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ACE阻害薬で咳が出たら中止?
公開. 更新. 投稿者:高血圧.この記事は約9分5秒で読めます.
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ACE阻害薬で咳?
ACE阻害薬で咳が出るのはなぜ?
ACE阻害薬による咳の副作用は有名である。
ACE阻害薬がブラジキニンの分解を抑えた結果、気管支を収縮する物質(ブラジキニン、サブスタンスP、エンケファリンなど)が増えるため、咳が表れると考えられています。命にかかわることはなく、薬を中止すれば元に戻ります。
ACE阻害薬の副作用である咳は、「空咳」と呼ばれる痰の絡まない咳です。服薬を開始して数週間後に発現し、乾性で持続性の咳が夜間に多くみられるのが特徴です。
服用患者の20~30%に見られるため、薬剤交付時に必ず説明する必要があります。
発症頻度は高いが、最初の1~2ヶ月を乗り切れば、ほとんどの場合、咳による問題はなくなり、継続投与が可能になります。2~3ヶ月継続投与すると80~90%は完全消失する。
空咳は副作用としては軽微なものが多く、服用を止めれば通常1週間以内に治まります。
また投与中止が不可能な場合、投与時間の変更や他のACE阻害薬への切り替えも有効です。β遮断薬の場合、気管支を広げる神経(交感神経)を抑える作用もあるため、呼吸困難や咳が表れることもあるので注意が必要です。
朝よりも寝る前に飲んだほうが発現率が低いという報告もあります。
ACE阻害薬は夕食後服用がいい?
1日1回投与のACE阻害薬の服用時点については、添付文書上特に定められてはおらず、1日1回の用法の場合、朝食後と指示されることが多いが、夕食後服用のほうがよいケースがある。
副作用防止の観点から、投与時期を朝から夜に変更することで、1日1回投与型のACE阻害剤の空咳の副作用を軽減できる可能性が示唆されている。
マレイン酸エナラプリル(レニベース)の服用中に空咳の副作用を訴えた24人の患者で、投与時期を朝食後から夕食後に変更した研究では、3人に空咳が完全に消失し、17人で症状が軽減したと報告されている。
投与時期の変更により空咳が軽減される機序の詳細は不明だが、ACE阻害剤を夜に投与すると、朝に投与した場合よりも、空咳の原因となるブラジキニンの血中濃度の上昇が低いことが確認されている。
なおACE阻害剤では、夕食後に服用した場合にも、夜間血圧の過度な降下は起こりにくいとされる。
ブラジキニンと冠動脈疾患
ブラジキニンはACEによって分解されますから、ACE阻害薬を服用するとブラジキニンの代謝が抑制されます。
ブラジキニンが蓄積すると、血管内皮のB2受容体を介して、NOとプロスタサイクリン、EDHFという血管拡張作用の強いペプチドを放出します。
ブラジキニンが非常にいい方向に働くのです。
ブラジキニンは血管保護に働くのですが、特に冠動脈の太い部位での調節はブラジキニンが重要です。
ACE阻害薬はブラジキニンを蓄積できるという点で冠動脈疾患には合っている薬剤なのかも知れません。
ARBでもブラジキニンが上がるという報告はありますけれども、程度的にはそれほど強くないし、ARBの臨床的なメリットはブラジキニンに求めるよりは、やはりアンジオテンシンⅡのⅠ型受容体をブロックすることだと思います。
したがって、組織のブラジキニンを蓄積できるという特性は、現行の血圧の薬の中ではACE阻害薬だけと考えてよいでしょう。
ACE阻害薬で肺炎予防?
ブラジキニンというペプチドは咳だけでなく咽頭反射を良くする、そのことによって誤嚥を起こしにくいということが言われています。
ただこれは、サブスタンスPも関係しているだろうと言われています。
サブスタンスPやブラジキニンによって咽頭反射、嚥下反射が大変良くなってくるために、特に高齢者の誤嚥を繰り返している人は、予防的にACE阻害薬を飲むことが推奨されています。
誤嚥性肺炎を発症する際、見ている前でゴホゴホと誤嚥をするということは少なく、不顕性誤嚥といって、特に夜寝ているときに誤嚥を継続し発症するそうです。
すなわち不顕性誤嚥が治っていないので繰り返す。
根本治療ができていないので、抗生剤の問題ではない。
現行で不顕性誤嚥を抑えることができる唯一の薬がACE阻害薬とのこと。
ARBには認めないACE阻害薬独特の特徴として、誤嚥性肺炎の予防効果がある。
これは咳に伴った2次的なものでなく、サブスタンスPなどを介した嚥下反射そのものの改善効果であり、咳が出なくても予防効果は期待できる。
超高齢社会になった日本の高血圧治療で、降圧とは独立した生命予後の改善が期待できる。
ACE阻害薬の咳は長くは続かない?
