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前立腺癌は治療しなくてもいい?
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約5分16秒で読めます.
1,608 ビュー. カテゴリ:前立腺がんの待機療法
最近、早期の前立腺癌に対し、手術をはじめとする治療を行わず、定期的な検査を行って経過を観察する方針を勧めるケースが増えています。
こうした方針は、active survellance(待機療法)と呼ばれています。
前立腺癌は、70歳以上の男性の2〜3割に発生する疾患ですが、多くは無症状で、非常に早期の場合、他の臓器に転移するまでに10〜20年と進行が遅いのが特徴です。
早期でも積極的な治療を行えば侵襲を伴いますし、経済的な負担もあります。
そこで余命なども考慮して、経過観察しようというのが待機療法の考え方です。
もともと待機療法は欧州を中心に普及していた考え方で、早期から積極的な治療を行うスタンスだった米国とは、相反するものでした。
しかし、エビデンスが蓄積され、2011年に発表された米国総合癌センターネットワークによる「前立腺癌の治療ガイドライン」では、病期、前立腺特異抗原(PSA)検査の結果、腫瘍の悪性度(グリソンスコア)、針生検の結果、余命を基に低リスクと判断されれば、待機療法が推奨されることになりました。
こうした流れもあって、日本でも待機療法が選択されるようになっているのです。
前立腺癌治療の必要性
前立腺癌の中には治療しなくてもいい前立腺癌があるらしいです。
前立腺癌以外の原因で死亡した人の前立腺を調べると5人に1人以上の割合で前立腺癌が見つかります。
つまり前立腺癌が死因ではない。
癌イコール死、と連想しますが、前立腺癌には当てはまらないのかも知れません。
高齢で自覚症状もなく、PSAも正常なら癌であっても治療する必要は無いのかもしれません。
早期前立腺がん、手術しなくても死亡率に差なし
検診で見つかった早期の前立腺がんは、手術をしても手術をせずに経過観察しても、死亡率に差はないとの調査結果を米ミネソタ大学などのグループがまとめ、米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した。早期前立腺がん、手術しなくても死亡率に差なし 医療ニュース yomiDr.-ヨミドクター(読売新聞)
早期前立腺がん、手術しなくても死亡率に差なし 医療ニュース yomiDr.-ヨミドクター(読売新聞)
男としては、いつまでも男性らしくありたい。
早期の前立腺がんでは、経過観察したほうが良さそうだ。
50歳代の半分は前立腺肥大症?
前立腺肥大症は、50歳以上の男性で5人に1人といわれています。
日本の50歳以上の男性人口は約2,400万人ですので、統計学上、約480万人が患者ということになります。
厚生統計協会・患者調査の39万8千人という患者数を考えると、まだまだ9割以上の方は症状を我慢して潜在化していると考えられます。
前立腺肥大症
高齢化に伴い前立腺が肥大し、50歳代の男性の約40~50%、80歳以上の男性では80%を超える人が前立腺肥大症にかかっております。
多いなあ。
男性に前立腺肥大症は必発ですね。
前立腺癌の治療
アンドロゲン受容体の活性化を抑えることが癌の進展を抑えるため、内分泌療法が薬物療法の基本となる。
GnRHアゴニスト(リュープロレリン、ゴセレリン)、GnRHアンタゴニスト(デガレリクス)、抗アンドロゲン薬(フルタミド、ビカルタミド、プロスタール)が用いられる。
エストラムスチンは、抗悪性腫瘍薬と抗アンドロゲン薬の二つの作用があるが、心血管イベントを起こしやすく、抗凝固薬の併用が奨められる。
内分泌療法に奏功しなくなった去勢抵抗性前立腺癌にはドセタキセル、アンドロゲン受容体拮抗薬であるエンザルタミド、アンドロゲン代謝阻害薬でああるアビラテロンが生存期間を延長する。
アビラテロンは副腎でのホルモン産生も抑制するためステロイドの補充を行う。
ドセタキセル不応となった患者では、新規タキサン系薬剤であるカバジタキセルが有効である。
カバジタキセルでは骨髄抑制による発熱性好中球減少症に注意する。
前立腺癌はホルモン依存性の癌で、男性ホルモンの影響を受けて進行する。
このため前立腺癌に対する薬物療法はホルモン療法(内分泌療法)が第一選択であり、その臨床効果においてこれを凌駕する他の薬物療法は現在までのところ登場していない。
