2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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妊婦にフォリアミンを処方しちゃダメ?

妊婦へのフォリアミン処方

最近、妊婦にフォリアミン、フェロミア、ウテメリンという処方を見た。

そのときは「妊婦だから葉酸飲まないとな」くらいにしか思ってませんでしたが。。。
妊婦の葉酸摂取の推奨量は480μg/日なので、フォリアミン錠5mgは通常の妊婦が連用するには過剰です。

フォリアミンの適応に、「妊娠性貧血」というのがあります。
フェロミア、ウテメリンも処方されているので、この目的だろう。

しかし、貧血といえば鉄剤。葉酸がどのような目的で処方されるのか勉強不足。
サプリメントでも鉄と葉酸の組み合わせがよく見られます。

貧血といえば、「鉄欠乏性貧血」ですが、葉酸をとるといいのは「巨赤芽球性貧血」らしい。

葉酸欠乏は神経管欠損および,おそらく胎児アルコール症候群のリスクを増大させる。欠乏は妊婦の0.5〜1.5%に生じる;大球性貧血,巨赤芽球性貧血は,欠乏が中等度または重度の場合に起こる。まれに重度の貧血および舌炎が生じる。CBCが大球性の指数や赤血球分布幅(RDW)の大きい貧血を示す場合は,葉酸欠乏が疑われる。血清葉酸レベルの低値によって診断が確定される。治療として,葉酸を1mg,1日2回経口投与する。重度の巨赤芽球性貧血は,入院して骨髄検査およびさらなる治療を行うことが必要となる場合がある。予防として,全ての妊婦に葉酸を0.4mg,1日1回経口投与する。二分脊椎の胎児をもった経験のある妊婦は,受胎前から葉酸を4.0mg,1日1回服用するべきである。

妊娠中の貧血 妊娠中の合併症 メルクマニュアル18版 日本語版

「治療として葉酸を1mg,1日2回経口投与する」と書いてあるので、葉酸欠乏性貧血でもフォリアミン錠5mgは多い気がします。

葉酸を過剰に摂取しても水溶性ビタミンなので大したリスクは無さそうですが。。。

葉酸と奇形

葉酸は水溶性でビタミンB群の一つで、細胞分裂や新陳代謝には欠かせない重要な栄養素の一つです。

妊婦の間でも葉酸の欠乏・不足は赤ちゃんに先天性の疾患を引き起こすことが広く知られるようになってきました。
胎児の細胞分裂が活発な妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児に二分脊椎症や無脳症などの神経管閉塞障害という先天奇形を発症するリスクが高まることが分かっています。

妊娠初期に葉酸を摂取することで、神経管奇形の赤ちゃんの発生を防ぐことが報告されています。

妊娠中は、胎児の成長に伴い葉酸の需要が急増するため、葉酸が相対的に欠乏しやすいです。

しかし、妊娠初期に葉酸が欠乏した状態だと、胎児の器官形成に影響が及び、さまざまな先天性奇形が生じるリスクが高まります。

神経管欠損は受胎後1ヶ月以内に発生するため、妊娠がわかってから葉酸を摂取するのでは遅く、妊娠の1ヶ月以上前から摂取することが大切です。

胎児の器官形成は妊娠の早い段階で始まるため、妊娠に気付く前から葉酸が不足しないようにしなければならないのです。

妊娠を希望する女性は妊娠1ヶ月前から通常より多くの葉酸を摂取し、妊娠10週以後も継続的に服用することがすすめられています。妊娠1ヶ月(妊娠4週)でも遅くはありません。この時期から活発な細胞分裂によって胎児の臓器や神経系が形成されるので、葉酸の摂取を勧めましょう。

厚生労働省が2010年に発表した日本人の食事摂取基準では、妊婦の葉酸摂取の推奨料を480μg/日(妊娠を計画している女性または妊娠の可能性がある女性は400μg/日)としています。