ACE阻害薬の咳は、たとえ出ても継続投与すると8〜9割の人が完全消失します。
ACE阻害薬の咳は飲み始めに多く、飲み始めてから半年以降に咳が出るという人はまれです。
飲み始めの数週間、1〜2ヶ月が多い。
患者さんに必ず教えておくことは、「この薬は何%かの患者さんでは咳が出ますよ」ということです。
ただし、咳が出ても2〜3ヶ月頑張ってもらうと8〜9割の人が完全消失します。
1〜2回の咳で投与を中止するというのは、考え直すことも必要でしょう。
ですから患者さんに「確かに出ますよ」ということは言う必要がありますが、「出るけれども、2〜3ヶ月我慢すると完全に治りますよ。それでもだめなときは考えましょう」という説明です。
アミールSで咳が出る?
血圧が高めの方向けのトクホ、「アミールS」の使用上の注意には以下のように書かれている。
※ 体質によりまれにせきがでることがあります。その際は医師にご相談ください。
※ 高血圧症の治療を受けている方、妊娠中又は妊娠している可能性のある方、及び腎機能が低下している方は、医師とご相談の上、飲用してください。
アミールSの成分ラクトトリペプチドの降圧作用は、ACE(アンジオテンシン交換酵素)阻害作用によるもの。
ということで、ACE阻害薬の副作用である空咳が出る可能性もあるのでしょう。
禁忌とはなっていませんが、妊婦は服用を避けたほうが良いでしょう。
ACE阻害薬と麦門冬湯
ACE阻害剤による空咳を軽減する目的で、麦門冬湯が併用される場合がある。
エナラプリル服用中に断続的な空咳を呈した7人の患者に、麦門冬湯1日9gを投与した研究では、3人で自覚症状が全くなくなり、3人で明らかな症状軽減を認めたと報告されている。
麦門冬湯の鎮咳効果をもたらす主要な有効成分は、ステロイドサポニンの一種であるオフィオポゴニンだと考えられている。
オフィオポゴニンがどのように作用するのかはよくわかっていないが、ACE阻害剤による空咳にはコデインのような中枢性鎮咳剤は無効である場合が多いことから、同成分は、ブラジキニンやサブスタンスPなどに起因する咳反射を、末梢で抑制するのではないかと推測されている。
ARBで咳は出ない?
高血圧の患者でACE阻害薬を内服している場合、その副作用として乾性咳嗽を発生することがあります。
その発生頻度は10~30%ともいわれており、中年女性に多い傾向があります。
そのメカニズムとして、ACE阻害薬がブラジキニン、サブスタンスPの濃度を上昇させ、咳受容体を刺激することが考えられています。
ACE阻害薬による咳嗽を疑った場合は薬剤の中止により1週間程度で咳は消失することが多いです。
ACE阻害薬の作用が強力な半面、副作用(有害事象)もいろいろありますが、代表的なのが空咳です。ブラジキニンはACEによって分解されますが、ACE阻害薬によって分解を抑制され、その結果蓄積が起こり、気道にある受容体を刺激して空咳を起こすと考えられています。
空咳が出るのは、服用後1~2か月後が多いですが、1~2年後に出てくることもあります。
風邪と勘違いしている人もいるので、空咳が長引くときは主治医に相談したほうがよいでしょう。
ARBと咳
ACEは、基質特異性はあまり高くなく、アンジオテンシンⅠ以外にもキニン、エンケファリン、サブスタンスPなど、さまざまなペプチドが基質となりますが、中でも特に、キニンに対する作用は、ACE阻害薬のも1つの作用としてよく知られています。
生体内でカリクレインから生成されるブラジキニン、カリジンなどのキニンは血管平滑筋弛緩作用、腎臓の遠位尿細管でのナトリウム再吸収抑制作用などを持ち、降圧効果、利尿効果などを現します。
また、最近ではブラジキニンは血管平滑筋にあるブラジキニン2受容体に結合して、一酸化窒素(NO)やプロスタグランジンI2などの産生を促進し、血管拡張作用、抗動脈硬化作用などを発現することも明らかにされています。
ACEは、キニンを分解して不活性化するキニナーゼと同一の酵素であるため、ACE阻害薬は、キニンの分解を抑制して、その作用を増強することが期待できます。
