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高齢者にメトグルコは危険?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約6分51秒で読めます.
5,668 ビュー. カテゴリ:高齢者にメトグルコは危険?
高齢者にメトホルミンは禁忌?
いまやDPP-4阻害薬が全盛ですが、メトグルコの処方も負けず劣らず、第一選択薬として使われております。
処方頻度が増えて、たくさんの人が使うようになると、危険な薬というイメージは薄れていく。
SU剤などの血糖降下薬よりも安全というイメージ。
以前のメトグルコと同一成分の薬「メルビン」は高齢者に禁忌でした。
同効薬のジベトスはいまだに高齢者に禁忌です。
高齢者とは65歳以上のこと。
メトグルコは高齢者には禁忌ではなくなりましたが、警告には以下の記載があります。
1.1 重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがあり、死亡に至った例も報告されている。乳酸アシドーシスを起こしやすい患者には投与しないこと。
1.2 腎機能障害又は肝機能障害のある患者、高齢者に投与する場合には、定期的に腎機能や肝機能を確認するなど慎重に投与すること。特に75歳以上の高齢者では、本剤投与の適否を慎重に判断すること。
75歳以上には要注意。
高齢者では、腎機能や肝機能などが低下していることが多く、乳酸アシドーシスが現れやすいので、メトグルコの投与前、投与中は定期的に腎機能や肝機能を確認しながら、慎重に投与すべきです。
乳酸アシドーシスの主な初期症状としては、
・悪心・嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸症状
・筋肉痛、倦怠感
・アセトン臭を伴わない過呼吸
などがあります。
少なくとも2~3か月に1回は計測し、状態が変化した場合は、随時、検査を追加する必要があります。
高齢者は筋肉量が低下しているので、血清クレアチニン値が正常であっても、実際は腎機能が低下していることがありますから、血清クレアチニン値だけではなく、eGFR値(推算糸球体濾過量)なども考慮し評価することが大切です。
高齢者といっても、腎機能や肝機能、認知機能などの低下度は一様ではないので、全身状態を総合的に判断する必要があります。
また、高齢者では薬の飲み忘れがみられますが、逆に過剰服用ということもあるので、医師・薬剤師の指示通り服薬可能な患者であるかどうかも見極めることが重要です。
摂食や摂水が不十分という時に、服薬を中止できるような判断ができるかどうかも考慮した上で投与すべきだと思います。
さらに、高齢者は容態が急変することもあるので、その点についても注意が必要です。
メトグルコは乳酸アシドーシスが怖い?
メルビンなどのビグアナイド系薬は、乳酸アシドーシスの副作用が怖いためにあまり処方されない時期がありました。
乳酸アシドーシスは予後が極めて不良な重篤な副作用であり、発症すると急速に進行し、致死率は50%~60%にのぼると言われています。
1970年代初頭にアメリカでビグアナイド剤の一つであるフェンホルミンの服用患者が乳酸アシドーシスによって死亡し、わが国でも重篤な乳酸アシドーシスが相次いだことから、フェンホルミンは発売中止となりました。
現在、わが国で用いられるビグアナイド剤はブホルミンとメトホルミンです。
この中で最もよく用いられるメトホルミンによる乳酸アシドーシスの出現頻度は10万人当たり約3人であり、フェンホルミンと比べると低いことが知られています。
適応症例を誤らなければ安全に使用することが可能です。
糖尿病で乳酸がたまる?