アメリカやイギリスではシリアル、小麦粉などに葉酸の添加が義務づけられています。

抗てんかん薬と葉酸

抗てんかん薬は葉酸の代謝・吸収を阻害するといわれ、抗てんかん薬服用妊婦では、神経管閉鎖障害の発生頻度が高いことがわかっています。

神経管閉鎖障害は、妊娠6週頃の神経管の正中部における癒合不全が原因とされる先天異常です。

したがって、葉酸は妊娠がわかってから摂取するのでは遅く、妊娠の1か月以上前から摂取することが大切です。

葉酸の摂取量は、神経管閉鎖障害児の妊娠歴のある場合や抗てんかん薬を服用中の場合は、通常の推奨摂取量(1日400μg)より増加させることが推奨されます。

葉酸と貧血

葉酸は細胞分裂に大切であり、ビタミンB12とともに、造血でも重要な役割を果たし、不足すると貧血が生じることがあります。

葉酸は、緑黄色野菜や果物、レバーなどに多く含まれますが、熱に弱く、また水溶性でゆで汁に溶け出すため、調理で失われやすい栄養素です。

葉酸と奇形

葉酸欠乏との関連が知られている先天性奇形には、脳や脊椎の癒合不全(二分脊椎)などの神経管閉鎖障害のほか、心血管系の奇形、口唇裂・口蓋裂、尿道下裂、食道閉鎖などがあります。

国外で行われた大規模な疫学調査や介入研究により、葉酸の予防的な投与でこれらの先天性奇形の発生率が30~70%低減することが判明しています。

厚生労働省でも食品やサプリメントから1日0.4ミリグラムの摂取を推奨しています。

厚生労働省がサプリメントの活用を呼びかけるのは異例なことです。

葉酸はDNAが作られるときに働く補酵素で、細胞分裂には不可欠な栄養素です。

抗葉酸剤は抗癌剤として使われています。

二分脊椎症

諸外国の疫学研究から、葉酸を摂取することで、「二分脊椎症」という神経管閉鎖障害をもつ子どもが生まれるリスクを防止できるとの報告があります。

神経管閉鎖障害の一種で、生まれつき脊椎の癒合が完全に行われず、一部開いたままの状態をいいます。

脊髄の神経組織が脊椎に覆われたないため神経組織に障害を来し、下肢の運動障害や排泄機能に障害が発現します。

神経管の上部に閉鎖障害が起きた場合は、脳が形成不全となり無脳症になり、流産や死産の確率が高くなります。

受精卵が細胞分裂を繰り返す胎芽時に、母親の葉酸不足によって、二分脊椎症のリスクが高くなります。

妊娠と葉酸

成長期や妊娠・授乳時は葉酸の需要が増大するため、通常より多く摂取することが勧められています。

特に妊娠中の葉酸の欠乏は、胎児の神経管閉鎖障害を引き起こす危険性があることが疫学的調査により示されており、積極的な補充が必要となります。

この時期は食品だけの摂取では不十分なことも多く、2000年、厚生省(現厚生労働省)は、妊娠可能な年齢の女性に対して食品からの摂取に加えて栄養補助食品から1日0.4mgを摂取することを勧める情報提供を行うように通知し、サプリメントなどの活用を呼び掛けています。

2005年に発表された「日本人の食事摂取基準」では。成人女性の葉酸摂取の推奨量は1日240μgですが、妊娠時は1日200μg、授乳時は1日100μgが付加量として定められています。

ただし、ビタミンB12欠乏症をマスクするおそれなどから、1日1000μgが上限量とされています。

葉酸

葉酸は胎児の正常な発育に必要とされるビタミンの一つ。ホウレンソウやブロッコリーなどに多く含まれる。食材に含まれる「食事性葉酸」と、シリアルなどの加工食品やサプリメントに添加される「モノグルタミン酸型の葉酸」の2種類がある。モノグルタミン酸型は、体内で利用される効率が高い。

葉酸の作用は、メチル基などの1炭素原子の転移により核酸の合成やホモシステインの代謝などに関与するもので、ビタミンB12と密接な関係を持ち、細胞の分裂、増殖に重要な役割を果たしています。

葉酸の吸収

現在、国内で販売されている葉酸を配合するサプリメントの用量は、ほとんどが400μg/日です。
サプリメントに含まれるのはモノグルタミン酸であり、約80%と吸収効率(生物有効性)が高いのが特徴です。

一方、食物に含まれるのはポリグルタミル葉酸であり、その吸収効率は50%程度です。
必要量が増える妊娠中はサプリメントで400μgを摂取し、それに加えてバランスの良い食事を取っていくことが重要です。

