2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

透析患者に使える糖尿病用薬は?

腎不全に適した糖尿病薬

糖尿病患者は徐々に腎機能が落ちていく。
しかし、腎機能が落ちて、重篤な腎機能低下状態、透析が必要な状態になると、今まで使えていた糖尿病治療薬の中には使えない、禁忌とされる薬が出てくる。その点を注意しなければならない。

透析導入の原疾患の第一位は糖尿病性腎症です。
早期腎症期(CKDステージG1、G2に相当)では厳格な血糖コントロールによって糖尿病性腎症の発症・進展を防止できるので、HbA1c値6.9未満を目標にします。

一方、顕性腎症期後期以降(CKDステージG3以降に相当)は、腎機能が低下しているため、薬物治療による低血糖の危険性が高まります。
腎不全期(CKDステージG4,G5に相当)ではインスリン治療が原則となりますが、インスリンの半減期が長くなるため、低血糖に注意しなければなりません。

SU系:腎排池型の薬剤は、低血糖の危険性が高くなります。ステージG3で慎重投与、G4以降は禁忌です。

グリニド系:ナテグリニド(スターシス、ファスティック)はG4以降で禁忌ですが、レパグリニド(シュアポスト)は肝排泄型なので、すべてのステージで使用可能です。

ビグアナイド系:乳酸アシドーシス発症の危険が高くなります。G3以降は禁忌です。

α-グルコシダーゼ阻害薬:体内にほとんど吸収されないので、すべてのステージで使用可能です。だたし、ミグリトール(セイブル)は未変化体のまま吸収されるので、G4以降で慎重投与です。

DPP-4阻害薬:ビルダグリプチン(エクア)、アログリプチン(ネシーナ)は腎機能に応じて減量します。シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)は、G4以降で禁忌です。

