2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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アリセプトで認知症の進行を抑えられるか?

基本的にアルツハイマー型認知症は、進行過程において神経線維が破壊されて、その程度が大きくなっていくので、進行そのものを食い止めなければ病気の進行を遅らせるという結果にはつながりません。

現在ある認知症治療薬はその点には全く関与していないので、進行を遅らせるという表現は適切とはいえない。

認知症の治療における薬物療法の効果はかなり限定的であり、期待するような効果を実感できにくいケースが多い為、使用に際しては、どのような症状や行動に少しでも改善があるかという点に注目していくことがポイントとなります。

アリセプトは発症初期じゃないと効かない?

認知症の治療薬についての治療成績にはさまざまな報告があり、ある報告では、認知症治療薬は「発病初期」に投与したほうが、高度な認知症症状へ移行したあとに投与したほうが、高度な認知症症状へ移行したあとに投与したときよりもよい効果が得られた、という結果があります。

ただ、認知症の啓発がすすんだとはいえ、まだまだ認知症の初期に治療に訪れる患者さんは多くないので、発病初期でなければ効果がないのであるならば、ほとんどのケースへの治療効果は期待できないということになってしまいます。

現状では他に有効な治療薬がないこともあり、「それでも効果の発現を期待して、認知症症状が高度になった方へも投与をしている」というのが実情になります。

アリセプトの効果

アリセプトの主な薬効はアルツハイマーの進行抑制です。
進行を抑制していると言われても、介護者から見れば変わらないわけなので、効果があるのかどうかわからないといった感想を持ちます。

効果を実感するというのが難しい薬です。

アリセプトは認知症の進行を抑える

認知症と言えば、必ずと言っていいほど処方されるのがアリセプトという薬です。
アルツハイマー型認知症にわが国で唯一保険適応のある薬です。

この薬を飲んでも認知症が治るわけではありません。
認知症の進行を防ぐだけなので、早期に服用することが大切です。
症状の進行を9ヶ月程度遅らせると言われています。

アルツハイマー型認知症は、年の単位でゆっくり進行する病気です。アリセプトは、認知症の症状が進行するのをある程度、先延ばしにすることができます。

症状が良くならないように見えても、何も治療しない場合よりは症状の進行を遅らせています。

いつもそばにいる家族、介護者の方は変化に気づきづらいことがあります。

患者さんの症状を確認するには、「挨拶が出来るようになった・表情がよくなった」「意欲が見られるようになった・趣味を持つようになった」など日常での変化を確認していただきます。

アリセプトの適応

アリセプトは、適応症がアルツハイマー型認知症症状の進行抑制とされているように、服用を続けても、現状の維持や、症状の進行速度を抑えるだけにとどまっていることもあり、薬剤の効果がなかなか実感されにくい面も併せ持っています。

その一方で、下痢や胃痛などの副作用は投与初期から発現することが多く、効果がなく、副作用だけがあるという印象から、服薬が中断されてしまうこともあります。

患者に対しては、服用を開始した初期の段階から、アルツハイマー型認知症の病態そのものを改善する治療薬ではないことを繰り返し伝え、期待できる効果やその発現時期を十分説明し、過度な期待を持たないように理解を得ることも大切です。

どのくらいで効果が現れるのか?いつまで続けるか?

軽度・中等度アルツハイマー型認知症患者を対象とした臨床試験の結果によると、投与12週間後より有効性が確認されたとされています。

アリセプトは、症状が進行する時間を遅らせるものです。

症状がよくならないように見えても、実際には症状の進行を遅らせていると考えられます。

そのため、休薬によって遅らせていた認知症症状が悪化することがあります。

アリセプトの投与をいつまで続けるかということについては、明確な基準はなく、それぞれの状況に応じて判断されているのが現状かと思われます。

アリセプトの添付文書には、「効果が認められない場合、漫然と投与をしないこと」と記載されていますが、長期に使用している例では、症状が進んでいるからといって効果がないとは一概には言えず、有効性の判断は単純にはできません。

特に高度のアルツハイマー型認知症に適応が追加されてからは、症状が進行しても投与を中止する必要がなくなり、効果があるのかどうかは確定できなくとも、特に問題となるような副作用がなければ、継続されるという場合が多いのではないかと思われます。

抗認知症薬はいつまで続けるか

ADにおいて進行抑制を効能・効果とする薬剤は、安全性で問題のない限り投与を続けるのが原則である。

しかし、食事の自発的摂取がない状態(全介助)まで進行すれば、末期と判断し、減量・中止を検討する。

アリセプト3mgじゃ効かない?

