2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

周辺症状と中核症状の違いは?

中核症状と周辺症状

認知症には「中核症状」と呼ばれるものと、「周辺症状」と呼ばれるものがあります。

「中核症状」は脳の神経細胞が壊れることによって、直接起こる症状です。

直前に起きたことも忘れる記憶障害、筋道を立てた思考ができなくなる判断力の障害、予想外のことに対処できなくなる問題解決能力の障害、計画的にものごとを実行できなくなる実行機能障害、いつ・どこがわからなくなる見当識障害、ボタンをはめられないなどの失行、道具の使い道がわからなくなる失認、ものの名前がわからなくなる失語などがあります。

一方、周囲の人との関わりのなかで起きてくる症状を「周辺症状」といいます。

幻覚を見たり、妄想を抱いたり、暴力をふるったり、徘徊したりといった行為はいずれも「周辺症状」の一つです。「周辺症状」はその人の置かれている環境や、人間関係、性格などが絡み合って起きてくるため、症状は人それぞれ表れ方が違います。

周辺症状

認知症の症状と言えば、「もの忘れ」がまず一番に来ます。

一般の人は記憶障害がひどくなっていくのが認知症というイメージです。

ただ記憶を失っていくだけであれば、他人に迷惑をかけることは少ないのかも知れない。

問題はそれに付随した症状です。

周辺症状といいます。

徘徊
失禁
睡眠障害
帰宅願望
食べない
異食
物取られ妄想
ケアの拒否
暴言・暴力行為

などがあります。

年をとったらだんだんボケていくというイメージの中に、他人に暴力を振るうというイメージはありませんでした。

認知症にも様々な症状があります。

周辺症状は問題行動?

周辺症状は、これまで「問題行動」といわれていましたが、最近では行動・心理症状(BPSD)と呼ばれています。

中核症状は認知症に共通してみられますが、BPSDは必ずしも全ての認知症の人にみられるわけではなく、約80%の認知症の方に起こります。

BPSDとは、不安やうつ状態、妄想、幻覚、徘徊、興奮、攻撃性などで、その発症には患者さんの心理的要因や環境的要因が影響しています。

つまり、認知症の中核症状である認知機能障害に対する本人の恐怖と不安、孤独感、あるいは被害的な気分などによってBPSDが現れるのです。

そのため、不安感やストレス、あるいは身体の不調が多いほど、BPSDは現れやすいといわれています。

若年性認知症と老年期認知症では、BPSDに若干の違いがみられ、若年性では徘徊、興奮、意識低下が、老年期では夜間せん妄、不潔行為、自他の区別困難、幻覚・妄想が、多くみられます。

BPSDの治療では、環境の調整や適切な介護が重要で、症状に適合する向精神薬も有効です。

もの盗られ妄想

大事なものをしまい忘れるのは認知症の人なら多くの人に起こる中核症状です。

いつものしまい場所ではなく、違う場所にしまいこみ、すっかり忘れたために「通帳がなくなった!!」と始まります。

自分が何かをしまい忘れて見つからないことが続くと、失敗を受け入れられないため、誰かが盗ったに違いないと疑う。また、いじめられたなどと思い込む。比較的早期のADでもみられ、介護の中心となる身近な人が疑われるため困る。

人に頼らず、自立して生きていきたい気持ちの強い人では、自分が忘れるわけなどない(忘れたなどということが受け入れられない)と思うあまり、そばで世話をしてくれている人が盗んだというもの盗られ妄想がしばしばみられます。

これは、もの忘れという中核症状に、自立心が強いという性格や、心ならずも家族に迷惑をかけているという状況が影響して起こる行動・心理症状です。

なくし物が出てくればそれでおさまる妄想ですから、周囲の人はあまり深刻にならず、疑われている介護者が疲弊しないよう心理的な支援をすることが大事です。

こういう妄想は、時期が来れば自然に見られなくなります。

妄想的になりやすい素質を持った人にストレスがかかったときに、単純なもの盗られ妄想から「嫁は家の財産を狙っている」とか「家を乗っ取られる」といった妄想に発展します。

これには「妄想的になりやすい」という素質が深く関与しているので、妄想を治療する抗精神病薬が効果を上げることが少なくありません。

認知症

認知症は、記憶障害などの認知機能障害を中核症状とする慢性あるいは進行性の疾患です。
また、幻覚や妄想、徘徊、暴力などの行動・心理症状(BPSD:behavioral and psychological symptoms of dementia)を周辺症状として伴うことも多く、社会生活や日常生活に支障をきたし、患者のみならず介護者への負担も大きいことが問題とされています。

●中核症状(脳の器質的障害により生じる)
記憶障害:物事が思い出せない、新しいことを覚えられない
遂行機能障害:物事を計画し、順序立てて行動できない
見当識障害:時間、場所、人など、自分を取り巻く状況がわからなくなる
失語:言葉を忘れる、話がまとまらない
失行:慣れた動作・操作ができない
失認:物や人を識別できない

●周辺症状(心因性・環境因性に生じる)
心理症状:幻覚・妄想、不安・抑うつ、易怒性など
行動症状:徘徊、暴力、暴言など

周辺症状に使われる薬

●抗精神病薬
・抗精神病薬は鎮静作用があり、幻覚、妄想、不安、興奮などの心理症状のほか、暴力などの行動症状にも効果が期待される。ただし、抗精神病薬の投与は副作用のリスクを伴うことから、易怒性や興奮などの激しい周辺症状により患者自身や周囲に危険が及ぶ場合などに限って使用することが望ましい。
・錐体外路症状などの副作用が少なく、比較的安全性の高い非定型抗精神病薬が主な選択肢となる。
・抗精神病薬を使用する際は、過鎮静、転倒、骨折、起立性低血圧、認知機能の低下などに注意する。

●抗てんかん薬
・一部の抗てんかん薬は気分安定作用があり、感情の起伏の激しい周辺症状に効果が期待される。
・バルプロ酸やカルバマゼピンなどの抗てんかん薬を使用する際は、薬物相互作用や中毒症状などに注意が必要であり、定期的なモニタリングを行う。

●抗うつ薬
・抗うつ薬は、抑うつなどの低活動な周辺症状に対して効果が期待される。
・認知機能への影響を考慮し、抗コリン作用の弱い選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が主な選択肢となる。
・抗うつ薬を使用する際は、投与初期における消化器症状や、急激な休薬による離脱症状に注意する。

●漢方薬
・易怒性、興奮、攻撃性などの激しい周辺症状には、抑肝散が考慮される(より虚弱な患者には、抑肝散陳皮半夏を用いることもある)。
・抑うつには加味帰脾湯、無気力や倦怠感には補中益気湯、これらに伴う食欲不振には六君子湯などが考慮される。
・上記の漢方薬は甘草を含むため、偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、浮腫など)やミオパチーなどに注意する。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

コメント


カテゴリ

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
著書:薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
SNS:
プライバシーポリシー

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

最新の記事


人気の記事

検索