海藻類や緑黄色野菜、豆類などが多く葉酸を含んでいます。

葉酸の過剰摂取

厚生労働省は、葉酸について、妊娠が予定される女性は妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、通常の食事から摂取する以外に、1日400マイクロ・グラム(1マイクロ・グラムは100万分の1グラム)摂取するよう推奨している。

厚労省は、通常の食事以外に、シリアルなどの加工食品やサプリメントで取る葉酸の1日の上限量を1ミリ・グラム(1000マイクロ・グラム)と定めている。

葉酸を取りすぎた場合、自身が発熱やじんましんなどを起こしたり、生まれた子どもが喘息になったりするリスクが報告されている。

サプリメントは特定の成分を濃縮したもの。通常の食品のように満腹になることがなく、気がつかないうちに必要量をオーバーして摂取してしまうことがある。

だいたい400μg含有しているサプリメントが多いようです。

ビタミンだから問題無いだろう、と、表示を守らずに摂取したり、複数のサプリメントを組み合わせて摂取したりするのは止めたほうが良いでしょう。

妊娠に気付いてからでは遅い?

妊娠が判明するのは妊娠6週以降である。
神経管閉鎖障害の発生は妊娠6週ごろ、心血管系奇形と口唇・口蓋裂の発生は妊娠5~10週ごろであるため、妊娠に気付いてから葉酸を摂取しても先天性奇形の予防には役立たない恐れがある。

葉酸は、ほうれん草などの緑黄色野菜や豆類、レバーなどの動物性食品に多く含まれる。先天異常のリスクを減らせる唯一の栄養素といわれている。

妊娠中の葉酸摂取による、児の神経管閉鎖障害(NTDs)の発症率低下が、複数の疫学研究で示されている。NTDsは、先天性に脳や脊柱に発生する癒合不全であり、二分脊椎、無脳症、脳瘤が含まれる。国内の発生頻度(出生1万対)は、二分脊椎で5.18、無脳症0.37、脳瘤0.83である。自然発生率は非常に低いが、重篤な例も含まれるため、予防は重要である。もっとも、NTDsの発症には遺伝など他の因子も考えられ、葉酸摂取により確実に防げるわけではない点には注意したい。

NTDsは妊娠4~6週にかけて発症するため、妊娠に気が付いてから葉酸を摂取し始めたのでは間に合わない。妊娠の可能性のある女性では、妊娠判明前からの葉酸摂取が重要である。妊婦の葉酸の摂取推奨量は、480μg/日である。厚生労働省は妊娠を計画する女性に対し、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、栄養バランスの取れた食事に加えて栄養補助食品からの400μg/日の葉酸摂取を推奨している。市販の代表的な妊婦向けサプリメントでは、400μg/日の葉酸を摂取できる。

葉酸は水溶性ビタミンであり過剰症は知られていないが、高用量の葉酸摂取はビタミンB12欠乏による悪性貧血などの症状が判断しづらくなる可能性がある。サプリメントとしては、1000μg/日を超えて摂取しないように注意したい。一方、NTDs児の出産経験のある女性や、一部の抗てんかん薬など葉酸拮抗薬の服用者が妊娠を計画した際は、医師の管理下で医薬品による高用量の葉酸摂取が必要とされる。

我が国においては、厚労省や関連学会から「妊婦の葉酸摂取を推奨する」提言が出されている。しかし、約10年の国内経過では、二分脊椎の発生率の減少傾向はみられていない。また、妊婦の葉酸摂取の現状を調べた調査では、妊娠前から葉酸を摂取していた割合が10~20%にとどまっていたと報告されている。

2000年に厚生労働省は妊娠を計画している女性に対し、「妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、葉酸をはじめ、その他のビタミンなどを多く含む栄養のバランスが取れた食事が必要である」ことを強調しています。

しかし「妊娠3か月まで」の間だけ葉酸を摂取すればよいというわけではありません。

葉酸は、奇形を予防するためだけでなく、そのほかにも大切な働きをしているからです。

その一つが遺伝子発現を修飾するエピジェネティクス(DNAの化学修飾などによる遺伝子発現調節システムをいう)です。
さらに細胞分裂に重要な核酸合成にも関与しているのです。

動物実験では、妊娠中の葉酸不足は、出生児に望ましくない影響が出ることが報告されています。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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