ホルモン療法の効果は著名で、治療開始直後はほとんどの症例でPSA値の低下が見られる(近接効果)が、2~3年で効果が弱まり、PSA値が再上昇する。
ホルモン療法でコントロールができなくなった場合は抗癌剤を用いた化学療法を実施するが、相対的に副作用が強いことなどから、可能な限り長い間、ホルモン療法を継続することが、薬物療法の基本方針となっている。そこで問題となるのが、ホルモン療法により男性ホルモンの分泌が抑えられている(内科的去勢)にもかかわらず進行する「去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)」である。
LH-RH製剤
我が国で最も一般的なホルモン療法は、LH-RH製剤(LH-RHアゴニストあるいはLH-RHアンタゴニスト)と抗アンドロゲン薬の併用療法(複合アンドロゲン阻害療法、CAB療法)もしくはLH-RH製剤の単独療法である。
LH-RH製剤は、下垂体に作用して性腺刺激ホルモンの分泌を抑制し、抗アンドロゲン薬は前立腺癌細胞表面のアンドロゲン受容体に作用して、癌細胞の増殖シグナルを阻害する。
わが国における臨床研究では、2剤を併用するCAB療法が他のホルモン療法と比較して有意に予後を改善するという結果が示されている。
LH-RHアドニストにはゴセレリン酢酸塩(ゾラデックス)とリュープロレリンがあり、いずれも徐放性の注射薬(デポ剤)である。また2012年からはLH-RHアンタゴニストであるデガレリクス酢酸塩(ゴナックス)も使用できるようになった。LH-RHアンタゴニストではLH-RHアゴニスト投与開始時に見られる一過性のテストステロン上昇や、それに伴う前立腺癌随伴症状の増悪(フレアアップ)がなく、急速に血中テストステロン値を低下させるため、フレアアップとして尿路閉塞や骨痛、脊髄圧迫などが懸念される症例では有用である。
抗アンドロゲン薬
抗アンドロゲン薬としては、構造式の中にステロイド骨格を有するステロイド性抗アンドロゲン薬である酢酸クロルマジノン(プロスタール)と非ステロイド性抗アンドロゲン薬であるフルタミド(オダイン)、ビカルタミド(カソデックス)がある。2014年5月にエンザルタミド(イクスタンジ)が発売され、選択肢が増えた。
CYP17阻害薬
ザイティガは精巣や副腎などで働く酵素CYP17の阻害薬であり、17α-ヒドロキシラーゼと17、20リアーゼ活性を阻害することによりアンドロゲン合成を阻害する。
食事の影響により、最高血中濃度(Cmax)と血中薬物濃度時間曲線下面積(AUC)が上昇するため、食事の1時間前から食後2時間までの服用は避ける。
頻度の高い副作用としては、肝障害、低カリウム血症などがある。ザイティガによりアンドロゲン合成が阻害されるのに伴い、コルチゾールの産生が減少する。すると、フィードバック作用により、ミネラルコルチコイド作用を持つステロイドの血中濃度が増加し、高血圧、低カリウム血症、体液貯留といった有害事象につながる。そのため、ザイティガの投与時には、コルチゾールの減少を補う目的で経口ステロイドのプレドニン(プレドニゾロン)を必ず併用する。
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2 件のコメント
80歳の男性です。PSA4.1、生検の結果16検体中4検体が高リスク群グリソンスコア9に該当する「前立腺がんで悪質なもの」と宣告され、MRI検査と骨シンチ検査を行い、その結果治療方針を決めるとのお話でした。
生検後の血尿が1カ月程続き精神的負担からやっと開放された結果、今度は、多分放射線治療(外照射法)となることを示唆されています。
挙げられている副作用を考えますと、高齢でもあり老い先を考慮しても治療リスクを背負っていくのは選択し難いのですが、もし適切なご意見を賜れれば幸甚です。よろしくお願いします。
2013.1.16
コメントありがとうございます。
私のような若造が、このような重要な判断にアドバイスをするというのも、恐れ多いのですが。
もし自分がそのような診断をされたなら、と考えますと、手術はやはり避けたい。
しかし、放射線治療であれば、侵襲も少ないので、やってもいいかな、と思います。
放射線治療の副作用は比較的軽微なものでしょうし。
放射線治療もしない、という選択をしたとしても、定期的に通院することにはなると思いますし。
専門的な知識もない若造の意見で、何の参考にもならないかも知れませんが、少しでもお役に立てれば。