更新日:2015年10月22日.全記事数:3,169件.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたい。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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胃酸で胃が溶けないのはなぜ?


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てんびん説

胃液を満たしたシャーレの中に動物の肉片を入れておくと、一晩で形がなくなるほど溶けてしまう。
胃酸、ペプシンからなる胃液の消化力はそれほど強いものなのに、健康な人の胃が自己消化されないのはなぜか。
それは、正常な微小循環血流に養われた胃粘膜組織と胃粘膜表面を覆う粘液が、防御機構として胃液の攻撃から絶えず守ってくれているからである。
従来、胃・十二指腸潰瘍の成因は、Sun&Shay が提唱したこのような「攻撃因子と防御因子のてんびん説」に基づいて理解されてきた。
つまり、胃粘膜を防御する力を高め、胃液の攻撃力を弱めることで攻守のバランスが取れれば、消化性潰瘍は治療できるというわけだ。

実際、消化性潰瘍治療薬は、胃液の攻撃を弱める攻撃因子抑制薬と胃粘膜を守る力を高める防御因子増強薬に大別され、それぞれに多種多様な薬剤が開発されてきた。
特にH2RA、PPIといった強力な攻撃因子抑制薬(酸分泌抑制薬)の登場以降は、それまで外科手術の適応であった多くの患者を内科的に治療することが可能になっている。
その意味において、「攻撃因子と防御因子のてんびん説」に基づく潰瘍治療は妥当といえるが、一方で潰瘍再発がこれら酸分泌抑制薬の服薬中止後に60~90%、服薬継続中でも10~20%の頻度で起こるという課題が残った。

バランス説

胃潰瘍は、胃粘膜が粘膜筋板を越えて深く剥脱した病変をもたらす疾患です。
その成因は胃酸やペプシンなどの攻撃因子と、防御因子としての粘液、血流、重炭酸バリアなどとのアンバランスにより潰瘍が発生するとするバランス説で理解されてきました。
しかし、現在では、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染、非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)が二大要因であり、胃酸がそれぞれに共通した増悪因子であると考えられています。

胃内pHは強酸性

胃液の分泌状態を示す指標の一つとして、胃内の酸度(胃内pH)があります。
胃内pHは、消化と殺菌のために常に一定以上の酸性(低いpH)に保たれています。
自分の胃が消化されない理由は、胃粘液が胃の粘膜を覆い、胃酸や消化酵素から胃を守ってくれているからです。
胃粘液の分泌量が減って粘膜が傷むと、胃痛や胃潰瘍などを引き起こすことにもなるため、治療には、胃粘液の分泌を促したり、粘膜を保護する成分などが用いられます。

ペプシン

胃酸は、胃液中に分泌されたペプシノーゲンをペプシンに変換し、その活性を高めて、タンパク質の消化に関与しています。
ペプシノーゲンはペプシンの前駆体で、ペプシンと抑制体を結ぶペプチド部分から構成されていますが、pH5.0以下になるとペプシノーゲンの抑制体の部分が切り離され、ペプシンとなって活性を発現します。
ペプシノーゲンは胃粘膜中で産生され、胃底腺の主細胞などから分泌されますが、胃粘膜、胃底腺などの分泌腺中は、胃粘液によりpHが5.0以上となっているため、ペプシンになることはなく、胃粘膜の自己消化は起こりません。
ペプシノーゲンとしてそのまま胃液中に分泌され、胃酸と接触することにより、初めてペプシンとなります。
ペプシンの至適pHは2.0ですから、ペプシンがその作用を十分発現するためにも、胃酸による胃内pHの低下は不可欠です。

PPIで消化不良?

PPI服用時には、胃酸の作用が減弱し、タンパク質の消化が影響される可能性が考えられますが、胃液中のペプシンのタンパク質消化作用は、膵臓の消化酵素により肩代わりされるので、それほど大きな影響はないとする指摘もあります。
ただし、胃酸は十二指腸粘膜の内分泌腺細胞に作用してセクレチンを分泌させ、これによる膵臓の消化酵素活性を高める作用も担っているので、膵臓の消化酵素に対してもある程度影響を及ぼす可能性があり、特にタンパク質の摂取量が多い場合や、消化能力の低下している高齢者などでは、引き続き注意が必要と思われます。

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