記事
先発品を選ぶと自己負担が高くなる?
公開. 更新. 投稿者:製剤/ジェネリック.この記事は約7分57秒で読めます.
6,638 ビュー. カテゴリ:選定療養
2024年10月から薬の値段が高くなる?
先発品を選ぶと自己負担が高くなる。。。そりゃそうだジェネリックは安いし、先発品は高いわけだから。
ということではなく、さらに高くなる。
2024年10月から施行されるのが、医療上の必要性がないにもかかわらず、患者が「後発医薬品でなく先発品(長期収載品)を使いたい」と希望した場合に、両者の差額の4分の1を患者自身が負担する選定療養という制度である。
なかなか患者に説明して理解してもらうのは難しい仕組みである。
選定療養とは、患者が自分自身で選ぶことのできる治療ということである。けれど、高いものを選べばその分自己負担して頂くという仕組み。
よく聞くのは差額ベッド代とか、歯の詰め物の素材で金歯とかセラミックとか選ぶのも選定療養。
そこに先発品の選択というのが加わる。
薬剤師会の副会長さんも言っています。「今回の選定療養は仕組みが複雑であること、対象となるケースとならないケースがあること、また後発品との価格差や投与日数等により負担金が変わること、安定供給の影響などから現場の混乱、患者への説明は前回と比べ物にならないくらいだと考えている」と。
対象品目などについては以下のページを参照。
後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
この制度に伴い、処方箋の様式も変わる。
「個々の処方薬について、医療上の必要性があるため、後発医薬品(ジェネリック医薬品)への変更に差し支えがあると判断した場合には、「変更不可」欄に「レ」又は「×」を記載し、「保険医署名」欄に署名又は記名・押印すること。また、患者の希望を踏まえ、先発医薬品を処方した場合には、「患者希望」欄に「レ」又は「×」を記載すること。」
処方箋の患者希望欄にチェックがあれば、差額をいただくという判断でよいだろう。
実際に多く見られそうなのは、処方箋には何のチェックもなく、先発品を希望するという患者。そして「医療上の必要性」を主張する患者。
そもそも先発希望の患者というのはクセの強い患者が多い。
「ジェネリックを使うとあまり効かないような気がする」~「ジェネリックを使って調子が悪くなった」というグラデーションの中で、差額を負担したくないので、「医療上の必要性」を訴えてくる。そうなると、薬局で差額を頂くという判断はなかなかできない。
医療上の必要性
医療上の必要性については疑義解釈に詳しく書かれている。
「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」
問1 医療上の必要があると認められるのは、どのような場合が想定されるのか。
(答)保険医療機関の医師又は歯科医師(以下、医師等)において、次のように判断する場合が想定される。
① 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合であって、当該患者の疾病に対する治療において長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師等が判断する場合。
② 当該患者が後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師等が判断する場合であって、安全性の観点等から長期収載品の処方等をする医療上の必要があると判断する場合。
③ 学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師等が長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合
④ 後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、長期収載品を処方等をする医療上の必要があると判断する場合。ただし、単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない。
また、保険薬局の薬剤師においては、
・ ①、②及び③に関して、医療上の必要性について懸念することがあれば、医師等に疑義照会することが考えられ、
・ また、④に関しては、医師等への疑義照会は要さず、薬剤師が判断することも考えられる。なお、この場合においても、調剤した薬剤の銘柄等について、当該調剤に係る処方箋を発行した保険医療機関に情報提供すること。
想定される処方箋として多いのは、「変更不可」にも「患者希望」にもチェックの無い処方箋で、薬局で「先発希望」を訴える患者であろう。
基本的には差額を頂く形で対応してよいと思われる。厚労省も望むことだろう。
「ジェネリックを飲んで効かなかった」「ジェネリックを飲んで調子が悪くなった」と言われたら、疑義照会してその旨を医師に伝えなければならない。というのが求められている手順。しかし、疑義照会をしてGE変更不可にチェックマークを入れてもらうということはなるべくしたくない。自由度が失われるから。