ただし、増加したキニンが気管支のC繊維受容体を刺激することによる咳の副作用の発現というデメリットも併せ持っています。
ARBは、キニナーゼに対する作用を持たないため、キニンによる効果が得られない一方で、咳の副作用が少ないことが特徴とされていますが、AT2R刺激作用により内因性ブラジキニンの産生が促進されることも指摘されており、キニン系に対する作用から、ACE阻害薬と同様の効果、副作用が発現する可能性も推測されます。
ARB
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬はアンジオテンシンⅡ受容体にアンジオテンシン変換酵素(ACE)により作られたアンジオテンシンⅡが結合するのを妨げます。
それにより、血管収縮作用、血管壁肥厚作用、動脈硬化作用、心筋には心筋収縮力増強作用、心筋肥大作用などの作用を発揮できないようにします。
A-Ⅱ受容体に特異的に結合し、A-Ⅱの生理作用(血管収縮、体液貯留、交感神経亢進作用)を抑制。
ACEを介さないキマーゼ系も阻害。
type1受容体を選択的に阻害。
ストレッチなど機械的な受容体刺激も阻害する性質あり。
副作用がなく、ACE阻害薬と同等以上の降圧効果を有し、わが国での使用が急増。
今までにACE阻害薬で示された動脈硬化、糖尿病新規発症、心肥大・心不全、心房細動、腎障害などに対する予防効果も証明されつつある。
ACE阻害薬と異なり、キニンの分解を阻止する作用がなく、咳、発疹、血管神経浮腫などが少ない。
妊婦や重症肝障害患者への投与は禁忌、クレアチニン2mg/dLでは減量など他の副作用・注意はACE阻害薬と同様。
アンジオテンシンⅡ1型受容体の遮断薬である。
いずれのARBも、程度の差はあれ降圧効果が強く長時間作用を示す。
副作用が少ないのも特徴といえる。
降圧作用以外の有利な作用(プレイオトロピック:多面的作用)が期待されている。
たとえば、糖尿病発症の抑制作用などであり、降圧を超えた臓器保護作用・合併症予防作用が強調されているが、ARBの第一義的な効果は降圧作用にあることは疑いない。
なお、アルドステロンエスケープが生じることから、ACE阻害薬との併用の有用性も報告されている。
最も相性の良い併用薬は少量の利尿薬である。
きわめて少量の抗アルドステロン薬(スピロノラクトン12.5mg以下)の併用は、アルドステロンエスケープに対しても有効であり、血清Kに注意しつつ、という前提で選択肢の1つとなる。
またCa拮抗薬との併用で降圧効果が増強される。
妊娠高血圧では禁忌である。
・ACE阻害薬、ARBのすべてに糖尿病性腎症を含む腎障害や心不全に適応があるわけではないが、これらの薬剤はこうした疾患に通常使用される。
・一般に副作用が少なく、長時間作用型であることは服薬指導において重要な説明ポイントとなる。
・脱水-脱塩(高度な食塩制限、利尿薬併用時、夏季)時に過降圧を生じることがあり、ことに高齢者で説明が必要である。
・すでに高K血症のある者、またそれを生じる可能性のある病態では注意を要する。
・スピロノラクトンとの併用には高K血症という観点から注意を要するが、ごく少量のスピロノラクトンではあまり心配する必要がない旨を説明する。
・少量のサイアザイド系、サイアザイド類似薬とは相性も良く、高K血症に予防的に働くことを伝える。
・特に虚血性腎疾患(両側腎動脈狭窄など)で、腎機能の急性増悪をみることがあり、注意を喚起せねばならない。
・NSAIDsの併用はARBの降圧効果を減弱することを伝える。
・妊娠の有無は服薬開始時にチェックされなければならない(妊婦には禁忌)。
・降圧のピークに達するのに1~2週間が必要であることをあらかじめ知らせておく必要がある。
・現在最も高価な薬剤であり、これはコンプライアンスに直接影響する。
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