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吸入補助器(スペーサー)にエビデンスは無い?
公開. 更新. 投稿者:喘息/COPD/喫煙.この記事は約7分16秒で読めます.
5,622 ビュー. カテゴリ:吸入補助器の効果
吸入補助器って使わないとダメ?
エアゾール式の吸入器(pMDI:pressurized metered-dose inhaler、加圧定量噴霧式吸入器)をうまく吸えない患者向けに吸入補助器(スペーサー)が勧められることがある。
「吸えてる」と思っている患者でも、ほとんど口の中に噴霧してるだけで、肺・気管支まで到達していないというケースもあります。口の中に噴霧してしまうことで口腔内カンジダのリスクも増えます。
薬剤師「吸えてますか?」→患者「吸えてます」→薬歴「吸えてる」という機械的な聴取でなく、息を吸うタイミングなど常に再確認することが重要です。
フルタイドエアゾールの吸入方法には「吸入口をくわえないで口より約4㎝離して吸入します」というやり方も紹介されています。こっちのやり方でやっている人を聞いたことはありませんが、口内炎になりやすい人等にはこの方法やスペーサー使用など勧めてみるのもよい。
吸入補助器(スペーサー)の使用で、より効果的に吸入療法を行うことができ、副作用の軽減にも有効です。
有償・無償のものがあり、医療機関や薬局で入手・購入できるものもありますが、使用している吸入薬に対応しているかどうか確認が必要です。
スペーサーにエビデンスはない?
最近はほとんどドライパウダー式の吸入剤になっているので、スペーサーの問題は取り上げられなくなってきていますが。
スペーサーについて日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会では、静電気が発生しにくいアルミニウム製のものか洗剤で事前処理(コーティング)が行なわれているもので、かつ多様な薬剤に対して普遍的に使用でき、空気力学的ならびに臨床的検討が既になされているなどの点からエアロチャンバープラス、オプティヘラー、ボアテックスの3種類を推奨しています。
スペーサ内に静電気が発生するとスペーサー内に薬剤が付着することがあります。
かつては、フルタイドエアゾールにはボルマチックソフト、キュバールにはデュオペーサー、インスパイアイースがありましたが、上記の観点からすべて配布中止となっております。(オルベスコのみ専用スペーサを現在も希望があれば配布しているそうです)
■宮川医院■吸入ステロイド薬の使い方■
メーカーに問い合わせても、無償提供されているプラスチック製のスペーサーは静電気の問題からエビデンスが証明されていないとのことで、積極的に推奨できず、あいまいな回答しか得られず。
昔はスペーサーをもらって使っていたという患者さんを納得させるのに時間を要す。
オルベスコにスペーサーはいらない?
オルベスコから噴射されるエアロゾルは1μm程度の微粒子であり、肺内到達率が52%と高いため、スペーサーを用いずにネブライザーを直接口にくわえて吸入できます。
吸入補助器(スペーサー)とは?
気管支喘息に使用される吸入薬にはpMDIやDPI、ネブライザー吸入器などがあるが、pMDIでは基本的に「吸入補助気器(スペーサー)」を使用して吸入する方法が推奨される。
pMDIは噴霧と吸気のタイミングを同期させることが一番重要であるが、最も難しい動作ポイントでもある。
吸入時に強く早く吸入してしまうことも多く、説明してもなかなかうまく実行できない場合が多い。
スペーサーを使用することにより、このポイントを解決でき、特に小児や高齢者などpMDIの基本動作ができない可能性がある場合や、吸気タイミングの同期が難しい場合にその役割は大きいものとなる。
スペーサーの長所と短所
スペーサーを使用する利点は、⑴吸入手技の個人差が小さくなる、⑵吸入ステロイドの局所性副作用のリスクを軽減する、⑶吸入高率が高まる、⑷噴霧ガスによる気道への直接刺激を軽減する、など。
⑵については、口腔内に沈着して口腔カンジダなどの局所性の副作用を起こすような大型の粒子がスペーサー壁に付着し除去されることが報告されている。
また⑶は、スペーサー内に、エアロゾルが貯留することで気化が進み、粒子が微細化することで肺沈着に最適な微粒子が多く作られるためとされている。
長所
・吸入と噴霧の同期が不要
・噴霧後の薬剤の空気中への拡散を防止
・ゆっくりとした吸入速度での吸入が可能
・溶媒による気道刺激の軽減
・粒子径の大きいエアゾルの除去、口腔内への沈着を軽減
・副作用の軽減
・マスクつきなど、乳幼児にもpMDIの使用が可能
・音やバッグの収縮で吸入の確認が可能(一部)
短所
・簡便性・携帯性の低下
・静電気による貯蔵部壁への薬剤の吸着
・適したサイズ選択の必要性
・一部有償のものがある
スペーサーの使用により吸気と噴霧の同期が必要なくなり、さらにゆっくりとした吸入を行うことができる。
また、pMDIから噴出される粒子はすべて均一ではなく、大きすぎる粒子は口腔内へ付着しやすい。
この大きすぎる粒子はスペーサーの貯蔵部に噴霧される際に内壁に多く付着するため、副作用の軽減が期待できる。
マスク付きスペーサーは顔とマスクを密着させて使用し、乳幼児から成人まで対応することができる。
一部のスペーサーでは貯蔵部の収縮やフローインジケータ機能、音が鳴ることなどから吸気や吸気速度を確認できる。
