2026年2月24日更新.2,760記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ワーファリンとビタミンK1は併用しても良い?

ワーファリンとビタミンK製剤

ワーファリンは、長年にわたり使用されてきた代表的な経口抗凝固薬です。心房細動、人工弁置換後、血栓症の予防など、幅広い疾患で使用され、現在でも重要な役割を担っています。

一方で、ワーファリンは薬物相互作用が非常に多い薬としても知られています。その中でも、特に混乱しやすいのが「ビタミンKとの関係」です。

添付文書を見ると、
・ビタミンK2製剤:併用禁忌
・ビタミンK1製剤:併用注意
と記載されています。

この違いを見て、

「K1なら一緒に飲んでも大丈夫なの?」
「そもそもビタミンKは避けるべきでは?」

と疑問に感じる方も多いでしょう。

本記事では、薬理学的な背景から、添付文書の考え方、実務での運用まで含めて、ワーファリンとビタミンK1の併用について詳しく解説します。

ワーファリンの作用機序とビタミンKの関係

ワーファリンの基本作用
ワーファリンは「ビタミンK拮抗薬」に分類されます。

体内では、血液を固めるために以下の凝固因子が作られています。

・第Ⅱ因子
・第Ⅶ因子
・第Ⅸ因子
・第Ⅹ因子

これらの凝固因子を作る際に、ビタミンKが補酵素として必要になります。

ワーファリンは、このビタミンKの再利用を阻害することで、凝固因子の産生を低下させ、血液を固まりにくくします。

つまり
→ ワーファリン = ビタミンKの働きを抑える薬
なのです。

ビタミンKの役割

ビタミンKには主に2種類あります。

種類主な由来特徴
K1緑黄色野菜食事由来が中心
K2腸内細菌・医薬品薬剤として使用

どちらも「血液を固める方向に働く」という点では共通しています。

したがって、
→ビタミンKを摂取すると、ワーファリンの効果は弱くなる
という関係になります。

なぜK2は禁忌で、K1は注意なのか

ビタミンK2製剤が「併用禁忌」な理由

ビタミンK2製剤(メナテトレノンなど)は、主に骨粗鬆症治療に使用されます。

特徴は以下の通りです。
・脂溶性が強い
・体内に蓄積しやすい
・効果が長く続く
・長期服用が前提

このため、ワーファリンと併用すると、

✔ 抗凝固作用が長期間弱まる
✔ INRが安定しない
✔ 血栓リスクが高まる

といった重大な問題が生じやすくなります。

しかも、併用する医学的メリットがほぼありません。

そのため、
→原則使ってはいけない=併用禁忌
とされています。

ビタミンK1製剤が「併用注意」な理由

一方、ビタミンK1(フィトナジオン製剤)は性質が異なります。

主な特徴は:
・効果発現が比較的予測しやすい
・作用時間が調節可能
・用量調整しやすい
・解毒・是正目的で使われる

さらに、適応には以下が含まれています。

「クマリン系抗凝固薬投与中に起こる低プロトロンビン血症」

つまり、
→ワーファリンの副作用是正に使うことが前提
なのです。

そのため、機械的に「禁忌」としてしまうと、医療現場で使用できなくなってしまいます。

結果として、
→管理前提で使用可=併用注意
という位置づけになっています。

「併用注意」と「併用禁忌」の違い

薬剤師にとって重要なのが、この分類の意味です。

併用禁忌とは
・原則として使用不可
・危険性が高い
・代替手段あり
・管理不能

→ 基本的に避ける組み合わせ

併用注意とは
・条件付きで使用可能
・モニタリング必須
・医学的必要性あり

→ 管理下で使用できる組み合わせ

K1+ワーファリンは、後者に該当します。

実際の臨床現場での使われ方

① 出血・過量時の是正
もっとも多い使用場面はこれです。

・INR上昇
・出血傾向
・過量投与

→ K1投与で補正

この場合は、明確な目的を持った併用です。

② 一時的な調整目的
・食事変動でINRが乱れた
・肝機能低下
・抗菌薬併用

などにより、凝固能が低下した場合に、補助的に使われることもあります。

③ 慢性的併用は原則しない
重要なのは、
❌ K1を長期連用するケースはほぼない
という点です。

慢性併用すると、ワーファリン治療そのものが成立しなくなります。

食事由来のビタミンK1はどうなのか

患者さんからよくある質問が、
「野菜は食べていいのですか?」
というものです。

結論:
→ 食事のK1は制限不要。ただし“安定”が重要。

ポイントは「量を一定にすること」

❌ 今日だけ大量摂取
❌ 数日まったく摂らない

⭕ 毎日だいたい同じ量

これがINR安定の鍵です。

サプリメントは要注意

市販のビタミンKサプリには、

・高用量
・成分不明確
・吸収率が高い

といった問題があります。

そのため、
→ワーファリン服用中は原則避ける
のが安全です。

保険制度・制度設計上の背景

K1が禁忌にならない背景には、制度的理由もあります。

・適応にワーファリン関連が含まれる
・解毒薬として必須
・禁忌にすると算定困難

つまり、
→医療制度上も「併用前提」で設計されている薬
なのです。

薬剤師としての実務判断

現場での判断基準は次の通りです。

K1+ワーファリン

✔ 医師の意図あり
✔ INR管理あり
✔ 短期使用

→ 許容

K2+ワーファリン

❌ 原則疑義照会
❌ 変更依頼対象

→ 回避

この運用はほぼ共通しています。

よくある誤解

誤解①「K1は安全」

→ ✕ 管理前提で安全

誤解②「野菜は禁止」

→ ✕ 制限不要

誤解③「併用注意=問題なし」

→ ✕ モニタリング必須

まとめ:ワーファリンとK1は併用していいのか?

結論を整理します。

・ 機序的には拮抗する
・ 原則は避けるべき
・ 医学的必要性がある場合のみ使用
・ 医師管理下で短期使用
・ INRモニタリング必須

つまり、
→ 「自己判断ではNG、医療管理下ならOK」
が正しい答えです。

おわりに

ワーファリン治療は、単なる「薬を飲む治療」ではなく、

・食事
・併用薬
・生活習慣
・検査値管理

すべてを含めた“総合管理治療”です。

ビタミンK1は、その中で「調整ツール」として重要な役割を持っています。

正しく理解し、適切に使うことで、安全で安定した抗凝固療法が可能になります。

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