1970年代後半、米国で唯一用いられていたビグアナイド薬、フェンホルミンによる乳酸アシドーシスに起因した死亡が問題となってから、ビグアナイド薬の乳酸アシドーシスに対する過度の懸念が、わが国でも根強く残っています。
しかし、メトホルミンによる乳酸アシドーシスの出現頻度は10万人・年あたり約3人であり、フェンホルミンと比べると低いことが知られています。
乳酸アシドーシスは、循環不全などによる低酸素血症に続発するA型、循環不全はないものの糖尿病、肝疾患、悪性腫瘍など基礎疾患に続発するB1型、薬物や毒物に関連したB2型に分類されています。
乳酸アシドーシスはビグアナイド薬の糖うよによる特異的な副作用ではなく、様々な疾患や条件によっても起こり得るのです。
糖尿病では、インスリン作用不足のため乳酸が蓄積しやすい状態です。
前述したように、ビグアナイド系の薬剤は主に肝臓における乳酸からの糖新生を抑制することにより血糖を下げるため、ビグアナイド系の薬剤の投与によって乳酸が増加します。
通常はそれに応じて乳酸の代謝が増加し、乳酸値のバランスは保たれますが、肝臓の代謝能以上に乳酸が増加した場合や、肝臓での乳酸の代謝能が低下している場合にはこのバランスが崩れ、血液が酸性に傾く乳酸アシドーシスが発現するおそれがあるわけです。
このことから、肝硬変など肝機能障害が重度な方には禁忌となっています。
ただ、トランスアミナーゼの上昇のみという場合、あるいは脂肪肝やアルコール性肝障害が軽度であれば、使用することが可能だと考えられています。
一方、ビグアナイド系の薬剤は腎排泄であるため、腎障害がある場合には排泄が遅延し、過量投与と同様な状態となることから、乳酸アシドーシスの発現に注意する必要があります。
米国では血清クレアチニンが男性で1.5mg/dL以上、女性で1.4mg/dL以上の場合、メトホルミンの投与を禁忌としています。
日本では、はっきりした数値が決められていませんが、男性で1.3mg/dL以上、女性で1.2mg/dL以上の場合、投与を避けるのが安全ではないかと思います。
メトグルコの添付文書では、中等度以上の腎機能障害が禁忌と記載されています。
また、慢性の腎機能障害だけではなく、慢性の腎機能障害が急性増悪、もしくは急性の腎機能障害が起こったときに乳酸アシドーシスが発現する恐れがあります。
したがって、軽度の腎機能障害だったら安心という考え方ではなく、患者さんが急性の腎機能障害が起こり得るような状況にないかを判断し、急性の腎機能障害が起きた時には多直ちに服薬を中止するという服薬指導が大変重要です。
具体的な例として、高齢者の脱水が挙げられます。
感染症による下痢が原因で脱水状態になり、乳酸アシドーシスを起こした事例も報告されています。
造影剤検査でも一時的に腎機能が低下することがありますので、ヨード造影剤使用前後は休薬することが推奨されています。
さらに、乳酸が増加するということは、嫌気性のエネルギー代謝が増えるということですから、低酸素状態では乳酸アシドーシスが起こりやすくなります。
そのため、心不全や肺塞栓など、心血管系、肺機能に高度な障害がある患者さんいは禁忌となっています。
メトホルミンとフェンホルミン
メトホルミンとフェンホルミンの乳酸アシドーシスの発生率は、大きく異なっている。
フェンホルミンでの発生率は、年間10万人当たり20~60例とされているが、メトホルミンは1~7例とその発生数はかなり少ない。
この差の一因は、構造の違いにあるとされている。
メトホルミンが、末端アミノ基が2つのメチル基に置換されているのに対し、フェンホルミンは、末端アミノ基が1つのフェニルエチル基に置換されているため、極性が低くなる(水溶性の低下)。この構造の違いによって、フェンホルミンの脂溶性が高くなり、ミトコンドリア膜に結合しやすくなるため、乳酸アシドーシス発生率が高くなると考えられている。
フェンホルミンの使用が中止になった後、当時わが国で承認されていたメトホルミンの用量では血糖降下作用が弱かったこともあり、メトホルミンはインスリン分泌刺激薬によるコントロール不十分例または無効症例に、補助的あるいは限定的に用いられてきた。
しかし、1998年に英国で発表された大規模臨床試験UKPDSによりメトホルミンは肥満2型糖尿病の第一選択薬として推奨されたこと、さらに2002年には米国における大規模介入試験DPPで糖尿病新規発症予防効果が認められたことなどが契機となり、有用性が見直されることとなった。
さらに近年、ビグアナイド薬の多彩な薬理作用も明らかとなり、薬価が安く、費用対効果が高いことなども手伝って使用量が増加している。
メトグルコ錠500mg 3錠
1日3回毎食後 30日分
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
2 件のコメント
2型糖尿病を長く患っています。61歳です8/5からメトグルコ250mgを一カ月飲みました、クレアチニンの値と膵臓の値が上昇してしまいました。主治医は、気にしないで下さいと言うが気になっています。飲み続けて良い物か心配です。
コメントありがとうございます。
私には、検査値の変動が薬の追加によるものか、疾患によるものかの判断はしかねます。
膵臓の検査値というのが何を指しているのかはわかりませんが、腎機能は糖尿病や年齢によっても低下していきますし。
多少の副作用があっても、糖尿病の治療を優先すべき、という判断もありますし。
やはり医師の言葉を信じていただいたほうがいいのかと思いますが。