2025年10月15日更新.2,652記事.

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ファイトケミカルとは?第7の栄養素

ファイトケミカルとは?第7の栄養素として注目される植物由来成分の効果と食品例

「野菜や果物を色鮮やかに食べましょう」とよく言われます。
これは単に見た目が美しいからではなく、色や香り、苦味の中に私たちの健康を支える大切な成分が含まれているからです。

その代表が ファイトケミカル(phytochemicals)。
ビタミンやミネラル、食物繊維に次ぐ「第7の栄養素」として近年注目を集めています。

本記事では、ファイトケミカルの基礎知識から種類、期待される効果、具体的な食品例、さらに上手な摂取の工夫までを詳しく解説します。

ファイトケミカルとは?

定義
・「phyto=植物」「chemical=化学物質」の意味
・植物が紫外線や害虫、病原菌から自らを守るために合成する物質
・ヒトにとっては必須栄養素ではないが、健康維持や病気予防に役立つと考えられている

栄養学における位置づけ
栄養素は一般に以下の6つに分類されます。
・炭水化物
・脂質
・タンパク質
・ビタミン
・ミネラル
・食物繊維

これらに加えて近年「第7の栄養素」として位置づけられつつあるのが ファイトケミカル です。

ファイトケミカルの働き

抗酸化作用
体内で発生する活性酸素を中和し、細胞やDNAを守る。
→ 老化や動脈硬化、がん予防に寄与。

免疫調整作用
ナチュラルキラー細胞やマクロファージの活性をサポートし、感染症や腫瘍に対する抵抗力を高める。

解毒・代謝促進作用
肝臓の解毒酵素を誘導し、発がん物質や有害化学物質の代謝を助ける。

ホルモン様作用
イソフラボンのように、エストロゲンに似た作用を示すものもある。
→ 更年期症状や骨粗鬆症予防に役立つ可能性。

主なファイトケミカルの種類と代表例

ファイトケミカルは数千種類以上あるとされますが、代表的なグループを整理すると以下の通りです。

① ポリフェノール類
・植物の色素・苦味・渋み成分
・強力な抗酸化作用
・代表例:カテキン(緑茶)、アントシアニン(ブルーベリー)、イソフラボン(大豆)、クルクミン(ウコン)

② カロテノイド類
・植物の鮮やかな赤・黄・橙色の色素
・抗酸化作用、免疫強化
・代表例:βカロテン(にんじん)、リコピン(トマト)、ルテイン(とうもろこし・ほうれん草)、アスタキサンチン(えび・かに)

③ 硫黄化合物
・独特の辛味や匂いの成分
・解毒酵素を誘導、抗菌・抗がん作用
・代表例:アリシン(にんにく)、スルフォラファン(ブロッコリー)、イソチオシアネート(キャベツ、大根)

④ サポニン類
・苦味や泡立ちの成分
・抗酸化、免疫調整、コレステロール低下作用
・代表例:大豆サポニン、高麗人参サポニン

⑤ その他
・リグナン(ゴマのセサミン)
・クロロフィル(緑の色素)
・フィトステロール(植物ステロール、コレステロール吸収抑制)

分類名称含まれる植物機能・効果
ポリフェノールフラボノイド(色素)アントシアニンブドウ・黒米・ブルーベリー抗酸化作用
イソフラボン大豆など更年期障害改善・骨粗鬆症予防
フェニルプロパノイドセサミノールゴマなど抗酸化作用・動脈硬化予防
シゲトン類クルクミンウコンなど抗酸化作用・抗炎症作用・肝機能改善
有機硫黄化合物イソチオシアネート類スルフォラファンブロッコリースプラウトなど抗酸化作用・解毒作用・がん予防
システインスルホキシド類メチルシステインスルホキシドニンニクなど解毒作用・免疫力向上
スルフィン類アリシンニンニクなど抗酸化作用・動脈硬化予防
テルペノイド非栄養系カロテノイド類(色素)ルテインホウレンソウなど抗酸化作用
リコペントマト・スイカなど抗酸化作用
モノテルペン(香気成分)リモネン柑橘類抗酸化作用・抗アレルギー作用
ステロイドフィトステロール植物油コレステロール減少
糖関連化合物多糖β-グルカンキノコ類免疫力向上
配糖体サポニン豆類・穀物・ハーブ
長鎖アルキルフェノール誘導体(辛味成分)カプサイシントウガラシ類体熱生産作用
ギンゲロールショウガ体熱生産作用

色でわかるファイトケミカル

野菜や果物の色は、そのままファイトケミカルの種類を反映しています。

・赤:リコピン(トマト)、アントシアニン(赤ワイン、いちご)
・黄・橙:βカロテン(にんじん)、ルテイン(とうもろこし)
・緑:クロロフィル(ほうれん草)、スルフォラファン(ブロッコリー)
・紫:アントシアニン(ブルーベリー、なす)
・白:アリシン(にんにく、玉ねぎ)、イソチオシアネート(大根)

「色鮮やかな食品を食べると体に良い」といわれるのは、まさにファイトケミカルの存在によるものです。

食品別の注目ファイトケミカル

トマト
・リコピンを豊富に含む
・強い抗酸化作用で動脈硬化・前立腺がんリスク低減に注目

ブロッコリー
・スルフォラファンが含まれる
・解毒酵素誘導作用で発がん抑制効果が期待される

ブルーベリー
・アントシアニンが豊富
・視覚機能改善や抗酸化作用

大豆
・イソフラボンが豊富
・女性ホルモン様作用で更年期障害や骨粗鬆症予防

ゴマ
・セサミンが含まれ、強力な抗酸化作用
・LDLコレステロール低下、肝機能保護作用

ゴマに含まれるセサミンの魅力

特に近年注目されているのが、ゴマに含まれる セサミン です。

・抗酸化作用により動脈硬化予防
・アルコール代謝促進による肝保護作用
・血圧低下作用があるとの報告もある

さらにゴマは不飽和脂肪酸(リノール酸、オレイン酸)や鉄・カルシウムといったミネラルも豊富で、総合的に健康効果が高い食品といえます。

ファイトケミカルを上手に摂る工夫

色とりどりの野菜・果物を食べる
→ 赤・緑・黄・紫・白を意識して選ぶとバランスがよい。

加熱調理を工夫する
・リコピンやβカロテンは油と一緒に摂取すると吸収率が高まる。
・スルフォラファンは過度な加熱で壊れるため、蒸すのが良い。

発酵食品や加工品を活用
・味噌や納豆(大豆イソフラボン)
・トマトジュースやトマトソース(リコピン吸収率アップ)

注意点

・ファイトケミカルはあくまで 食品由来の成分 として摂取するのが基本。
・サプリメントで大量に摂取すると、かえって有害となる可能性がある。
・バランスの良い食事の一部として取り入れることが大切。

まとめ

・ファイトケミカルは植物由来の色素や香り、苦味成分であり、第7の栄養素として注目されている。
・抗酸化作用・免疫調整作用・解毒促進作用など多彩な健康効果が期待される。
・トマトのリコピン、ブロッコリーのスルフォラファン、ブルーベリーのアントシアニン、大豆のイソフラボン、ゴマのセサミンなどが代表的。
・食卓に「色とりどりの食品」を取り入れることが、自然にファイトケミカルを摂取する最良の方法。

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