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主な支持療法一覧
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約4分54秒で読めます.
6,500 ビュー. カテゴリ:支持療法
支持療法とは、がんそのものに伴う症状や治療による副作用に対しての予防策であり、症状を軽減させるための治療のことです。
病院で点滴などの抗癌剤治療を行っている場合、支持療法薬だけが薬局で処方されているケースもあり、支持療法であるということを理解せずに投薬すると、チンプンカンプンな説明になることもあるので支持療法として使われる薬剤に関する理解は必須である。
副作用 | 支持療法 |
---|---|
悪心・嘔吐 | ・アプレピタント(イメンド) ・5-HT3拮抗薬 ・デキサメタゾン ・メトクロプラミド(プリンペラン)、ドンペリドン(ナウゼリン) ・プロメタジン ・抗向精神病薬 ・抗不安薬 |
口内炎(口腔粘膜炎) | ・アズレンスルホン酸 ・合成副腎皮質ホルモン薬 ・アロプリノール(5-FUのフリーラジカル抑制) ・半夏瀉心湯(うがい) ・疼痛が強い場合はリドカイン塩酸塩入りのうがい薬を調整する |
便秘 | ・酸化マグネシウム ・センノシド、ピコスルファートなど(個々の薬剤の作用を使い分ける) |
下痢 | ・症状の発現状況を確認して使用する(ロペラミド塩酸塩、ブチルスコポラミン、タンニン酸アルブミン、整腸薬) |
脱毛 | 支持療法はないが、発現時期(開始後約3週間)、投与終了後は必ず生えてくることを家族にも説明しておく |
末梢神経障害 | ・抗がん薬の休薬・減量 ・漢方薬 ・神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、デュロキセチン) ・ビタミン剤 |
味覚障害 | ・亜鉛の補給 ・乾燥に対して人工唾液や口腔ケア |
がんの支持療法
がんの治療で、「支持療法」という言葉をよく聞く。
主に副作用予防というイメージなのだが、ただ副作用予防ということであれば、NSAIDs投与中の胃薬の併用も支持療法となるが、そうは言わない。
「がんに伴う症状、抗がん剤などの治療による副作用や後遺症などについて、症状の軽減や予防を目指す治療」とのこと。
抗がん剤による吐き気、便秘などに対する制吐剤、下剤だけでなく、がんによる症状の軽減も支持療法ということなので、痛みに使う麻薬、鎮痛剤も支持療法となる。
支持療法とは、重篤な疾患のある患者のQOLを改善するために行われるケアのことをいいます。
近年開発された抗がん剤は、従来の抗がん剤より副作用が少なく、従来からある抗がん剤についても副作用の発生が少ない治療法が開発されています。
しかし、副作用の程度によっては、患者の身体的・精神的な苦痛が大きく、副作用を予防、軽減するための支持療法が必要です。
この支持療法の進歩によって重篤な副作用が外来治療でもコントロールできるようになりました。
例えば、G-CSF製剤による好中球減少の抑制、5-HT3受容体拮抗薬による急性悪心・嘔吐や、アプレピタントのようなニューロキニンI(NKI)受容体拮抗薬によって特に遅発性悪心・嘔吐のコントロールなどが可能となります。
悪心・嘔吐は、発生時期によって急性、遅発性、予期性に分類されます。
高度( >90%)の催吐リスクを有する薬剤として、シスプラチン、シクロホスフアミド( >1500mg/m2) 、ダカルバジンなどがあげられます。
処方せんに抗がん剤、5-HT3受容体拮抗薬、あるいはアプレピタントが処方されていなくても、デキサメタソンが1日4mg 、または8mg処方されていたら、化学療法に対する支持療法を考慮した忠者への聞き取りが必要です。
悪心・嘔吐
メカニズム:嘔吐中枢の刺激による(急性嘔吐はセロトニンが関与、遅発性嘔吐はサブスタンスPの関与、予測性嘔吐は精神的要素が大きい)
患者指導:開始前に予測される副作用の発現時期を説明する。食欲不振時期は無理して食べない。
デカドロンは吐き気止め?
抗がん剤による吐き気に、ステロイドが使われることがある。
経口ステロイドのうち、デカドロンには、「抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)」という適応がある。
通常のデカドロンの用法は、
「1日0.5~8mg(本剤1~16錠)を1~4回に分割経口投与する。」
となっているが、
嘔吐に使われるデカドロンの用法は、
「1日4~20mg(本剤8~40錠)を1~2回に分割経口投与する。ただし、1日最大20mgまでとする。」
となっている。
制吐作用を期待した場合、多めの量になっている。
ステロイドの副作用で消化器系の症状、悪心・嘔吐などが出る場合もありますが。
ステロイドによる制吐作用の機序は不明。
ステロイドは免疫抑制剤だから、異物を除去しようとする免疫反応を抑える、嘔吐を抑制するかな、と思ったり。
口内炎
メカニズム:口腔粘膜の細胞は分裂が早く抗がん薬の影響を受けやすい(7~14日サイクル)。放射線同時併用の頭頚部がんレジメンでは頻度が高くなる。
患者指導:口腔内の観察。ブラッシングなどのセルフケア。
便秘
メカニズム:抗がん薬(ビンクリスチン等)による蠕動運動の低下、制吐薬としての5-HT3拮抗薬の使用、経口摂取の低下。
患者指導:排便習慣を整える。抗がん薬の排泄を遅らせることもあるため、排便回数など記載しておく(イリノテカンの代謝物SN-38など)
下痢
メカニズム:コリン作動性(イリノテカン)、細胞分裂が盛んな(7~14日)腸管粘膜に抗がん薬が作用、発熱を伴う場合は感染合併に注意する。
患者指導:繊維の多い食べ物は避ける。処方されている止痢薬の使い方を確認しておく。病院へ連絡する目安(5回/日以上など)を確認する。
脱毛
メカニズム:毛髪の細胞は骨髄細胞と同様細胞分裂が早く影響を受けやすい(抗腫瘍性抗生物質、ビンカアルカロイドは発現率が高い)
患者指導:毛髪以外に鼻、まつげ、陰毛などにも影響あり。ボディイメージの変化を事前に説明。頭皮の保護に努める。
末梢神経障害
メカニズム:神経細胞の軸索変性が主な原因といわれているが詳細は不明。代表的な薬剤としてオキサリプラチン、タキサン系、ビンカアルカロイド系、エリブリン。
患者指導:投与されている抗がん薬および患者の生活に沿った具体的なアドバイスが大切(患部を温める、重い荷物を持たないなど)
味覚障害
メカニズム:味蕾細胞の分裂は早く、抗がん薬の影響を受けやすい。味を感知するには水分が必要であり、乾燥による唾液不足や味蕾の再生に必要な亜鉛不足が原因と考えられる。
患者指導:患者が感じている味覚障害を聞き取り、食事の対応や口腔内環境を整えていく。
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