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女性にハルナール?
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱.この記事は約5分1秒で読めます.
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女性にハルナール?
ハルナールは前立腺肥大症に使われるα1遮断薬という薬です。
α1遮断薬の中には、高血圧に適応のあるものもありますが、ハルナールの適応は「前立腺肥大症に伴う排尿障害」のみです。
女性に前立腺は無いので、まず使われることはありません。
しかし適応外処方で、神経因性膀胱に用いることがあるようです。
エブランチルは女性にも使える?
排尿困難に使われるα1遮断薬。
ハルナール、フリバス、ユリーフの適応は「前立腺肥大症に伴う排尿障害」
しかし、エブランチルには、「前立腺肥大症に伴う排尿障害」だけじゃなく「神経因性膀胱に伴う排尿困難」の適応もある。
なので、前立腺の無い女性の排尿困難に使えるα1遮断薬はエブランチルだけ。
しかし実際は適応外でエブランチル以外の薬も使われることがあります。
女性の排尿困難
女性でも尿排出障害は決してまれではなく、下部尿路症状を訴えて尿流動態検査を受けた女性の約30%が尿排出困難を自覚していたとされる。
原因の主体は、排尿筋の活動低下と考えられている。
排尿筋低活動を有する女性では、排尿困難を訴えず、頻尿や尿失禁などの症状で受診することが多い。
多量の残尿がありながら尿排出困難を伴わない女性では、わずかに残る排尿筋収縮力により膀胱内にある尿の一部を頻回の排尿で排出していると考えられる。
このような状態にある女性が、抗コリン作用がある治療薬(排尿筋収縮力を低下させる)を服用したり、排尿を我慢することが続いたりすると、もはや排尿筋は全く収縮できなくなり、簡単に尿閉にまで至ってしまうことがある。
排尿筋の活動低下に至る主な要因として、骨盤臓器脱などによる膀胱出口部閉塞、慢性的に排尿筋が伸展されることによる膀胱壁過伸展、排尿筋過活動を認めながら収縮力が障害される排尿筋過反射型収縮不全症、膀胱の慢性炎症性変化に伴い排尿筋収縮力が低下に至る膀胱炎症性疾患などの病態が挙げられている。
下部尿路症状は男性特有のものではない?
男性下部尿路症状は、前立腺肥大症(BPH)など下部尿路機能障害を持つ男性患者によく認められる症状の総称です。
BPHの患者さんは昼間の頻尿や夜間頻尿、尿意切迫感、残尿感、尿勢低下などの排尿機能に関わる様々な症状を訴えることが多く、これらの症状をその頻度で判定する国際前立腺症状スコア(IPSS)がBPHの自覚症状の評価法に用いられてきました。
ところが、女性には前立腺がないにもかかわらず同年代の男性と女性ではIPSSの合計点に差がないという報告がなされ、2002年の国際禁制学会(ICS)で下部尿路機能に関連する症状の用語基準が大きく改定されました。
この新しい用語基準を用いて行った大規模疫学調査EPIC Studyでも、自覚症状は、男性だけでなく女性にも同程度に認められ、しかも加齢に伴って増加するという結果が得られました。
このように、今までBPHによるものと考えられてきた症状が女性にも同程度にみられ、前立腺に特異的なものではないことから、総称して下部尿路症状(LUTS)と呼ぶようになり、特に男性に関連する症状の場合は「Male LUTS」となりました。
Male LUTSとは?
Male LUTSは、急に我慢できないほどの尿意がある(尿意切迫感)や夜間にトイレに行く回数が増える(夜間頻尿)など尿をためられない症状である蓄尿症状、尿の勢いが悪くなった(尿勢低下)など尿が出にくい症状である排尿症状、排尿後も尿が残っている感じがする(残尿感)や排尿後に下着が濡れる(排尿後尿滴下)を呈する排尿後症状の3つに大別されます。
蓄尿症状は過活動膀胱(OAB)症状ともいわれますが、これらの症状はBPHに特異的なものではなく、女性や、前立腺重量が20g未満といった前立腺の小さい方にもみられます。
BOOとは?
下部尿路閉塞(BOO)はBPH患者の60~70%に認められます。
BOOは腫大した前立腺による物理的圧迫により引き起こされるほか、α1受容体を介して前立腺平滑筋が過剰収縮することによっても起きます。
BOOは排尿症状と蓄尿症状の両方の原因になります。
排尿症状が起こるメカニズムとして、前立腺の腫大により尿の出口が塞がると尿道抵抗が高まり、尿勢の低下や途絶、腹圧排尿などの症状が起こると考えられます。
一方、蓄尿症状の発症メカニズムには様々な要因が関与しています。
まずBOOに伴い、膀胱の伸展や高圧、虚血が起こります。
その結果、膀胱壁の部分除神経が起き、それに伴いアセチルコリン(ACh)に対する過大反応が起きたり、膀胱平滑筋自体が筋原性変化を起こすことにより、OABが発症すると考えられます。
また、膀胱上皮から放出されるAChやアデノシン三リン酸(ATP)などのメディエーターが膀胱のC線維を介して求心路の活動を亢進したり、仙髄・膀胱壁から放出される神経成長因子(NGF)が求心路・遠心路神経を肥大させ、C線維を介した排尿反射経路を再構築し、OABが起こるとも考えられています。
BOOがないのになぜLUTSが現れるのか?
BOOがある場合のメカニズムは明らかにされているわけですが、いわゆるBPH患者の30~40%にはBOOが認められません。
BOOがないのになぜLUTSが現れるのか、考えられる機序としては、「排尿筋過活動は尿道に由来する」という説が提唱されています。
BPHではたとえ閉塞がなくても尿道は伸展刺激を受けていると考えられています。
実際、尿道内に麻酔薬のリドカインを注入し尿道粘膜を麻酔すると膀胱容量が増加することから、伸展された尿道が排尿反射のトリガーになっている可能性が示唆されました。
尿道にも求心性神経であるC線維が分布しており、これらの神経をリドカインで麻痺させると排尿反射が抑制されたことから、蓄尿症状は尿道のC線維を介した経路でも発症すると考えられます。
前立腺が腫大し前立腺の尿道が大きく歪んでいるような状態は、閉塞の有無に関係なく尿道の知覚神経C線維末端に常に機械的な刺激を与えていることになるため、排尿反射が促進され、蓄尿症状が起こりやすくなっていると理解されます。
このような反応は尿道-膀胱促進反射と呼ばれています。
α1遮断薬
α遮断薬はα1A/α1D選択性が高い薬剤が選ばれます。
ウラピジル(エブランチル)のみ女性の排出障害にも適応があります。
前立腺平滑筋にあるα1受容体を遮断することで前立腺を弛緩させ、前立腺の尿道に対する圧迫を軽減します。
また前立腺肥大症に伴う過活動膀胱の改善にも効果があり、排尿困難だけでなく、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感などの畜尿症状の改善にも効果があると言われています。
即効性がありますが、起立性低血圧・めまい・手術時の術中虹彩緊張低下症候群、・精障害・性欲減退などの性機能障害が認められることがあり注意が必要です。
また、女性の排出障害にはウラピジル(エブランチル)に保険適応があります。
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