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血圧を上げる生活習慣
公開. 更新. 投稿者: 53 ビュー. カテゴリ:高血圧.この記事は約4分45秒で読めます.
生活習慣が血圧に与える影響

高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるほど、自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞といった重大な合併症につながる病気です。実際、日本人の死因の上位には心疾患や脳血管疾患が並びますが、その背景には高血圧があることが少なくありません。
薬で血圧を下げることももちろん重要ですが、まず基本となるのは生活習慣の改善です。日常生活の中で血圧に大きな影響を与える因子を「食生活」「睡眠と生活リズム」「運動」「嗜好品(飲酒・喫煙)」「ストレス」「環境」という6つの視点から整理してみます。
食生活と血圧
漬物・味噌汁と塩分摂取
日本人の高血圧の背景にある大きな要因が「塩分の摂りすぎ」です。漬物や味噌汁、醤油を使った料理などは日本食に欠かせませんが、その塩分量は想像以上です。
世界保健機関(WHO)が推奨する塩分摂取量は1日5g未満。しかし、日本人の平均摂取量は約10gと、推奨量の2倍に達しています。特に漬物は一皿で数gの塩分を含むこともあり、毎日の積み重ねが血圧上昇につながります。
加工食品・外食の落とし穴
「漬物は食べないから大丈夫」と思っても安心できません。カップ麺、冷凍食品、コンビニ弁当などの加工食品には保存のために多くのナトリウムが含まれています。食品表示を見ると「ナトリウム○mg」や「食塩相当量○g」と書かれているので、ぜひチェックしてみてください。
カリウム不足
血圧に影響するのは塩分(ナトリウム)だけではありません。カリウムは体内のナトリウムを排泄する役割を持ちます。野菜や果物を十分に摂っていない人は、カリウム不足により高血圧が悪化しやすいのです。バナナ、ほうれん草、サツマイモなどは良いカリウム源です。
睡眠と生活リズム
睡眠不足と高血圧
睡眠が短いと、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になります。すると心拍数が上がり、血管が収縮し、血圧は自然に高くなります。
研究でも「1日6時間未満の睡眠が続く人は高血圧のリスクが高い」と報告されています。
昼夜逆転と交代勤務
夜勤やシフト勤務で生活リズムが不規則な人は、ホルモン分泌のリズムも乱れやすくなります。例えば血圧に影響するホルモンであるレニンやコルチゾールも、本来は日中に高まり夜に低下するリズムがありますが、昼夜逆転生活では崩れてしまいます。これが高血圧や糖尿病のリスクを高めるのです。
運動と血圧
運動不足の影響
定期的に運動する人は血圧が安定していることが多いです。有酸素運動(ウォーキングや水泳、サイクリングなど)には血管を柔らかく保つ効果があります。一方、運動不足は血管の柔軟性を失わせ、動脈硬化が進みやすくなります。
長時間の座位
最近注目されているのが「座りすぎ」の問題です。長時間のデスクワークやテレビ視聴は、血流を悪化させ、血圧上昇のリスクを高めることがわかっています。1時間に1度は立ち上がって軽く体を動かすことが推奨されます。
嗜好品と血圧
アルコールと高血圧
「お酒は百薬の長」と言われますが、飲みすぎは血圧を確実に上げます。特に日本人はアルコール代謝酵素の活性に個人差があり、少量でも影響を受けやすい人がいます。
適量は日本酒1合(180ml)、ビール中瓶1本(500ml)、ワインならグラス2杯程度です。これ以上の飲酒は血圧上昇につながると考えられています。
喫煙と高血圧
タバコに含まれるニコチンは交感神経を刺激し、血圧と心拍数を一時的に上げます。習慣的な喫煙は血管の内皮機能を障害し、動脈硬化を促進します。「加熱式タバコだから安全」という誤解もありますが、血管に与える影響は少なくありません。
ストレスと精神的要因
ストレスと交感神経
強いストレスを受けると交感神経が活発になり、血管は収縮し、血圧が上がります。仕事や家庭のストレスが長期間続けば、それが慢性的な高血圧につながります。
心理的特性
性格的に怒りやすい人、不安を抱えやすい人は血圧が上がりやすい傾向があるという研究もあります。リラクゼーション法、マインドフルネス、趣味の時間など、ストレスをうまく解消する工夫が必要です。
環境と血圧
季節と血圧
冬になると血圧が高くなる人は多いです。寒さによって血管が収縮しやすくなるためです。特に冬の入浴時に急激な血圧変動が起きる「ヒートショック」は、高齢者に多い事故の原因です。入浴前に脱衣所を暖めるなど、温度差を減らす工夫が大切です。
騒音と環境ストレス
欧州の研究では、交通騒音や飛行機の騒音の近くに住む人は高血圧リスクが高いと報告されています。常に騒音にさらされると、体がストレスを受け続け、自律神経に影響するためです。
まとめ:生活習慣を整えて血圧を守る
高血圧の予防や改善は、薬に頼る前にできることがたくさんあります。
・塩分を控え、野菜や果物を十分に摂る
・規則正しい睡眠を確保する
・適度に運動し、座りすぎを避ける
・飲酒は適量にとどめ、喫煙はできる限りやめる
・ストレスマネジメントを意識する
・季節や生活環境の影響を理解して工夫する
こうした生活習慣の積み重ねが、将来の健康を大きく左右します。薬剤師として患者さんに説明する際も、「生活習慣の改善」が薬物療法と同じくらい大事であることを伝えていきたいものです。




