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アルロイドをゾンデから投与?鼻腔ゾンデってどんな器具?
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約5分58秒で読めます.
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アルロイドGをゾンデから投与?鼻腔ゾンデとはどんな器具か

アルロイドG内用液を経鼻的にゾンデで投与する――
こうした表現を添付文書や用法に目にして、
「ゾンデって、何だっけ?」
「経鼻的投与って具体的にどうやるの?」
と疑問に思った薬剤師の方も多いのではないでしょうか。
私も最初、添付文書を読んで「ゾンデ?あー、あのチューブのことだよね」と
なんとなく知った気になっていましたが、
きちんと調べてみると、想像以上に奥が深く、
薬剤師として知っておいたほうがよい知識がたくさんありました。
・ゾンデとはどんな医療器具なのか
・アルロイドGを経鼻的に投与する理由と方法
・栄養剤や薬剤の経管投与との違い
・薬剤師が知っておくべきポイント
を勉強していきます。
そもそも「ゾンデ」とは何か?
「ゾンデ(sonde)」とは、日本語では消息子(しょうそくし)と訳されます。
「消息子」と聞いてもピンと来ない方も多いでしょう。
私も「消えた息子?」と思ったくらいです。
簡単に言えば、人体に挿入する細い管や棒状の医療器具のこと。
診断や治療、栄養投与、薬剤投与など、目的に応じてさまざまな種類があります。
Wikipediaの「ゾンデ(曖昧さ回避)」ページには、
診断用や治療用のさまざまなゾンデが挙げられていますが、
薬剤師が遭遇することが多いのは経管投与用の細い管です。
たとえば、
・経鼻胃管(鼻腔ゾンデ):鼻から挿入して食道・胃に到達させる管
・胃瘻用カテーテル(PEG)
・腸瘻カテーテル
などが、実際の臨床現場で栄養剤や薬剤の投与に使われています。
鼻腔ゾンデとは?経鼻的に投与する仕組み
鼻腔ゾンデとは、鼻から挿入し、胃や腸へ到達する柔らかいチューブのことです。
主に以下の目的で使用されます。
・経口摂取ができない患者への栄養補給
・胃内容物のドレナージ
・薬剤の経管投与
鼻から入れるため、口から飲むことができない方でも、
直接消化管に液体を届けられる点が特徴です。
経鼻胃管は栄養剤を注入するために広く使われますが、
薬剤投与にも応用可能です。
アルロイドG内用液の経鼻的投与
アルロイドGとは?
アルロイドG内用液はアルギン酸ナトリウムを有効成分とする胃潰瘍治療薬です。
作用としては、
・粘膜保護
・胃酸の逆流防止
・胃粘膜の修復促進
などが期待されます。
服用すると胃内で粘稠な保護層を形成し、
潰瘍部位を覆うように作用します。
経鼻的投与の用法
添付文書には、次のような用法が記載されています。
「経口投与が不可能な場合には、ゾンデで経鼻的に投与する。」
つまり、嚥下機能が低下していても、
鼻腔ゾンデを通じて胃内に直接注入できるわけです。
薬剤師としては、
「経鼻的投与が可能である」
「胃内で作用する薬剤」
という点を理解しておくことが大切です。
経鼻的投与の具体的な手順と注意点
実際の経鼻的投与は看護師や医師が行うため、
薬剤師が直接操作することはほとんどありませんが、
投与の流れは知っておくと服薬指導の理解が深まります。
おおまかな手順は以下の通りです。
●薬液の調製
・添付文書の用法に従って所定量を希釈する
・粘度が高すぎないよう注意する
●ゾンデの確認
・チューブの閉塞や屈曲がないか
・挿入位置(胃・腸)を確認
●注入
・ゆっくりとシリンジやポンプで注入
・無理に圧をかけない
●水でフラッシュ
・投与後は少量の水で管を洗い流す
アルロイドGは粘稠性が高いため、閉塞リスクがある点が注意ポイントです。
栄養剤(エレンタールなど)の経管投与との比較
「ゾンデから投与する薬剤」と聞くと、
経腸栄養剤(エレンタール配合内用剤など)を思い浮かべる方も多いでしょう。
エレンタールの用法には次のように記載があります。
通常、エレンタール配合内用剤80gを300mLとなるような割合で常水又は微温湯に溶かし(1kcal/mL)、鼻腔ゾンデ、胃瘻、又は腸瘻から、十二指腸あるいは空腸内に1日24時間持続的に注入する。
このように、経鼻的投与は栄養補給のためにも広く活用されています。
薬剤と栄養剤の大きな違いは、
・投与頻度
・粘度
・投与時間(単回投与か持続注入か)
です。
アルロイドGは単回投与で短時間に投与されるのに対し、
エレンタールは24時間持続的に注入されるケースが多い点が異なります。
ゾンデをGoogleで検索してもイメージしにくい?
「ゾンデ」をインターネットで調べると、
どうしても太めの棒状の器具が先に出てきます。
たとえば、
・胃洗浄用の太いゾンデ
・チューブ状のカテーテル
・導尿用カテーテルと混同される例
など、薬剤投与に適した細い経鼻ゾンデの画像は意外に少ないです。
現場で使われるゾンデは柔らかいチューブで、
口径や長さは目的に応じて選択されます。
「ゾンデ=棒」ではなく、
「ゾンデ=消化管に薬や栄養を届ける道具」と理解するほうが現実に即しています。
薬剤師はゾンデを扱うのか?
調剤薬局では、薬剤師がゾンデを直接操作することはありません。
しかし、
・入院患者がゾンデから栄養をとっている
・薬剤師として薬の投与経路を確認する
・在宅医療で経管栄養に関わる
といった場面は意外に多いです。
特に在宅医療や介護施設では、
「どの経路で投与するか?」
「ゾンデ投与可否は?」
といった確認が必要です。
知っているだけで服薬指導の質が上がる知識なので、
最低限の理解は持っておくのが望ましいでしょう。
アルロイドGをゾンデで投与する際のQ&A
Q. アルロイドGをゾンデで投与するとき、希釈は必要ですか?
A. 添付文書では、経鼻的投与時は水で希釈することが推奨されています。
粘度が高いままだと閉塞しやすいので、適切に希釈する必要があります。
Q. 経鼻的投与と胃瘻からの投与は同じですか?
A. 経鼻的投与は鼻から胃へチューブを通す方法、
胃瘻は腹部から胃へ直接管を通す方法です。
どちらも経管投与で、アルロイドGを投与できますが、
挿入経路が異なります。
Q. 在宅で経鼻的投与するケースはありますか?
A. 経鼻胃管は短期的(2週間程度)の使用が多く、
在宅では胃瘻を選択するケースが増えています。
しかし、急性期後の経過観察中など、
短期間は経鼻的に栄養や薬剤を投与する場合もあります。
まとめ:ゾンデを知ることは薬剤師の知識の幅を広げる
「アルロイドGをゾンデで投与する」という用法は、
知っているようで知らない内容が多い分野です。
・ゾンデは単なる棒ではなく、人体に薬や栄養を届ける細管
・経鼻的投与は嚥下困難患者への重要な投与経路
・投与方法、希釈、閉塞リスクに注意が必要
調剤薬局で直接操作する機会は少なくても、
知識として理解しておくことで、
患者さんや多職種とのコミュニケーションがスムーズになります。