2025年9月25日更新.2,632記事.

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ノンアルコールビールなら未成年でも飲める?

ノンアルコールビールなら未成年でも飲める?─法制度・健康リスク・社会的影響から考える

コンビニやスーパーでも手軽に買えるようになったノンアルコールビール。車の運転前や休肝日などに活用している大人も多く、「アルコールが入っていないから安全」と考えている人も少なくありません。

では、「未成年がノンアルコールビールを飲むのは問題ないのか?」と問われたら、あなたはどう答えるでしょうか?

結論から言えば、「法律上はOK、でも健康や社会的な観点からは推奨できない」というのが現状です。

ノンアルコールビールとは?

「ノンアルコール」と名のつく飲料には大きく2つのタイプがあります。

・アルコール度数0.00%の「完全ノンアルコール」飲料
・アルコール度数0.1%〜0.9%の「低アルコール」飲料

一見するとどちらも「ノンアルコール」ですが、厳密には違います。日本の酒税法では「アルコール1%以上の飲料」を「酒類」と定義しており、それ未満の飲料は酒類ではなく、「清涼飲料水」として扱われます。

つまり、ノンアルコールビールは法律上は“お酒”ではなく、清涼飲料水の一種ということになります。したがって、酒税は課されず、購入や販売にも年齢制限はありません。

法的には未成年が飲んでも問題ないの?

この点が非常にややこしいところです。現行法では、アルコール1%未満の飲料は「酒類」ではないため、未成年が飲んでも違法にはなりません。

しかし、ノンアルコールビールに関しては、以下のような「自主規制」や「社会的な認識」が存在します。

● 飲料メーカーによる自主規制
多くの大手メーカー(アサヒ、キリン、サントリーなど)は、ノンアルコールビールに関して以下のような表示を行っています。

「未成年者の飲用はお控えください」
「20歳以上の方の飲用を想定して開発しています」

つまり、法的に禁止されていなくても、業界全体が“未成年に飲ませるべきではない”と考えているということです。

● 学校や保護者の対応
多くの学校では、ノンアルコールビールの持ち込みや飲用を禁止しています。

家庭でも、「未成年に飲ませてよいか迷う」という保護者が増えています。

このように、「法的には問題なし」でも、「社会的には好ましくない」と判断されているのが実情です。

ノンアルでも酔う?─実験で明らかになった“微量アルコール”の影響

「0.1%程度のアルコールなら影響はないのでは?」と思う方も多いでしょう。しかし、意外なことに、微量のアルコールでも体に反応が出るケースがあることがわかっています。

2010年放送の『所さんの目がテン!』(日本テレビ)では、興味深い実験が行われました。

● 実験内容と結果
アルコールに弱い被験者に、アルコール0.1%含有のノンアルコールビールを複数本飲んでもらった。

その結果、酔ったときに現れる「眼球振盪(がんきゅうしんとう)」という現象が確認された。

眼球振盪とは、酔ったときに黒目が無意識に左右に揺れる症状で、ごく軽度の酩酊でも確認される客観的指標です。

この結果は、「ノンアルコールビールでも、体質によっては酔う可能性がある」ことを示しています。特にアルコールに弱い人や、成長期の子どもにとっては注意が必要です。

未成年の体に与える影響とは?

未成年は、まだ成長過程にある臓器や神経系が未熟な状態にあります。特に以下のような理由から、ノンアルコールであっても注意が必要です。

● 肝臓が未発達
アルコールの分解を担う肝臓の酵素は、子どもでは十分に発達していないため、微量のアルコールでも体に負担がかかります。

● 発育への影響
長期的な視点では、ホルモンバランスや脳の発達に悪影響を与えるリスクも否定できません。たとえ0.1%であっても、それを繰り返すことに意味のある安全性データは存在しないのです。

習慣化の怖さ─“ビールの味に慣れる”ことの問題

ノンアルコールビールは、見た目も味も、まるで本物のビールとほぼ同じです。そのため、未成年がこの味に慣れてしまうと、以下のようなリスクが生じます。

● 習慣性と興味の拡大
・「ビールの味が好き」という感覚が育ってしまう
・成人後に、アルコール依存症リスクが高まる可能性
・飲酒への心理的ハードルが下がる

● 飲酒の模倣行動
未成年が友人と「乾杯」したり、「ビールの雰囲気」を楽しんだりすることで、酒文化への順応が早まり、飲酒行動への導入が早まると懸念されています。

海外の対応─未成年のノンアル飲料は禁止されている?

海外では、ノンアルコール飲料に対する規制は国によって異なります。

・アメリカ:アルコール0.5%以下は「ノンアルコール」と表示可能だが、多くの州では未成年の購入を制限
・ドイツ:16歳未満への販売は禁止されているケースもある
・イギリス:年齢制限はないが、自主規制が強く徹底されている

日本のように、完全に自由という国はむしろ少数派であり、「ノンアル=安全」という誤解に警鐘を鳴らしている国も増えています。

未成年とノンアルコールビールの付き合い方

改めてまとめると、ノンアルコールビールは以下のような側面を持っています。

観点内容
法律アルコール1%未満であれば「酒類」に該当せず、法的制限なし
健康微量のアルコールでも体に反応が出る可能性、未発達な肝臓には負担
社会業界・学校・家庭で「飲ませない」というのが主流の対応
心理習慣化により将来の飲酒リスクが高まる恐れあり

したがって、「飲んでも違法ではないが、健康面・教育面・社会的観点から未成年には避けるべき」というのが総合的な結論です。

大人と同じような体験をさせてあげたいという気持ちがあっても、「ビール風味の炭酸飲料」にとどめるなど、子どもへの配慮が必要です。

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