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むずむず脚の原因は鉄不足?レストレスレッグス症候群と鉄の関係
公開. 更新. 投稿者:睡眠障害.この記事は約3分17秒で読めます.
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むずむず脚の原因は鉄不足?レストレスレッグス症候群と鉄の関係

夜、寝ようとすると足が「むずむず」して落ち着かない。じっとしていられず、布団の中で何度も寝返りをうち、眠りにつけない。――このような症状に悩む方は少なくありません。
これはむずむず脚症候群(Restless Legs Syndrome: RLS)、または「レストレスレッグス症候群」と呼ばれる病気です。
原因のすべてが解明されているわけではありませんが、特に注目されているのが鉄不足との関連です。むずむず脚症候群の発症メカニズム、鉄の役割、治療と生活習慣改善のポイントについて勉強します。
むずむず脚症候群とは?
症状の特徴
・足に「むずむずする」「虫が這うような」「ジンジンする」といった異常感覚が出る
・夜間や安静時に強くなる
・動くと楽になるが、じっとしていると再び出てくる
・睡眠障害を引き起こし、日中の眠気や集中力低下につながる
このような特徴から、睡眠の質が大きく損なわれ、生活の質(QOL)を下げてしまう病気です。
有病率
欧米では人口の約5〜10%に見られるとされ、日本でも潜在的な患者は数百万人いると推定されています。特に女性・中高年層に多いことが知られています。
鉄とドパミン:むずむず脚症候群のメカニズム
むずむず脚症候群の発症には、脳内の神経伝達物質であるドパミンの機能低下が深く関与しています。
ドパミンと鉄の関係
・ドパミンは「運動・快感・意欲」などをつかさどる重要な神経伝達物質
・その合成には酵素「チロシン水酸化酵素」が必要
・この酵素の働きに鉄が不可欠
つまり鉄が不足すると、ドパミンの産生がうまくいかず、神経伝達が乱れることで異常な感覚(むずむず)が生じるのです。
脳内鉄の不足
血液中に鉄が十分あっても、脳内への鉄供給が不足している場合があり、これが症状の背景にあるとも考えられています。
鉄不足とむずむず脚症候群
古くから知られる関係
すでに1950年代から「鉄欠乏性貧血の患者にむずむず脚症候群が多い」という報告があり、鉄剤治療が有効であることが確認されてきました。
フェリチン値と治療指標
・フェリチン:体内の貯蔵鉄を反映する指標
・フェリチンが 50ng/mL未満 ではRLSが出やすい
・治療の目標は 50ng/mL以上 を維持すること
鉄剤を使うときは便秘・黒色便・胃部不快感などの副作用に注意が必要ですが、多くの患者で症状改善が期待できます。
鉄以外の要因
ビタミンD
近年、ビタミンD欠乏もRLSに関与するとの報告があります。ビタミンDはドパミン神経の維持や合成を助けるため、不足すると症状を悪化させる可能性があります。
二次性RLS
・鉄欠乏性貧血
・慢性腎不全
・妊娠(特に妊娠後期)
・末梢神経障害
などに伴って発症することがあります。
薬剤性RLS
抗精神病薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、制吐薬など一部の薬剤が症状を誘発することもあります。
治療の基本方針
非薬物療法(軽症〜中等症)
・鉄分を十分に摂取(食品+必要に応じて鉄剤)
・カフェイン、アルコール、ニコチンを控える
・規則正しい睡眠習慣をつける
・就寝前にストレッチ、マッサージ、入浴を行う
・発作時に読書・ゲーム・音楽などで気を紛らわす
薬物療法(中等症〜重症)
・ドパミン作動薬(プラミペキソールなど)
・α2δリガンド薬(ガバペンチン、プレガバリン)
・鉄剤(フェリチン低値の場合)
ただし長期使用で「augmentation(症状の増悪・拡大)」が起こることもあり、慎重な投与管理が必要です。
日常生活でできる工夫
鉄を含む食品を意識的に摂る
・赤身肉、レバー、魚介類、大豆製品、緑黄色野菜など
・ビタミンCと一緒に摂ると吸収が高まる
快眠習慣をつける
・毎日同じ時間に寝起きする
・寝る前のスマホ・PCは控える
・寝室を暗く静かに保つ
適度な運動
・ウォーキングや軽い筋トレは血流改善につながる
・激しい運動は逆に症状を悪化させることもある
まとめ
・むずむず脚症候群の原因は完全には解明されていないが、鉄不足とドパミン機能障害が大きく関与している。
・血清フェリチン50ng/mL未満なら鉄補充療法が推奨される。
・ビタミンD不足や薬剤、腎不全、妊娠などが二次的原因になることもある。
・治療は生活習慣改善が基本で、必要に応じて薬物療法を組み合わせる。
むずむず脚は「気のせい」ではなく、科学的に解明されつつあるれっきとした疾患です。夜間の不眠や日中の倦怠感に悩んでいる方は、まず鉄不足の有無を調べ、生活改善と医師への相談を検討してください。