アリセプトの有効量は1日5mgであり、3mgの投与の場合には、効果は期待できないとされています。

1日3mgから5mgに増量した場合にも、アリセプトの血中半減期は約90時間と長く、血中濃度が定常状態に達するには2~3週間程度の服用が必要となるため、安定した効果を得るためにはかなりの時間を要することも予想されます。

1日3mgという量は、臨床試験ではプラセボと比較した場合、効果に有意差が認められず、有効量とはみなされていません。

国外で軽~中等度の患者を対象とした二重盲検試験に引き続いて行われた長期投与試験でも、二重盲検試験での有効量である1日5mg以上の服用を継続した群では、ナーシングホーム初回入所までの時間が5.5年であったのに対し、有効量未満を服用した群では3.7年と有意に短かったことが報告されています。

また、二重盲検試験では有効量未満、その後の長期投与試験では有効量を服薬した群での入所時間は4.8年、逆に二重盲検試験では有効量以上、長期投与試験では有効量未満を服用した群では3.7年という結果も報告されており、有効量以上の服用を続けることが必要であることが示されています。

実際には、3mgのまま増量されず、ずっと服用を継続する例がみられることもあるようです。

臨床報告の中では、アルツハイマー型認知症と脳血管認知症の混合型や、パーキンソン病にアルツハイマー型認知症を合併した患者に対して、ドネペジル塩酸塩による興奮性の精神神経症状やパーキンソン病悪化への影響などを回避するために、1日3mg以下の投与を継続し、認知症症状に対する効果を認めた例もあります。

アリセプトの吐き気対策

ChE阻害剤の消化器系副作用(吐き気、嘔吐、下痢)は、服薬中断の大きな原因になっている。

漸増することにより消化器系副作用を回避できることが多い。

しかし、強い吐き気、嘔吐、食欲不振や胃痛がみられる場合は、一定期間(1週間~1ヶ月程度)の減量と再増量が最も効果的である。

また、胃酸分泌亢進など逆流性食道炎様の症状(いわゆる胸焼け)がみられる場合は、プロトンポンプ阻害剤(タケプロン、パリエット、ネキシウムなど、適応症に注意)や胃粘膜保護剤の併用が勧められる。

強い吐き気に対しては、ドンペリドン(ナウゼリン)の屯用が有効な場合が多い。

ただし、メトクロプラミド(プリンペラン)はパーキンソン症状を惹起するおそれがあるので使用しない。

アリセプトの用量

アリセプトの用量は1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量となっています。

これは消化器系の副作用予防のために少量から開始するという理由だそうで、3mgでは効果がなく5mg飲んで初めて効果が出る薬らしいです。

アリセプトによる末梢ムスカリン様の副作用として消化器症状を呈することは周知され、その対策として3mgの1~2週の前投与で、5mg投与時の副作用を約1/4に減少できることから、この漸増法が守られています。

そのため、3mgを2週間以上服用させているとレセプトで返戻が来るらしい。

地域差はあるようですが。

5mgでは副作用が強くて飲めない、という患者さんが3mgに減量して続けて飲んでいるというパターンもあります。

3mgで効果がみられた場合、5mgに増量せずにそのまま続けるという医師もいるらしい。

精神神経科とか神経内科とか、専門医であればレセプトも通るのかな。

処方例

アリセプトD錠5mg 1錠  
 1日1回朝食後 30日分

認知症の薬は効いているのか?