GLP-1受容体作動薬:リラグルチド(ビクトーザ)はすべてのステージで使用可能ですが、エキセナチド(バイエッタ、ビデュリオン)は、G4以降で禁忌です。

分類分類商品名一般名剤形・規格
SU剤SU剤(第一世代)デアメリンSグリクロピラミド錠(250㎎)
ジメリンアセトヘキサミド錠(250㎎)
SU剤(第二世代)オイグルコングリベンクラミド錠(1.25㎎。2.5㎎)
グリミクロングリクラジド錠(40㎎)、HA錠(20㎎)
SU剤(第三世代)アマリールグリメピリド錠(0.5㎎、1㎎、2㎎)
速効型インスリン分泌促進薬スターシス/ファスティックナテグリニド錠(30㎎、90㎎)
シュアポストレパグリニド錠(0.25㎎、0.5㎎)
グルファストミチグリニドカルシウム水和物錠(5㎎、10㎎)、OD錠(5㎎、10㎎)
ビグアナイド系グリコランメトホルミン塩酸塩錠(250㎎)
ジベトスブホルミン塩酸塩錠(50㎎)
メトグルコメトホルミン塩酸塩錠(250㎎、500㎎)
ミトコンドリア機能改善薬ツイミーグイメグリミン錠(500㎎)
αグルコシダーゼ阻害薬グルコバイアカルボース錠(50㎎、100㎎)、OD錠(50㎎、100㎎)
ベイスンボグリボース錠(0.2㎎、0.3㎎)、OD錠(0.2㎎、0.3㎎)
セイブルミグリトール錠(25㎎、50㎎、75㎎)、OD錠(25㎎、50㎎、75㎎)
チアゾリジン誘導体アクトスピオグリタゾン塩酸塩錠(15㎎、30㎎)、OD錠(15㎎、30㎎)
SGLT2阻害薬スーグライプラグリフロジンL-プロリン錠(25㎎、50㎎)
フォシーガダパグリフロジンプロピレングリコール水和物錠(5㎎、10㎎)
ルセフィルセオグリフロジン水和物錠(2.5㎎、5㎎)、ODフィルム(2.5㎎)
デベルザトホグリフロジン水和物錠(20㎎)
カナグルカナグリフロジン水和物錠(100㎎)
ジャディアンスエンパグリフロジン錠(10㎎、25㎎)
インクレチン関連薬DPP4阻害薬グラクティブ/ジャヌビアシタグリプチンリン酸塩水和物錠(12.5㎎、25㎎、50㎎、100㎎)
エクアビルダグリプチン錠(50㎎)
ネシーナアログリプチン安息香酸塩錠(6.25㎎、12.5㎎、25㎎)
トラゼンタリナグリプチン錠(5㎎)
テネリアテネリグリプチン臭化水素酸塩水和物錠(20㎎、40㎎)、OD錠(20㎎、40㎎)
スイニーアナグリプチン錠(100㎎)
オングリザサキサグリプチン水和物錠(2.5㎎、5㎎)
ザファテックトレラグリプチンコハク酸塩錠(25㎎、50㎎、100㎎)
GLP-1受容体作動薬リベルサスセマグルチド錠(3㎎、7㎎、14㎎)
マリゼブオマリグリプチン錠(12.5㎎、25㎎)
チアゾリジン誘導体+ビグアナイド系メタクトピオグリタゾン塩酸塩+メトホルミン塩酸塩配合錠LD(ピオグリタゾン15㎎、メトホルミン500㎎)、配合錠HD(ピオグリタゾン30㎎、メトホルミン500㎎)
チアゾリジン誘導体+SU剤ソニアスピオグリタゾン塩酸塩+グリメピリド配合錠LD(ピオグリタゾン15㎎、グリメピリド1㎎)、配合錠HD(ピオグリタゾン30㎎、グリメピリド3㎎)
チアゾリジン誘導体+DPP4阻害薬リオベルピオグリタゾン塩酸塩+アログリプチン安息香酸塩配合錠LD(ピオグリタゾン15㎎、アログリプチン25㎎)、配合錠HD(ピオグリタゾン30㎎、アログリプチン25㎎)
速効型インスリン分泌促進薬+αGIグルベスミチグリニドカルシウム水和物+ボグリボース配合錠(ミチグリニド10㎎、ボグリボース0.2㎎)、配合錠OD
DPP4阻害薬+ビグアナイド系エクメットビルダグリプチン+メトホルミン塩酸塩配合錠LD(ビルダグリプチン50㎎、メトホルミン250㎎)、配合錠HD(ビルダグリプチン50㎎、メトホルミン500㎎)
イニシンクアログリプチン安息香酸塩+メトホルミン塩酸塩配合錠(アログリプチン25㎎、メトホルミン500㎎)
メトアナアナグリプチン安息香酸塩+メトホルミン塩酸塩配合錠LD(アナグリプチン100㎎、カナグリフロジン250㎎)、配合錠HD(アナグリプチン100㎎、カナグリフロジン250㎎)
DPP4阻害薬+SGLT2阻害薬カナリアテネリグリプチン臭化水素酸塩水和物+カナグリフロジン水和物配合錠(テネグリプチン50㎎、イプラグリフロジン50㎎)
スージャヌシタグリプチン+イプラグリフロジン配合錠(シタグリプチン50㎎、イプラグリフロジン50㎎)
トラディアンスエンパグリフロジン+リナグリプチン配合錠AP(エンパグリフロジン10㎎、リナグリプチン5㎎)、配合錠BP(エンパグリフロジン25㎎、リナグリプチン5㎎)

糖尿病性腎症で血糖値が下がる

糖尿病性腎症で腎不全に至ると、一時的に血糖値が下がる現象が見られるケースが少なくない。

インスリンの約40%は腎臓で分解されるため、腎不全ではインスリンの代謝や排泄が低下し、インスリンの血糖降下効果が長く続くようになるからである。
インスリン製剤が一時的に不要になることもある。

一方で、腎不全は代謝性アシドーシスや尿毒症性物質の蓄積など、インスリン抵抗性を増大させて血糖値を上昇させる要因も抱える。
さらに、糖尿病性腎症患者では神経障害も進行しており、消化管運動に異常が生じるため、食後の血糖値が一定しない。

加えて透析を始めると、透析液に血中のブドウ糖が拡散したり、血中のインスリンが透析膜に吸着されるなどの要因から、透析日と非透析日で血糖の日内変動パターンが変わる。
こうした理由から、糖尿病の透析患者では血糖値の変動が予測しづらい。

腎不全とSU剤

グリベンクラミドは添付文書の禁忌項目に「重篤な肝機能障害又は腎機能障害のある患者[低血糖を起こすおそれがある。]」と記載されている。
グリベンクラミドは肝臓で主な4-ハイドロキシグリベンクラミド(3-OH Glib)に代謝され、これらの活性代謝物も血糖降下作用をもつために、腎機能低下時では腎排泄率が低下し蓄積する。蓄積による遅延性の低血糖で死亡する危険性がある。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

コメント


カテゴリ

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書: 薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
ツイッター:
プライバシーポリシー

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

最新の記事


人気の記事

検索