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ワーファリンとビタミンK1は併用しても良い?
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目次
ワーファリンとビタミンK製剤

ワーファリンは、長年にわたり使用されてきた代表的な経口抗凝固薬です。心房細動、人工弁置換後、血栓症の予防など、幅広い疾患で使用され、現在でも重要な役割を担っています。
一方で、ワーファリンは薬物相互作用が非常に多い薬としても知られています。その中でも、特に混乱しやすいのが「ビタミンKとの関係」です。
添付文書を見ると、
・ビタミンK2製剤:併用禁忌
・ビタミンK1製剤:併用注意
と記載されています。
この違いを見て、
「K1なら一緒に飲んでも大丈夫なの?」
「そもそもビタミンKは避けるべきでは?」
と疑問に感じる方も多いでしょう。
本記事では、薬理学的な背景から、添付文書の考え方、実務での運用まで含めて、ワーファリンとビタミンK1の併用について詳しく解説します。
ワーファリンの作用機序とビタミンKの関係
ワーファリンの基本作用
ワーファリンは「ビタミンK拮抗薬」に分類されます。
体内では、血液を固めるために以下の凝固因子が作られています。
・第Ⅱ因子
・第Ⅶ因子
・第Ⅸ因子
・第Ⅹ因子
これらの凝固因子を作る際に、ビタミンKが補酵素として必要になります。
ワーファリンは、このビタミンKの再利用を阻害することで、凝固因子の産生を低下させ、血液を固まりにくくします。
つまり
→ ワーファリン = ビタミンKの働きを抑える薬
なのです。
ビタミンKの役割
ビタミンKには主に2種類あります。
| 種類 | 主な由来 | 特徴 |
|---|---|---|
| K1 | 緑黄色野菜 | 食事由来が中心 |
| K2 | 腸内細菌・医薬品 | 薬剤として使用 |
どちらも「血液を固める方向に働く」という点では共通しています。
したがって、
→ビタミンKを摂取すると、ワーファリンの効果は弱くなる
という関係になります。
なぜK2は禁忌で、K1は注意なのか
ビタミンK2製剤が「併用禁忌」な理由
ビタミンK2製剤(メナテトレノンなど)は、主に骨粗鬆症治療に使用されます。
特徴は以下の通りです。
・脂溶性が強い
・体内に蓄積しやすい
・効果が長く続く
・長期服用が前提
このため、ワーファリンと併用すると、
✔ 抗凝固作用が長期間弱まる
✔ INRが安定しない
✔ 血栓リスクが高まる
といった重大な問題が生じやすくなります。
しかも、併用する医学的メリットがほぼありません。
そのため、
→原則使ってはいけない=併用禁忌
とされています。
ビタミンK1製剤が「併用注意」な理由
一方、ビタミンK1(フィトナジオン製剤)は性質が異なります。
主な特徴は:
・効果発現が比較的予測しやすい
・作用時間が調節可能
・用量調整しやすい
・解毒・是正目的で使われる
さらに、適応には以下が含まれています。
「クマリン系抗凝固薬投与中に起こる低プロトロンビン血症」
つまり、
→ワーファリンの副作用是正に使うことが前提
なのです。
そのため、機械的に「禁忌」としてしまうと、医療現場で使用できなくなってしまいます。
結果として、
→管理前提で使用可=併用注意
という位置づけになっています。
「併用注意」と「併用禁忌」の違い
薬剤師にとって重要なのが、この分類の意味です。
併用禁忌とは
・原則として使用不可
・危険性が高い
・代替手段あり
・管理不能
→ 基本的に避ける組み合わせ
併用注意とは
・条件付きで使用可能
・モニタリング必須
・医学的必要性あり
→ 管理下で使用できる組み合わせ
K1+ワーファリンは、後者に該当します。
実際の臨床現場での使われ方
① 出血・過量時の是正
もっとも多い使用場面はこれです。
・INR上昇
・出血傾向
・過量投与
→ K1投与で補正
この場合は、明確な目的を持った併用です。
② 一時的な調整目的
・食事変動でINRが乱れた
・肝機能低下
・抗菌薬併用
などにより、凝固能が低下した場合に、補助的に使われることもあります。
③ 慢性的併用は原則しない
重要なのは、
❌ K1を長期連用するケースはほぼない
という点です。
慢性併用すると、ワーファリン治療そのものが成立しなくなります。
食事由来のビタミンK1はどうなのか
患者さんからよくある質問が、
「野菜は食べていいのですか?」
というものです。
結論:
→ 食事のK1は制限不要。ただし“安定”が重要。
ポイントは「量を一定にすること」
❌ 今日だけ大量摂取
❌ 数日まったく摂らない
⭕ 毎日だいたい同じ量
これがINR安定の鍵です。
サプリメントは要注意
市販のビタミンKサプリには、
・高用量
・成分不明確
・吸収率が高い
といった問題があります。
そのため、
→ワーファリン服用中は原則避ける
のが安全です。
保険制度・制度設計上の背景
K1が禁忌にならない背景には、制度的理由もあります。
・適応にワーファリン関連が含まれる
・解毒薬として必須
・禁忌にすると算定困難
つまり、
→医療制度上も「併用前提」で設計されている薬
なのです。
薬剤師としての実務判断
現場での判断基準は次の通りです。
K1+ワーファリン
✔ 医師の意図あり
✔ INR管理あり
✔ 短期使用
→ 許容
K2+ワーファリン
❌ 原則疑義照会
❌ 変更依頼対象
→ 回避
この運用はほぼ共通しています。
よくある誤解
誤解①「K1は安全」
→ ✕ 管理前提で安全
誤解②「野菜は禁止」
→ ✕ 制限不要
誤解③「併用注意=問題なし」
→ ✕ モニタリング必須
まとめ:ワーファリンとK1は併用していいのか?
結論を整理します。
・ 機序的には拮抗する
・ 原則は避けるべき
・ 医学的必要性がある場合のみ使用
・ 医師管理下で短期使用
・ INRモニタリング必須
つまり、
→ 「自己判断ではNG、医療管理下ならOK」
が正しい答えです。
おわりに
ワーファリン治療は、単なる「薬を飲む治療」ではなく、
・食事
・併用薬
・生活習慣
・検査値管理
すべてを含めた“総合管理治療”です。
ビタミンK1は、その中で「調整ツール」として重要な役割を持っています。
正しく理解し、適切に使うことで、安全で安定した抗凝固療法が可能になります。