日常診療において抗認知症薬の効果を知ることを難しくしている要因として、次の3点があげられる。

第一に、認知症は多くの場合、現状では根治することのできない進行性の疾患である。

これを換言すれば、たとえ抗認知症薬を飲んだとしても症状の改善が見込めないということである。

ゆえに、抗認知症薬を飲むことによって自覚症状が軽減ないしは改善された、という体験が得られにくい。

このことが、抗認知症薬の効果が体感されがたい一因となっている。

第二に、たとえばアルツハイマー型認知症の場合、抗認知症薬によって遅くすることはできるがやむなく進行してしまう症状(認知機能の低下)と、社会心理的要因の関与が大きい二次的な症状(周辺症状)の見極めはしばしば難しい。

なかでも、周辺症状が、抗認知症薬のターゲットである認知機能の状態をわかりにくくしている場合には、本人もその近くにいる家族も、その薬効を誤って認識しがちである。

第三に、これまで日常診療において抗認知症薬の効果を知るための客観的指標がなかった。

たとえば、高血圧症治療薬であれば血圧値、糖尿病治療薬であれば血糖値やHbA1cなどのように、通常はその薬効を知るための簡便な客観的指標があり、当該指標を日常診療で活用することにより薬効の効果的なモニタリングが可能となっている。

しかし、認知症においては日常診療で扱いやすい客観的指標がなかったため、多くの場合、医師の主観的な判断による以外にない現状がある。

認知症は治らない

認知症の薬にアリセプトという薬がありますが、進行を遅らせるだけで、治るわけではありません。

認知症の症状には中心的な症状(記憶障害や判断力低下など)と周辺症状(不安・妄想・徘徊など)がありますが、周辺症状は改善することがあるそうです。

治る認知症

特発性正常圧水頭症とかビタミンB欠乏症のような治る認知症もあるらしいので、「認知症は治らない」というのは正しくない。

脳の可能性

認知症がどうして起こるかというと、年齢とともに脳に不要なタンパク質がたまっていくことがいちばんの原因です。

脳がゴミ箱のような状態になっていき、そして認知機能がだんだんと悪化していきます。

ところが、人間の脳には大きな余力があります。

この余力と、脳にゴミがたまって生じるダメージとのバランスで認知症の発症が決まります。

したがって、ゴミがたまったからといって、すぐ認知症になるわけではありません。

認知症の原因の中でいちばん多いアルツハイマー病では、ゴミ(βタンパク)がたまり始めてから、脳全体に広がり、ダメージが大きくなって認知症を発症するまでに20~30年かかっています。

これまで「認知症になったら病気が進んでいくばかりで治らない」といわれましたが、これは古い考え方です。

脳には大きな余力と回復力が備わっています。

認知症を発症しても、まだまだ多くの残存機能があります。

この残存機能を少しでも長く維持することが、認知症の進行防止につながるのです。

人間の機能は、使えば使うほど強化され、使わなければ退化します。

脳機能も例外ではありません。

認知症だから何もできないと決めつけて、本人から役割や生きがいを奪ってしまうと(これを廃用という)、脳を使うチャンスがなくなり、認知症がますます進行しやすくなります。

認知症患者に接するときのタブー

感情失禁や易刺激性のような(介護者にとっての)問題行動に対しては、抗精神病薬(化学的対応)や身体拘束(物理的対応)などで対応することが少なくないが、これらの対応は認知症の人にとって人道上からも好ましい対応とはいえず、また薬物の副作用など別の問題を生じさせることからも好ましい対応とはいえない。

また薬物療法を行わないかわりに、本人の言動や行動を無視することで対応する方法も長い目でみると決して好ましいものではない。

認知症の人を治療(介護)していくうえでのゴールは、本人にとって快適な生活を送れるようにすることと、人間として尊厳のある生活を維持・向上していくことといえる。

一方で介護者が犠牲になったり、燃え尽きてしまうようでは元も子もないので、その落とし所をみつけていくことに他ならない。

そのためには従来の考え方を変化させる必要がある。

たとえば症状を撲滅することに主眼を置くと、問題行動を鎮静化するために抗精神病薬を大量に用いたり、車いすに縛り付けたままにするという方法に行き着くが、これでは穏やかにコントロールされた状態とはいえない。

そこで、多少騒がしくして落ち着きがない状態であっても、家族や近所の人、デイサービスの知人たちと笑顔で会話をしたり、ゲームに興じたりできるのであれば、ときには逸脱行動があってもよいではないか、というように考えることになる。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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職業:薬剤師
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