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ミニリンメルトは過活動膀胱には使えない?
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱.この記事は約3分37秒で読めます.
3,674 ビュー. カテゴリ:ミニリンメルトと過活動膀胱

「夜間トイレが近くて眠れない」「夜中に何度も目が覚める」――そんな相談を受けたとき、「ミニリンメルトが使えるのでは?」と考えたことはありませんか?
ですが、夜間頻尿=ミニリンメルトが使えるとは限りません。
特に、過活動膀胱(OAB)や前立腺肥大症(BPH)による夜間頻尿には適応外である点に注意が必要です。
ミニリンメルト(一般名:デスモプレシン)は、抗利尿ホルモン類似薬であり、腎集合管における水の再吸収を促進し、尿量を減らす薬です。
ミニリンメルトには2系統の用量があります:
25µg/50µgは、男性の「夜間多尿による夜間頻尿」に使われます。
60µg/120µg/240µgは、小児の夜尿症、中枢性尿崩症に使われます。小児用に使われる製剤のほうが用量が多い点に注意が必要です。
ミニリンメルトOD錠 | 効能効果 |
---|---|
25μg | 男性における夜間多尿による夜間頻尿 |
50μg | 中枢性尿崩症 |
60μg | |
120μg | 中枢性尿崩症、尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症 |
240μg |
25µg/50µg製剤は、高齢男性の夜間多尿に特化した新しい適応として承認されました。
高齢者で懸念される低ナトリウム血症リスクを考慮し、従来より低用量での使用が可能となっています。
ここで大事なのは、「夜間頻尿=ミニリンメルト」という短絡的な理解を避けることです。
添付文書では、以下のように明確に記されています:
夜間頻尿の原因には、夜間多尿の他に、前立腺肥大症、過活動膀胱等の蓄尿障害がある。
それらの疾患の治療を行った上でも、夜間多尿が残存する場合に限り、本剤の投与を考慮すること。
つまり、ミニリンメルトが効くのは「夜間多尿」が原因の夜間頻尿に限られます。
「夜間多尿」とは何か?
夜間多尿は、24時間尿量のうち夜間の尿量が33%以上(高齢者)を占める状態と定義されます。
排尿記録(日誌)によって確認することが推奨されており、ただ回数が多い=夜間多尿ではありません。
むしろ夜間頻尿の多くは、以下のような原因で起こっているケースが多いです:
・日中の利尿剤の影響(服薬タイミング)
・前立腺肥大症による残尿感
・過活動膀胱による蓄尿障害
・睡眠障害による覚醒排尿
これらに対しては、ミニリンメルトではなく、原因疾患に対する治療が第一選択です。
なぜ過活動膀胱には使えないのか?
過活動膀胱は、膀胱が尿を溜める前に勝手に収縮してしまう疾患で、膀胱の蓄尿機能に問題があります。
デスモプレシンはあくまで「尿量を減らす」薬であり、膀胱の収縮異常を改善する作用はありません。
過活動膀胱に対しては以下の治療が一般的です。
・抗コリン薬(膀胱の異常収縮を抑制)
・β₃刺激薬(膀胱を広げ、蓄尿能力を高める)
このように、メカニズムが異なるため、デスモプレシンは適応外になります。
ミニリンメルトの使用条件
ミニリンメルトの添付文書では、以下の使用条件が明記されています。
・夜間多尿指数 33%以上
・夜間排尿 2回以上
・原因疾患(BPHやOABなど)の治療済み
・水分摂取制限と生活指導の実施済み
・電解質(Na)管理が可能な体制
また、利尿薬使用中の患者は禁忌であり、適応患者はかなり限定的です。
そのため、介護施設や認知症高齢者など、夜間排尿が生活・介護負担に直結する場合の“選択肢のひとつ”として慎重に使われる薬といえるでしょう。
夜間頻尿があるからといって、ミニリンメルトがすぐに適応になるわけではありません。
特に、過活動膀胱や前立腺肥大症が原因である場合には使用できません。
まずは排尿記録や原因の見極めが先。
薬剤師としては、「夜間多尿とは何か?」「なぜこの薬が選ばれたのか?」を理解し、適応外での誤用が起きないようサポートすることが求められます。