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ワルファリン飲んでる人は納豆食べちゃダメ?
公開. 更新. 投稿者:脳梗塞/血栓.この記事は約2分10秒で読めます.
4,972 ビュー. カテゴリ:ワルファリンと納豆

ワルファリンの併用注意には医薬品のビタミンK製剤だけでなく「ビタミンK含有食品」があり、その代表として「納豆、クロレラ食品、青汁」がある。特に「納豆」は日本人の普通の食生活の中に存在しており、併用されるリスクが最も高い食品である。納豆の成分のナットウキナーゼが、血栓予防に効果があるという報告もあり、積極的に摂取しようとする患者もいる。
これらの食品については、添付文書上「併用注意」という記載ではあるが、患者説明においては、「併用禁忌」として扱い「食べないでください」という説明をしたほうがよい。ブロッコリーやキャベツなどの緑黄色野菜は、様々な料理に使われることもあり、治療効果に影響があるとしても必要な栄養として「併用注意」という扱いでよいだろう。極端な患者さんだと野菜を摂らないほうが良いと受け取ってしまうこともある。しかし「サプリメント」や「納豆」については、摂取することを避けることができる。
納豆には100g当たり約345μgのビタミンKが含まれている。しかし納豆以外にもビタミンKを豊富に含有する食品は多くある。納豆が特にワーファリンとの飲み合わせで問題視される理由には、納豆に含まれるビタミンKだけではなく、納豆菌が産生するビタミンKの問題がある。納豆を食べたときだけではなく、その後も3~4日は腸内で納豆菌がビタミンKを産生し続ける。ワルファリン服用中に納豆を1回(100g、市販の1包)だけ摂取しても、トロンボテスト値は3日間以上も高値を示すことが報告されている。
納豆菌のような菌は熱に弱いんじゃないかと思って、例えば「納豆汁」のように調理すれば問題ないと思う人もいる。しかし納豆菌は熱に強く、煮ても、焼いてもビタミンKの量はあまり減らない。納豆菌は芽胞を形成するグラム陽性好気性桿菌で,芽胞は加熱・乾燥・胃酸・胆汁酸に強く,死滅しにくい。芽胞を殺すには120℃,15分以上の高圧蒸気滅菌が必要である。またビタミンKとK(カリウム)を混同して、「茹でた野菜ならたくさん食べても問題ない」と誤解している話も聞く。
ワルファリンとビタミンK
ワルファリンはビタミンK拮抗薬でありビタミンK依存性凝固因子(第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子)の働きを抑え血液凝固を阻害する。そのためビタミンKによってその作用が失われてしまうのでビタミンK製剤とは併用禁忌である。ただし、ワルファリンに併用禁忌として記載されているのは「骨粗鬆症治療用ビタミンK2製剤 メナテトレノン(グラケー)」のみである。同じメナテトレノンでもケイツーカプセル5㎎は併用禁忌ではなく、併用注意である。含有量の違いもあるかも知れないが、ケイツーカプセルの適応症に「クマリン系殺鼠剤中毒時に起こる低プロトロンビン血症」があるので、ワルファリンと併用禁忌にすると都合が悪いという理由もある。また、ビタミンK2ではなくビタミンK1なら問題ないというわけでもない。ビタミンK1も体内でビタミンK2に代謝されるのでどちらも同様にワルファリンの効果を消してしまう。
