2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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下痢止めを使っちゃダメ?

下痢を止めてはいけない

近年、下痢は有害物質や下痢原因病原体を体外に排出するための生体防御機能として捉えられており、下痢を止める必要はないとの考えになっている。
腸蠕動を抑制させる薬剤は、腹部膨満、便秘をきたすこともある。

したがって、遷延する多量の下痢によって、重症脱水をきたす場合にのみ投与を検討すべきであろう。
なお、6ヶ月未満は禁忌、2歳未満も原則禁忌である。

下痢止めを使うと死ぬ

O157に対して下痢止めを服用すると、ベロ毒素が排出されないため重症化あるいは死亡します。
病原性大腸菌O157の症状はまず、腹痛、血性下痢便。

ベロ毒素が腎臓の毛細血管内皮細胞を破壊してそこを通過する赤血球を破壊することで溶血がおき、黄疸、貧血がみられる。
並行して急性腎不全となり、尿毒症のため意識障害。
O157の存在が周知されるまで、安易に下痢止めが処方されていたため、下痢止めによる死亡があったようです。

下痢止めは使わないほうが良い?

 大幸薬品( 大阪府吹田市)が20~60代の男女620人にアンケートしたところ、43%の人が月に1回程度以上、下痢になっているが、うち85%は下痢止め薬を「あまり使わない」「使わない」と回答し、服用に消極的だった。
 下痢の頻度が週に1度以上の人も10%。年代別では20代が最多だった。
 薬を「あまり使わない」「使わない」とした人に理由を聞いたところ「薬で無理して止めない方がいいと思う」が最多。同社は「これは誤解。下痢を安易に放置すると苦しい思いをするだけでなく、脱水症になったり体力を消耗したりすることもある。適切な下痢止めの服用と水分補給が大切」としている。

下痢止め薬服用に消極的 医療新世紀 – 47NEWS(よんななニュース)

服薬指導でも、下痢をしている人に
「あまり使いすぎないように」的なことをよく言います。
そんなに長い日数処方されてなければ、むしろ使ったほうがいいのですね。
「下痢してるときだけ使ってください」
と言うこともありますが、そんなに即効性のある薬ではなさそうです。

効果発現時間:1時間、最大効果は16~24時間
作用時間:3日間
Tmax:4~6時間
半減期:約12時間

下痢止めは危険

ロペラミドによって昏睡やイレウス、呼吸抑制などの重篤な副作用が高率に起きていて、死亡例もある。
ビスマスでは高用量の長期投与によってビスマス関連脳症などの中毒が報告されている。
アヘン剤やアトロピンは薬剤自体の副作用があるほかに、細菌性下痢や抗菌薬による大腸炎に用いると重症化させるため、小児の急性下痢症に禁忌となっている。
吸着薬は有効性が証明されていないうえに、消化管内の栄養分や酵素、抗菌薬までも吸着してしまう欠点がある。
整腸薬の効果も認められていない。

ウイルス性腸炎には下痢止めを使う

感染症の医者は下痢止めが大嫌いです。
悪いものはとにかく出せということで、下痢は止めないのが原則です。

一方ビフィズス菌とか乳酸菌を入れて、よい細菌に入れ替えましょうという考えです。

特に熱が高い人の場合は、細菌性腸炎だと細菌が残ってしまうので下痢止めは決して出しません。

ただウイルス性でもノロとかロタは高い熱が出ます。
シャーっという下痢だと比較的安心で、脱水にならないようにOSー1などの経口補液をちゃんと飲んでくれれば全然問題ないのです。
ウイルス性腸炎に下痢止めを出すと、治るのが半日早いといわれます。

3日で治るのが2日半で治っても、あまり変わらないじゃないかと思われますが、飲んでいる人は下痢の回数が少ないのです。
ですから、お尻がヒリヒリして痛いとか、トイレに通うということが少ないのでQOLは良いのです。

熱があるときは、細菌性腸炎との鑑別ができない場合には下痢止めは出さない方が正解です。
ウイルス性の場合は便が出る時だけはシクシクと痛いのですが、それ以外は痛くありません。
細菌性は、触ればいつでも痛いので、痛みが全然違います。
血便があったら、細菌性ですから絶対にだめです。

海外旅行で下痢止めを飲んじゃダメ?

海外旅行ではよく下痢をしますが、安易に下痢止めを使ってはいけない。
日本でも同じことですが。

抗生物質や下痢止めの使用は要注意。これらは往々にして症状を悪化させる。
かつて病原性大腸菌の患者に下痢止めを処方して重態化を招いてしまった様に、激しい下痢症状には下痢止めを控え、排泄を促すべきとされる。下痢止めが治療効果を発揮するのは、脱水症状の防止や下痢による体力消耗を防ぐ目的で使用する場合に限られる。抗生物質はさらに適切な使用が難しく、少なくとも不用意な服用は避けるべきである。

旅行者下痢 – Wikipedia

食中毒が原因と疑われる場合は、下痢止めを使ってはいけません。

効能効果には「食べ過ぎ・飲み過ぎによる下痢,寝冷えによる下痢」とか書いてるし。

次硝酸ビスマスを連用しちゃダメ?

次硝酸ビスマスという下痢止めがある。

処方を見たことはない。
下痢止めといえば、ロペミン。次いでアドソルビン、タンナルビンなど。
次硝酸ビスマスの処方を見たことは無い。

この次硝酸ビスマスの「重要な基本的注意」に以下のように書かれている。

精神神経系障害があらわれるおそれがあるので長期連続投与を避け、やむをえない場合には、原則として1ヵ月に20日程度(1週間に5日以内)の投与にとどめること。

また「重大な副作用」には以下のように書かれている。

ビスマス塩類(次硝酸ビスマス、次没食子酸ビスマス)1日3~20gの連続経口投与(1ヵ月~数年間)により、間代性痙れん、昏迷、錯乱、運動障害等の精神神経系障害(初期症状:不安、不快感、記憶力減退、頭痛、無力感、注意力低下、振せん等)があらわれたとの報告がある。これらの報告によれば、症状は投与中止後数週間~数ヵ月で回復している。

ビスマスで神経系の副作用を生じる可能性があるようだ。
ビスマスって馴染みの無い金属だけど、画像検索するとビスマス鉱石がたくさん出てきて、カッコイイ。

市販薬でもビスマス塩類(次硝酸ビスマス、次没食子酸ビスマス)を含む下痢止めは売っていますが、1日量で1gも無いので、OTCの下痢止めで精神神経系障害を引き起こす可能性は低いだろう。

1か月に20日くらいの使用ならOKとのこと。連用には気をつけましょう。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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