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利尿薬が睡眠時無呼吸に効く?
公開. 更新. 投稿者:心不全/肺高血圧症.この記事は約4分59秒で読めます.
2,495 ビュー. カテゴリ:利尿薬と睡眠時無呼吸
国内で睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)に対する保険適用が認められている薬剤は、ダイアモックス錠(アセタゾラミド)しかない。
アセタゾラミドは代謝性アシドーシスをもたらすことにより呼吸中枢を刺激する作用を有するが、その有効性は限定的だとされている。
そのため現在、SASに対してさまざまな薬剤が適応外処方されている。
例えば、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、テオフィリン、ドキサプラム塩酸塩など呼吸中枢刺激作用を持つ薬剤や、無呼吸を誘発するレム睡眠を抑制する三環系抗うつ剤のクロミプラミン塩酸塩、α2受容体作動剤のクロニジン塩酸塩などが使われる。
また、脳幹部におけるセロトニン機構を介して上気道開大筋活動と横隔膜の呼吸運動を促進するとされるSSRIのパキシルが用いられることもある。
ダイアモックスの作用機序
ダイアモックスは、利尿薬や抗痙攣薬としても使用される一方、強力な炭酸脱水酵素阻害作用により、腎での重炭酸イオンの排泄を促進して代謝性のアシドーシス(血液が酸性化した状態)を起こす。
また、赤血球からの二酸化炭素の遊離を抑制して呼吸性アシドーシスを起こす。
これらによる血液pH の低下が呼吸中枢を刺激し、無呼吸を防ぐと考えられている。
低カリウム血症などの電解質異常を起こすリスクもあるので、定期的に血液検査を実施する。
ダイアモックスとアシドーシス
ダイアモックスの効能効果に、「肺気腫における呼吸性アシドーシスの改善」とある。ダイアモックスはアシドーシスを改善する。
ダイアモックスの副作用に、「代謝性アシドーシス」とある。ダイアモックスはアシドーシスを引き起こす。
呼吸性アシドーシスと代謝性アシドーシスの違いがわからない。
同じアシドーシスではないのか。
炭酸脱水酵素は二酸化炭素と水を最終的には水素イオンと重炭酸イオンに変える酵素であり、尿細管からのナトリウムイオン吸収を促進して水素イオンを尿中に排泄させます。
炭酸脱水酵素を阻害するアセタゾラミドは、水素イオンの尿中排泄を阻害するので、尿はアルカリ性に傾き、反対に血液pHは下がり、アシドーシスになります。
このようにして起こるアシドーシスを代謝性アシドーシスと呼び、呼吸能力が低下するために血中の二酸化炭素濃度が上昇して生じる呼吸性アシドーシスと区別しています。
アセタゾラミドを投与されると患者の血液は代謝性アシドーシスとなりますが、その時に生体の恒常性維持機構が機能して呼吸を促進させて多くの酸素を取り込み、血液pHを上げようとしてくれます。これがアセタゾラミドによって呼吸性アシドーシスが改善される仕組みです。
モディオダールと睡眠時無呼吸
適応外で睡眠時無呼吸症候群に使用されるものには、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(ヒスロン、プロペラ)や三環系抗うつ薬がある。
なお、モダフィニル(モディオダール)には、「持続陽圧呼吸(CPAP) 療法などによる気道閉塞に対する治療を実施中の閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の適応があるが、これは日中の眠気に対するもので、睡眠時無呼吸ではないので、別途睡眠時無呼吸の治療を行わないと、心血管系の合併症は防御できない。
テオフィリンと睡眠時無呼吸
テオフィリンは、中枢性換気抑制作用を持つアデノシンの受容体に対し競合的に拮抗する働きがある。
同剤の投与によりアデノシンの作用が阻害される結果、延髄の呼吸中枢が刺激されて換気量が増大し、呼吸抑制が改善すると考えられている。
しかし、SASは改善するが、睡眠の質は悪化することがある。
テオフィリンに覚醒作用がある上、催眠物質であるアデノシンの作用をテオフィリンが妨げるためだと考えられる。
テオフィリン徐放性製剤が耳鼻咽喉科から単独で処方されていたり、脳卒中後遺症患者の症状に含まれているケースで、特に夕食後以降の服用指示がなされている場合には、SASの治療目的で処方されている可能性がある。
ただし、テオフィリン徐放性製剤は、呼吸器系疾患の患者に対して併用されることが多い薬剤であるため、SASの治療目的で処方されているかは判断が難しい。
医師から「いびきを改善する薬」と説明されている場合もある。
SASは呼吸中枢障害により呼吸停止する中枢型(CSAS:Central SAS)と、睡眠中に呼吸運動はあっても上気道が閉塞して換気が低下し、ひどいいびきを特徴とする閉塞型(OSAS:Obstructive SAS)に大別され、閉塞型が大半を占める。
国内でSASに保険適応があるのは炭酸脱水素酵素阻害薬のアセタゾラミド錠のみで、代謝性アシドーシスを起こして呼吸中枢を刺激し、換気量を増大させるが、効果は限定的である。
保険適応外使用ではOSAS対して、呼吸中枢刺激作用を有するテオフィリン、プロゲステロン誘導体(クロルマジノン酢酸エステル、メドロキシプロゲステロン)、ナロキソン塩酸塩、ドキサプラム塩酸塩、持続時間が長い無呼吸が集中するレム睡眠を抑制する三環系抗うつ薬(イミプラミン塩酸塩、クロミプラミン塩酸塩)やα2受容体アゴニストのクロニジン塩酸塩、脳幹部におけるセロトニン機構を介して、上気道開大筋活動と横隔膜の呼吸運動を促進するSSRIのパロキセチン塩酸塩水和物等が使用される。
さらに、交感神経活動あるいは圧受容体反射の抑制によるSASの改善を期待して、降圧薬であるβ遮断薬のメトプロロール酒石酸塩、ACE阻害薬のシラザプリル等が使用される。
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