ただし、貯蔵部壁への付着による気管到達薬剤の減少や、操作の簡便性・携帯性の損失、マスクやサイズ選択の必要性などの短所もある。
スペーサー使用時の注意点
スペーサー使用時の注意点は、スペーサーに複数回噴霧をしない、噴霧後すぐに吸入する、マスク付きスペーサーを使うときはマスクを顔に密着させる、静電気を生じさせないように取り扱うなどである。
医師から複数回の吸入指示がある場合には、スペーサーに数回分まとめて噴霧せずに、一押しごとに吸入する必要がある。
2噴霧まとめて捜査した場合に、1噴霧当たりの吸入可能な粒子は一押しごとに吸入した場合と比べて43%低下したという報告もある。
マスク付きスペーサーを用いる場合は、マスクと顔の隙間から薬が漏れないようにマスクを顔に密着させる。
また、スペーサーに静電気が生じると薬剤がスペーサーに張り付いて吸入効率が下がるため、使用前にタオルで強く拭くなどの行為は行わないようにする。
スペーサーの種類
スペーサーは、特定の吸入薬専用のものと、複数のpMDIに共通して使用できるものがあり、専用のものは無償で提供されているものがほとんどである。
共通して使用できるスペーサーには、インスパイアイース(無償、MSD)、エアロチャンバー・プラス(有償、アムコ)、オプティヘラー(有償、フィリップス・レスピロニクス合同会社)などがある。
製品名 | 製造販売 | 特徴 |
---|---|---|
エアロチャンバープラス | アムコ | ・マウスピースタイプは吸気速度が早いと笛が鳴る ・フローインジケータで正しく吸入できているか確認が可能 |
PARIボアテックス | 村中医療器 | ・吸入の際、換気バルブの開閉が見え、正しく吸入できているか確認できる |
オプpティチャンバーダイアモンド | フィリップス | ・吸気速度が早いとアラーム音が鳴る ・呼気弁が付いている |
吸入補助器(スペーサー)のエビデンス
気管支喘息のエアー式の吸入剤は、霧状に噴霧した薬を吸い込むことで気道、気管支に作用させます。
最近はドライパウダー式の粉状の吸入剤が多くなりましたが、吸い込む力が必要なので、乳幼児には使えません。
エアー式の吸入剤を使うときに、指で押して、出た霧を吸い込むというタイミングを合わせるのが困難です。
そのため、吸入補助器(スペーサー)という器具を使って、一旦その中に入れた霧をゆっくり吸い込むという方法が取られています。
このスペーサーにエビデンス(医学的根拠)が有るものと無いものがあるということで、製造を中止するメーカーが出ました。グラクソのボルマチックソフトですが。
ボルマチックソフトやデュオペーサー、インスパイアイースなどエビデンスの無いスペーサーは無料でしたが、エビデンスがあるスペーサーは有料です。
メーカーとしてはタダで患者さんに渡すのは嫌でしょうし、効果が無かったと訴えられる前に製造中止の手を打つのも理解できます。
今後、スペーサーの無償提供を止めたグラクソのアドエアエアー、フルタイドエアーの販売が落ち込んでいくのか、他のメーカーもグラクソ同様にスペーサーの無償提供を止めて、小児科医が国に「スペーサー提供料」のような点数を求めるのか、はたまた3000円くらいかかるスペーサーを勧めていくのかはわかりません。
吸入補助器一覧
ファイソンエアー(アステラス)
マイクロヘラー(アステラス)
スピンヘラー(アステラス)
イーヘラー(アステラス)
インハレーションエイド(日本ベーリンガー)
オルベスコ専用スペーサー(帝人)
ボルマチックソフト(グラクソ)中止
エアロチャンバー・プラス(アムコ)
インスパイアイース(シェリング・プラウ)
デュオペイサー(シェリング・プラウ)
吸入スペーダー(大塚)
メプチンポケットスペーサー(大塚)
スペーサーは無料?
喘息患者に使用する小型吸入器や噴霧・吸入用器具(散粉器)を薬局が交付する場合も、容器の場合と同様の考え方で貸与が原則である。
しかし、実際には、製薬会社が無償で小型吸入器やスペーサーなどを提供しているため、薬局は無償で患者に提供している。
スペーサー以外の吸入補助具
グリップサポーター(タービュヘイラー):タービュヘイラーの底のつまみ部分に取り付けて、くぼみに指をかけて操作することで、クル、カチの操作を容易にするものです。横に回転方向も大きめに書いてあるので、回す順番がわからなくなりがちな方にも交付することがあります。
回転君(レスピマット):レスピマットの底に取り付けて、充填操作のケース下半分を 180°回転させる操作を容易にするものです。
フルプッシュ(フルティフォーム)、プッシュサポーター(エアロスフィア):pMDI はそのままですとボンベを押し込む力が不十分なために、タイミングよく押し込むことができず同調困難になることがあります。同調困難の対応としてはスペーサーもありますが、もし押す力が不十分なためにタイミングよく押下ができないことが問題のようなら、pMDI 各社から出ている吸入補助具が有効です。吸入補助具は梃子の原理でより小さな力でボンベを押せるようになっていることを基本に、両手操作を可能にする広いレバーやカウンターの数字を見やすくする拡大鏡などの工夫がされています。
吸入薬指導加算の算定のために、吸入剤のデモ機を用意している薬局は増えたと思いますが、上記の補助具も取り揃えておくと、より丁寧な服薬指導ができるのではないかと思います。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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