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硝子体注射前の抗菌薬点眼は必要?
公開. 更新. 投稿者:緑内障/白内障.この記事は約1分25秒で読めます.
1,335 ビュー. カテゴリ:硝子体注射前の抗菌点眼薬
眼科の患者さんで、「今度注射を打つ」と言われた患者さんに抗菌薬の点眼剤が処方されているのをしばしば見かける。
その注射は、抗VEGF薬で、Vascular Endotherial Growth Factor=VEGF(血管内皮増殖因子)が、網膜内の毛細血管から漏れ出し、新生血管の増殖や黄斑浮腫を引き起こし視力低下を来すため、投与されます。
適応疾患としては、
・加齢黄斑変性症
・糖尿病網膜症に伴う黄斑浮腫
・網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
・強度近視による脈絡膜新生血管
などがあります。
抗VEGF薬には、ルセンティス、アイリーア、ベオビュ、バビースモがあります。(2023年8月現在)
これらの抗VEGF薬には、感染性眼内炎の合併症を防ぐため、添付文書上、注射前の抗菌点眼薬投与が指示されているものもある。
抗VEGF薬 | 抗菌点眼薬に関する添付文書の記載 |
---|---|
アイリーア硝子体内注射用キット | 本剤投与前に、十分な麻酔と広域抗菌点眼剤の投与を行うこと。(広域抗菌点眼剤は本剤投与3日前から投与後3日まで投与すること。) |
バビースモ硝子体内注射液 | 本剤投与前に、適切な麻酔と眼周囲の皮膚、眼瞼及び眼表面を消毒するための広域局所抗菌薬を投与すること。 |
ベオビュ硝子体内注射用キット | 本剤投与前に、適切な麻酔と眼周囲の皮膚、眼瞼及び眼表面を消毒するための広域局所抗菌薬を投与すること。 |
ルセンティス硝子体内注射用キット | 本剤投与前に、十分な麻酔と広域抗菌点眼剤の投与を行うこと。(広域抗菌点眼剤は本剤投与3日前から投与後3日まで投与すること。) |
バビースモとベオビュは「広域局所抗菌薬」で、「広域抗菌点眼剤」ではないので、抗菌点眼薬を使用する必要はない。患者が何の抗VEGF薬を使っているかはわからないことが多いが、投与スケジュールなどから推測することは可能かもしれない。
また抗VEGF薬をいつまで続けるのか、という決まりはないようだが、薬価も10万円くらいする高額な薬でもあるので、長期的に使い続けている患者は見たことは無い。
感染性眼内炎の発生頻度は0.01~0.26%程度とまれだが、発声すると重篤な視力障害を残すことも多いため、予防する必要がある。
しかし、眼の表面に抗菌点眼薬をさしたところで、眼内感染症を防げるのかという疑問もあり、エビデンスも十分でなく、逆に耐性菌を増やすというデメリットもあるため、最近では注射前の抗菌点眼薬は不要という判断をする医師もいるようだ。
今後、硝子体注射前の抗菌点眼薬が不要となれば、抗菌点眼薬の処方で「硝子体注射かな?」という推測ができなくなるという点では、デメリットも感じる。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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