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腸溶錠は牛乳で飲んじゃダメ?
公開. 更新. 投稿者:服薬指導/薬歴/検査.この記事は約4分22秒で読めます.
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腸溶錠と牛乳
コーラックやスルーラックのように、ビサコジルを含む市販の便秘薬には「牛乳を飲んでから1時間以内の薬の服用を避けるように」との注意書きがあります。
胃で溶けず腸で溶ける腸溶錠である為、牛乳で飲むと腸溶コートがはがれます。
胃は酸性。
腸はアルカリ性。
牛乳はアルカリ性。
胃内で溶けると胃粘膜を刺激し、吐き気、胃痛などの副作用を発現します。さらに胃内で溶けてしまうことによって、本来の作用が弱まってしまいます。
医学事典
「その他、牛乳と薬物との関係では、牛乳のpHが6.4~6.8とされることから、腸溶錠の場合、牛乳中で剤皮が溶解する恐れがあります。」
アレ?pHが6.4~6.8って弱酸性じゃね?
そもそも腸のpHがアルカリ性ってわけじゃなく、弱酸性らしい。
水質に関するトピック:第5回 pHとは|東京都水道局
「なお、東京の水道水のpHは、平成16年度、平均7.6(6.7~8.4)でおおむね中性です。」
水道水のほうがむしろアルカリ性なんですけど。
大丈夫なのかな。
腸で溶けるには
腸溶性製剤は、pHの低い胃内では溶けずに、pHが高い腸内で溶けるようなコーティングが施されているため、胃内pHを上昇させる医薬品や食品と同時に服用すると製剤機能が失われる恐れがある。
医薬品を腸溶化する主な目的には、
①酸分解を抑制し薬効低下を防ぐ
②胃障害を低減する
③副作用を軽減して効果を長時間持続させる
などがある。
制酸剤など胃内pHを上昇させる医薬品や食品との併用可否を判断する際には、これら製剤化の目的に影響が出るかどうかについても考慮する必要がある。
例えば、腸溶性製剤をPPIやH2受容体拮抗薬と併用する場合、胃内pHの上昇により腸溶性は損なわれるが、胃酸分泌抑制作用により腸溶性製剤の酸分解や胃障害は軽減される。
腸溶錠の添加物
腸溶錠の添加物 | 腸溶性医薬品の例 |
---|---|
セラセフェート(酢酸フタル酸セルロース) | アザルフィジンEN錠、エリスロシン錠 |
メタクリル酸コポリマーLD(pH5.5以上で溶解) | アデホスコーワ腸溶錠、エピプロスタット配合錠DB、MDSコーワ錠、オメプラゾール腸溶錠、カルフェニール錠、バイアスピリン錠 |
ヒプロメースフタル酸エステル | オフタルムK錠、オメプラゾン錠、チスタニン糖衣錠、パリエット錠 |
コーラックとカマを併用しちゃダメ
コーラックは第二類に分類される医薬品です。
主成分はビサコジルで一晩のうちに腸の蠕動運動を促して便秘を解消するお薬です。
コーラックは5層コートの腸溶錠であり、胃内の高いpHでは溶解せず、腸のpHで溶解するように設計されています。
コーラックは、腸内で溶解するように最適化されていますので、食後すぐや制酸剤との併用によって胃内のpHが腸のpHに近づいたり、牛乳に含まれている脂質によってコーティングの膜が溶けたりすると、胃で主成分が溶解してしまい、効果が得られないばかりか、嘔吐や下痢といった消化器症状が起こる可能性があります。
酸化マグネシウムは制酸作用も有しているので、酸化マグネシウムとコーラックの同時服用は避ける必要があります。
また、他の制酸剤や牛乳を飲む場合にも、飲んでから1時間以内はコーラックの服用を避けるよう指導することも大切です。
腸溶性製剤の相互作用回避
腸溶性製剤に対する一般的な注意として、服用の際にかみ砕かないように指導する。
また、制酸剤や牛乳、乳製品は、服用・摂取により胃酸を直ちに中和して胃内pHを上昇させるので、原則として腸溶性製剤との同時服用を避けるよう伝える。
服用間隔は内服後の薬剤の胃内残存量を目安とする。
一般に、健常人が固形食を食べた場合、約2時間で内容物の2分の1が胃から排出されるが、直径2mm未満の顆粒は食後服用ですぐに食物と混ざり、1時間で約50%が胃から排出されることが示されている。
顆粒制酸剤の水酸化アルミニウムゲル・マグネシウム配合剤(マーロックスほか)や、液体である牛乳は後者に該当するため、服用時点を1時間ずらせば相互作用は回避できると考えられる。
牛乳で服薬
毎朝牛乳を飲むついでに薬も飲む。
胃が弱いので、痛み止めを牛乳で飲む。
痛み止めなら問題ない。
しかし、牛乳で飲むことで効果に影響が出る薬があります。
牛乳と相互作用
風邪などで処方されることもある抗生物質は牛乳で飲むことは避けたほうがいい。
抗生物質の中で、テトラサイクリン系とニューキノロン系と呼ばれる抗生物質は吸収に影響が出ます。
それ以外にセフゾンという抗生物質でも影響があります。
これらの薬は牛乳に含まれるカルシウムや鉄とくっついてしまうのです。
そのために吸収されず体の中に入らないので、効果が出ません。
その他に、胃酸で溶けないで腸で溶けるようにコーティングしてあるような腸溶性製剤は、牛乳の摂取により胃内pHが上昇してしまい、十分な効果が得られないこともあるので注意が必要です。
薬を飲む時間と牛乳を飲む時間を2時間くらい空ければ影響が出ませんので、間違って牛乳を飲んでしまった場合はしばらく飲むのを待ちましょう。
アルカリイオン水での服薬はダメ?
pHが高いことによって、薬の溶解、吸収に影響が出ること、ミネラル分を多く含むので相互作用が出ることなどが懸念されます。
実際にはほとんど影響が無いと言われていますが、肯定するデータが揃っていないので、アルカリイオン水での服用は避けたほうがいいでしょう。
テオフィリンを牛乳で飲んじゃダメ?
テオフィリン徐放性製剤は、牛乳により徐放性が損なわれて血中濃度が低下する可能性が指摘されている。
牛乳に含まれる成分が製剤中の速効性および徐放性部分からのテオフィリンの溶出を遅延するためと考えられており、牛乳や乳製品で服用することは避けるように指導する必要があるという。
添付文書にはそのような記載はありません。
ただ、テオフィリン製剤は血中濃度を一定に保つために、徐々に放出されるようにしてある薬です。
食事内容によっても影響を受ける可能性がある。
腸溶製剤やpH依存性徐放錠は、牛乳と同時飲用すると、製剤学的特質を損なう可能性があるため、避けることが望ましい、と。
テオフィリン徐放錠を牛乳で服用した場合に、血中濃度が約1~2割低下したという症例の報告もある。
ドライシロップもそうなのだろうか。
子供だと色んなものに混ぜて飲ませてそうだけど。
参考書籍:日経DI2007.4、クレデンシャル2012.6
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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