2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

ワルファリン飲んでる人は納豆食べちゃダメ?

抗血栓薬の併用禁忌

分類商品名一般名併用禁忌
DOACトロンビン直接阻害薬プラザキサダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩イトラコナゾール
経口直接Xa阻害薬リクシアナエドキサバントシル酸塩水和物
イグザレルトリバーロキサバンHIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル、ロピナビル・リトナビル、アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル)、コビシスタット含有製剤、アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール、ミコナゾール、ポサコナゾール、ケトコナゾール)、ニルマトレルビル、エンシトレルビル
エリキュースアピキサバン
クマリン系薬ビタミンK拮抗薬ワーファリンワルファリンカリウムビタミンK₂製剤、イグラチモド、ミコナゾール
抗血小板薬ADP受容体遮断薬パナルジンチクロピジン塩酸塩
プラビックスクロピドグレル硫酸塩
エフィエントプラスグレル塩酸塩
コンプラビンクロピドグレル硫酸塩+アスピリン
PDE阻害薬プレタールシロスタゾール
n-3系脂肪酸エパデールイコサペント酸エチル(EPA)ミフェプリストン・ミソプロストール
プロスタグランジン製剤ドルナー/プロサイリンベラプロストナトリウム
ケアロードLA/ベラサスLAベラプロストナトリウム
5-HT2受容体遮断薬アンプラーグサルポグレラート塩酸塩
COX阻害薬バイアスピリンアスピリン疾患併用禁忌(消化性潰瘍)
バファリンアスピリン
タケルダアスピリン+ランソプラゾールアタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩

ワルファリンとビタミンK

 抗血栓薬の中で併用禁忌が多い薬は、CYP3A4で代謝されるリバーロキサバンである。CYP3A4阻害薬であるHIVプロテアーゼ阻害薬、アゾール系抗真菌薬、新型コロナ治療薬(パキロビット、ゾコーバ)とは併用禁忌となっており、マクロライド系抗菌薬とは併用注意になっている。

 しかし、併用禁忌として注意すべき組み合わせの多い抗血栓薬としてはワルファリンのほうが注意が必要である。

 ワルファリンはビタミンK拮抗薬でありビタミンK依存性凝固因子(第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子)の働きを抑え血液凝固を阻害する。そのためビタミンKによってその作用が失われてしまうのでビタミンK製剤とは併用禁忌である。ただし、ワルファリンに併用禁忌として記載されているのは「骨粗鬆症治療用ビタミンK2製剤 メナテトレノン(グラケー)」のみである。同じメナテトレノンでもケイツーカプセル5㎎は併用禁忌ではなく、併用注意である。含有量の違いもあるかも知れないが、ケイツーカプセルの適応症に「クマリン系殺鼠剤中毒時に起こる低プロトロンビン血症」があるので、ワルファリンと併用禁忌にすると都合が悪いという理由もあるだろう。また、ビタミンK2ではなくビタミンK1なら問題ないというわけでもない。ビタミンK1も体内でビタミンK2に代謝されるのでどちらも同様にワルファリンの効果を消してしまう。

ワルファリンと納豆

薬剤師

ワーファリン飲んでたら納豆は絶対食べちゃダメ?

 ワルファリンの併用注意には医薬品のビタミンK製剤だけでなく「ビタミンK含有食品」があり、その代表として「納豆、クロレラ食品、青汁」がある。特に「納豆」は日本人の普通の食生活の中に存在しており、併用されるリスクが最も高い食品である。納豆の成分のナットウキナーゼが、血栓予防に効果があるという報告もあり、積極的に摂取しようとする患者もいる。
これらの食品については、添付文書上「併用注意」という記載ではあるが、患者説明においては、「併用禁忌」として扱い「食べないでください」という説明をしたほうがよい。ブロッコリーやキャベツなどの緑黄色野菜は、様々な料理に使われることもあり、治療効果に影響があるとしても必要な栄養として「併用注意」という扱いでよいだろう。極端な患者さんだと野菜を摂らないほうが良いと受け取ってしまうこともある。しかし「サプリメント」や「納豆」については、摂取することを避けることができる。
 納豆には100g当たり約345μgのビタミンKが含まれている。しかし納豆以外にもビタミンKを豊富に含有する食品は多くある。納豆が特にワーファリンとの飲み合わせで問題視される理由には、納豆に含まれるビタミンKだけではなく、納豆菌が産生するビタミンKの問題がある。納豆を食べたときだけではなく、その後も3~4日は腸内で納豆菌がビタミンKを産生し続ける。ワルファリン服用中に納豆を1回(100g、市販の1包)だけ摂取しても、トロンボテスト値は3日間以上も高値を示すことが報告されている。
 納豆菌のような菌は熱に弱いんじゃないかと思って、例えば「納豆汁」のように調理すれば問題ないと思う人もいる。しかし納豆菌は熱に強く、煮ても、焼いてもビタミンKの量はあまり減らない。納豆菌は芽胞を形成するグラム陽性好気性桿菌で,芽胞は加熱・乾燥・胃酸・胆汁酸に強く,死滅しにくい。芽胞を殺すには120℃,15分以上の高圧蒸気滅菌が必要である。またビタミンKとK(カリウム)を混同して、「茹でた野菜ならたくさん食べても問題ない」と誤解している話も聞く。

ワルファリンとミコナゾール

 ワルファリンの併用禁忌で特に注意すべきものとして、ビタミンK以外にミコナゾールがある。
特に口腔カンジダに使われる「フロリードゲル」はその形状からも塗り薬という認識を持ちやすく、内服薬との相互作用に対する注意が薄い。
 外用薬のフロリードDクリームはワルファリンと併用注意になっているが、添付文書には「皮膚からの吸収はほとんど認められていない」と記載されており、ミコナゾールは皮膚からの吸収がほとんど認められていないので、併用は問題ないと思われる。市販の薬用シャンプーで「コラージュフルフル」というミコナゾールを含有した商品があるが、これについても使用に問題はないだろう。
 フロリード膣坐剤についても添付文書上「腟からの吸収はほとんど認められていない」と併用注意に記載されている。しかし、市販のカンジダ用膣錠・膣坐剤はワルファリンを使用している患者は「使用してはいけない」となっているため、市販薬の販売時には注意する必要がある。

血栓症と止血剤

 血栓予防の目的で抗血栓薬が処方されている患者に止血剤が処方されると、併用に問題は無いのか疑問に思う。
特に抗プラスミン薬であるトラネキサム酸は、その抗炎症作用から風邪症候群にもよく処方される薬であるため、併用の頻度は高い。
トランサミンの添付文書には、「血栓を安定化するおそれがある。」との記載があります。トラネキサム酸の止血作用は、血を固めるのではなく、固まっている血を溶かさないようにする力です。新しく血栓を作る働きはありませんが、出来てしまった血栓が溶けにくくなってしまうので、血栓のある患者さんには慎重投与です。
 凝固系に働く抗血栓薬と、線溶系に働くトラネキサム酸を併用すること自体は、直接作用を弱め合うわけではないので問題ありません。
また、血管強化薬であるアドナは毛細血管に作用し血管透過性亢進を抑制、血管抵抗性を増強することにより出血時間を短縮し止血作用を示し、凝固系・線溶系に影響を与えないため、併用に問題はありません。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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