「医療上の必要性」を強く訴える患者については、「医師にご相談ください」としか言うしかないかな。
負担金の無い患者
問 12 医療保険に加入している患者であって、かつ、こども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としているか。
(答)長期収載品の選定療養の制度趣旨は、医療上必要があると認められる場合等は、従来通りの保険給付としつつ、それ以外の場合に患者が長期収載品を希望する場合は、選定療養の対象とすることとしたものであることから、今般、対象外の者は設けておらず、こども医療費助成等のいわゆる地方単独の
公費負担医療が対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。
なお、医療上必要があると認められる場合に該当する場合は、従来通りの保険給付として差し支えない。
つまり、小児や難病などで負担金ゼロの患者についても「患者希望」による先発希望は差額を徴収しなければならない。
ここが一番の難所だろう。
今は特に、ジェネリックの在庫が無い、ということも多いよね。
選定療養の対象とならない長期収載品
先発品であれば全て選定療養の対象となるわけではなく、以下のものは除外される。
・後発医薬品の上市から5年以上経過したもの
・後発医薬品の置換率が50%以上となったもの
発売して間もないようなジェネリックは対象外である。
ジェネリックが販売されていればほとんど置換率は50%いくと思うが、ジェネリックが販売されていない先発品はもちろん対象外である。
リストは厚労省のページに載っている。
特定薬剤管理指導加算3
この先発品の選定療養に関連した点数が追加される。
特定薬剤というと「ハイリスク薬」というイメージだが、先発品も特定薬剤となるわけだ。
特定薬剤管理指導加算1、2については別の機会に説明するとして、特定薬剤管理指導加算3に「イ」と「ロ」の2つがある。
イ 特に安全性に関する説明が必要な場合として当該医薬品の医薬品リスク管理計画に基づき製造販売業者が作成した当該医薬品に係る安全管理等に関する資料を当該患者に対して最初に用いた場合
ロ 調剤前に医薬品の選択に係る情報が特に必要な患者に説明及び指導を行った場合
「イ」についてはいかように書かれている。
・RMPの策定が義務づけられている医薬品について、当該医薬品を新たに処方された場合に限り患者又はその家族等に対し、RMPに基づきRMPに係る情報提供資材を活用し、副作用、併用禁忌等の当該医薬品の特性を踏まえ、適正使用や安全性等に関して十分な指導を行った場合
・処方された薬剤について緊急安全性情報、安全性速報が新たに発出された場合に、安全性に係る情報について提供及び十分な指導を行った場合
RMPに基づいた説明、緊急安全性情報・安全性速報が出されたときの説明をした場合には「イ」。
今まで服薬情報等提供料で評価されていた緊急安全性情報等に関する情報提供が特定薬剤管理指導加算3で評価されることになった。今までは調剤時以外での情報提供だったのが、調剤時での情報提供になるので算定しやすくなる。
「ロ」については以下のように書かれている。
・後発医薬品が存在する先発医薬品であって、一般名処方又は銘柄名処方された医薬品について、選定療養の対象となる先発医薬品を選択しようとする患者に対して説明を行った場合
・医薬品の供給の状況が安定していないため、調剤時に前回調剤された銘柄の必要な数量が確保できず、前回調剤された銘柄から別の銘柄の医薬品に変更して調剤された薬剤の交付が必要となる患者に対して説明を行った場合
先発品の選定療養、出荷調整での銘柄変更については「ロ」。
確かに出荷調整で先発希望の患者に渋々ジェネリックを使ってもらうという説明もあるので、ここは関連付けられるかと。
注意点としては、「患者1人につき当該医薬品に関して最初に処方された1回に限り算定する。」となっているので、以前から先発希望の人が先発品を使っていて、説明してジェネリックに変更したとしても特定薬剤管理指導加算3を算定することはできない。
新しく使い始める人で「先発を希望した人」に対して算定できる。
受付で「ジェネリックでよろしいですか?」と聞いて、「先発品が良いです」と答えた人に対して、説明をすれば特定薬剤管理指導加算3を算定できるのは間違いない。
または、新しい処方箋様式の「変更不可」「患者希望」欄にチェックマークがついている患者に説明をすれば算定できるのは間違いない。
しかし、「金額を教えてほしい」「何が違うの?」といった、情報を教えてもらってから検討したいという患者は、「先発品を希望」している段階ではない。ただし、「先発品を選ぶ可能性がある」患者ではあるので、算定はできるのではないかと自分は考える。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。