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膀胱尿管逆流症にバクタの長期投与?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約5分36秒で読めます.
5,417 ビュー. カテゴリ:膀胱尿管逆流症とは?
膀胱尿管逆流症とは、おしっこが膀胱から尿管と通って、腎臓へ逆流する病気です。正常な泌尿器をもつ人では尿管の出口(尿管口)には逆流防止弁の仕組みが備わっていて、膀胱に溜まった尿が腎臓へ流れることはありません。
膀胱に溜まった尿が尿管、腎臓へ逆流する。これは膀胱と尿管の接合部に先天的な形成不全があって、同部の機能異常によって生じるものです。
この症状が起こると、尿中に存在する細菌が、上部尿路や腎臓に感染しやすくなり、腎機能低下をもたらすことがあります。
一度でも尿路感染症を起こしたことのある小児では30~50%にこの症状が検出されます。
小児は尿道が短いので逆流するリスクが高いが、成長とともに尿道は長くなり、膀胱は大きくなってくるので、年齢とともに改善し自然治癒することが多い。
バクタと膀胱尿管逆流症
尿路感染症予防にバクタが長期処方されているお子さんをたまに見かけます。
いつまで飲めば良いのか、不安に思っている親御さんもいます。
女児で膀胱尿管逆流を伴う尿路感染症が診断された場合には、ST合剤(バクタ)を2年間継続的に使用することにより、尿路感染の再発をほぼ半分に抑制する効果が期待出来ます。
この効果が明瞭に確認されているのは、ST合剤(バクタ)のみです。
抗生物質の長期の使用により、大腸菌の耐性化は進行しますが、そのリスクがどの程度のものであるかは、現時点では明確ではありません。
また男児においては、尿路感染の再発自体が少ないため、抗生物質使用の有用性は確認されていません。
排尿時膀胱造影での逆流の程度と水腎症の程度によって以下の5段階に重症度が分類されます。重症度に応じて治療法を選択します。
I 度:逆流は尿管まで
II 度:逆流は腎盂に達し、水腎症(腎盂の拡張)はない
III 度:逆流は腎盂に達し、水腎症は軽度
IV 度:逆流は腎盂に達し、水腎症は中等度
V 度:逆流は腎盂に達し、水腎症は高度で尿管のねじれを認める
内視鏡治療を含む手術治療は、グレードⅤの逆流では第一選択と考えられますが、それ以外のケースでは、2年間程度の観察期間において、抗生物質の予防投与と比較して、その効果において明確に優れていることを示す、信頼のおけるデータは存在しません。
膀胱尿管逆流症の治療の目的は、腎臓の瘢痕化などの病変の予防にありますが、この点について、発熱などの症状が出ればその都度対応する、という、未治療の慎重な経過観察と比較して、手術や抗生物質の予防投与が、より優れている、という根拠も現時点ではありません。
バクタを長期服用しても大丈夫か?
バクタ顆粒が小児の尿路感染症の予防に、少量長期で処方されていることがある。
週1、週2、週3などの投与法もあるようだ。
尿路感染症を発症すると、30~50%は再発すると考えられている。
尿路感染を起こしている原因として、膀胱尿管逆流症というのがある。
細菌(ほとんどが大腸菌)はおしっこの出口から膀胱に入ってきますがここで侵入が止まれば、膀胱炎になることはあっても熱は出ません。ところが膀胱尿管逆流症のある子どもは、おしっこをするたびに膀胱の出口からおしっこが出るだけでなく、尿管の方にもおしっこが逆戻りするために、細菌が腎臓まで送り込まれてしまいます。
腎臓は体の中でもっとも血液の豊富な臓器であり、ここに細菌が取り込まれると39~40℃という高熱を出しやすいのです。これを腎盂腎炎と呼びます。もちろん逆流がなくても腎盂腎炎は起きることがありますが膀胱尿管逆流症のある子どもでは、その頻度が高いのです。1歳以下の赤ちゃんで腎盂腎炎を起こした場合、半数以上に膀胱尿管逆流症が見つかります。
そして、腎盂腎炎を繰り返すと腎臓に瘢痕が出来て腎機能低下、腎不全という流れになるのでバクタの予防的投与が必要となる。
でまあ、子供にバクタを長期間服用させることになるわけですが、世のお母さん方はバクタを長期間服用させて大丈夫なのかと心配になるわけです。
以前は副作用が怖いというイメージのあったバクタ。エリスロマイシンやクラリスロマイシンなどの長期処方とは違った副作用がありそうな印象。
少量だから大丈夫、と言えるのか。
バクタの副作用について調べてみる。
バクタの添付文書をみると、警告に
血液障害,ショック等の重篤な副作用が起こることがあるので,他剤が無効又は使用できない場合にのみ投与を考慮すること。
いきなり赤字での警告文。これは処方を躊躇します。
妊婦や新生児にも禁忌となってるし。
胎児や新生児で禁忌なのは、高ビリルビン血症になりやすいから。新生児は赤血球の寿命が短くビリルビンが作られやすい。
バクタは蛋白結合率が高いので、アルブミンと結合していたビリルビンが遊離して、ますます高ビリルビン血症になりやすくなる。
でも、1歳過ぎれば大丈夫。1歳未満でもバクタが処方されることはある。
でも、顆粒球減少や血小板減少などの血液障害は起こりやすいので、子供で頻繁に採血するわけにもいかないから、出血、あざ、高熱とか初期症状には注意するよう母親に伝えたほうがいいかな。
腎排泄だからバクタが良いんだろうけど、副作用面からしたら第一世代セフェムとかのほうが安心して使えそうな気がする。
将来起こり得る腎不全のリスクと、バクタの副作用を天秤にかけたらバクタ使ったほうがいいという判断なのだろう。
バクタで腎機能低下?
バクタの添付文書の、臨床検査結果に及ぼす影響として、
「クレアチニン値の測定(ヤッフェ反応等)では、見かけ上の高値を呈することがあるので注意する。」
というのがある。
トリメトプリムは腎細胞からクレアチニンが分泌されるのを阻害する効果があります。
そのため、ST合剤を使うと血清クレアチニン値が上昇することがあります。
しかし、これは腎機能の低下を意味していないので、そのまま経過を観察してSTを使い続けてもかまいません。
通常、クレアチニンはベースラインより10%くらいまでの上昇を示すことが多く、当然STをやめればクレアチニン値は下がります。本当の意味での腎毒性は、ST合剤で起きることは極めて稀です。
それとは別に、ST合剤を用いると高カリウム血症を起こすことがあります。
これはトリメトプリムが遠位腎細管からのカリウムの排泄を妨げるからだとされています。
高カリウムを来す他の薬剤、例えばACE阻害薬などと一緒に使うときは要注意です。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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