏厚朴湯をはじめとした抑うつやストレスに効く処方も多く、副作用も少ないため、よく処方される。
特に、香蘇散は悪阻にも使用する処方で、妊娠中の抑うつ状態にも使用できる。
桂枝茯苓丸
瘀血の代表的な治療薬である。
瘀血の瘀が、やまいだれの中に於いてという字を書くことからもわかるように、そこに血の滞りがることを示している。
過多月経や月経困難症、子宮内膜症ではまさに血の滞りがあり、桂枝茯苓丸がよく処方される。
女性の疾患ならばなんにでも応用できそうに感じてしまうが、目安としては当帰芍薬散(華奢な体格・むくみなど)や加味逍遥散(不定愁訴)を除外できるときに使ってみる。
肩こりやにきびに応用できることでも知られているが、瘀血があることが条件になるので、「月経困難症などに伴う」症状に使われる。
にきびに対しては、一般的に用いられる清上防風湯や、口唇周囲にできる場合の半夏瀉心湯などもあるので、病名だけで投与するのは難しい。
漢方医学的所見をとれば瘀血があるかどうか、知ることができる。
具体的には、下腹部の圧痛(特にへその下あたり、患者自身に触ってもらい、教えてもらうことができる)、舌診では舌色の暗紅、紫、そして瘀斑などがある。
瘀血を「血の滞り」と考えると、打撲や骨折、ぎっくり腰なども瘀血に含まれるので、この処方の対象になる。
打撲に対しては治打撲一方という処方もあるが、手に入りにくいので、桂枝茯苓丸で代用することもである。骨折に対してギプス固定を行ったときの末梢の浮腫にも有効である。
また、桂枝茯苓丸は別名「催生湯」ともいわれ、子宮筋の緊張を促す可能性があることから、妊娠中は禁忌である。
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