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めまいにヒスタミンが効く?
公開. 更新. 投稿者:めまい/難聴/嘔吐.この記事は約4分28秒で読めます.
3,505 ビュー. カテゴリ:めまいとヒスタミン
めまいに抗ヒスタミン薬が使われるのはなぜ?
抗めまい薬として使われる薬には以下のようなものがある。
分類 | 商品名 | 一般名 |
---|---|---|
交感神経刺激薬 | イソメニール | dl-イソプレナリン塩酸塩 |
抗ヒスタミン薬 | トラベルミン | ジフェンヒドラミンサリチル酸、ジプロフィリン |
脳血管拡張薬 | メリスロン | ベタヒスチンメシル酸塩 |
セファドール | ジフェニドール塩酸塩 | |
脳循環代謝改善薬 | アデホス | アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物 |
セロクラール | イフェンプロジル酒石酸塩 | |
ケタス | イブジラスト |
めまいの原因は何か?
脳梗塞や低血圧など循環器系の異常が原因のものもあるが、メニエール病や良性発作性頭位めまい症といった耳が原因のものも多い。人間は内耳で平衡感覚を保っている。三半規管という場所ですね。
また、原因がわからないものも多い。更年期障害や自律神経失調症と診断されるけど、結局「わからない」ということだ。
治療薬として、脳や耳の血流を改善するような薬が処方されたりする。1週間くらいしてめまいが治まった人が「薬が効いた」と思うかも知れないが、大半は時間が経って治まっただけだろう。
プラセボかも知れない。プラセボだっていい。症状が治まれば。
薬剤師はプラセボを最大限発揮させるために、説明しなければならない。
ということで、気になる2つの薬。
トラベルミンとメリスロンの関係。
トラベルミンは配合剤であるが抗ヒスタミン薬が主な薬効。メリスロンはベタヒスチン(beta-histine)という名前からも連想できるが、ヒスタミンと似た成分である。
めまいに対するヒスタミンの投与は、1939 年Hortonらが血管性頭痛に有効であった経験をヒントに、めまいに対して投与したのに始まり、米国において盛んに用いられていました。
しかし、ヒスタミンは腸内のヒスタミナーゼにより分解されるため、内服では全く無効でした。
その後、研究開発が進められ、内服でも分解されないベタヒスチンが開発されました。
ヒスタミンはH1受容体に作用して嘔吐中枢や前庭器に作用するのでH1受容体を拮抗させると嘔気やめまいは軽減する、という認識なのだが、めまいにヒスタミンが効くとはこれいかに?
チーズとかワインに含まれるヒスタミン、チラミンは血管を拡張して頭痛を起こすと考えられるが、ヒスタミンが血管性頭痛に有効であったという点からしてよくわからない。
しかし、抗ヒスタミン薬による副作用でめまいを起こすことを考えると、ヒスタミンのほうがめまいに効きそうな気もする。
結局、ベタヒスチンの作用機序も不明なのでわからない。めまいの原因も様々なので、血流をよくすれば改善するのかどうかも定かでないが、一般的に「めまい、ふらつき」を起こす誘引は脳貧血のイメージが強いので、抗めまい薬=血流改善作用を説明するのがよいのだろう。
メリスロン
日本で最も一般的に使われている抗めまい薬です。海外ではベタヒスチン二塩酸塩が使用されています。ベタヒスチンメシル酸塩のRCTでは、メニエール病において少なくとも1日あたり24mg以上の服用でプラセボに対するめまいへの有効性が示唆されています。また副作用が多いという印象はありません。
James AL, Burton MJ.Betahistine for Menière’s disease or syndrome.Cochrane Database Syst Rev. 2001;(1)
薬理作用はヒスタミンH1受容体作動作用とH3受容体拮抗作用です。H1受容体作動作用によって脳や内耳の血管を拡張させ、H3受容体拮抗作用で前庭機能の左右差で生じる興奮性のアンバランスを調整することで症状を緩和していると考えられています。
副作用は稀ではありますが、吐き気や嘔吐、発疹などがみられることがあります。
めまいに対する明確な予防効果が確立されている薬ではないので基本症状がなくなれば飲む必要はありません。
セファドール
ベタヒスチンとともに抗めまい薬として、よく使用されています。薬理作用としては、延髄にある嘔吐中枢を抑制することにより、前庭性嘔吐を含む様々な嘔吐を抑制します。このため海外では制吐薬としての適応もあります。比較的短時間で効果が出るので、眠気の少ない、めまい時の頓服としても利用可能で、めまいの原因疾患にかかわらず効果が期待できます。
副作用は抗コリン作用による喉の渇きが比較的頻度が高いです。さらに抗コリン作用があるため緑内障や前立腺肥大症の病気にかかっている方は症状を悪化させる恐れがあり注意が必要です。
ジフェニドールにはめまいの予防効果はありません。喉の渇きの副作用も強く出ることがあるので、ダラダラ飲み続けることはおすすめできません。症状がなくなった時点で中止するのが望ましいです。
アデホス
ATPは体内ですぐにアデノシンになり、プリン受容体を介して血管を拡張させます。これにより椎骨動脈の血流を増加させ内耳の血流循環を改善させることが知られています。
イソバイド
浸透圧利尿薬という分類の薬です。内リンパ水腫が原因となるメニエール病などが適応になります。ブーンという低音の耳鳴りが数時間続くようなめまいであればメニエール病の可能性が高く効果も期待できます。一方で、内リンパ水腫のない他のめまいには無効です。イソソルビドの長期投与は血漿浸透圧を上昇させ、ストレスホルモンの一つである抗利尿ホルモン(ADH)を上昇させるとの報告があります。ADHは近年、メニエール病の発生機序としての関与が示唆されているため、漫然とした長期投与は避けたほうが良いでしょう。
トラベルミン
血液脳関門を通過する抗ヒスタミン薬です。脳幹にある嘔吐中枢に作用してめまいに伴う吐き気や嘔吐を抑制します。
副作用には眠気があります。しかし、めまいの急性期では睡眠も回復のために重要な場合が多いのでこの眠気の副作用を利用することもあります。アレグラなど新しい抗ヒスタミン薬は脳に作用しないため眠気は誘発しないのですが、同様にめまいにも効果は期待できません。また、緑内障にかかっている患者さんには、緑内障を悪化させる恐れがあるため慎重に投与します。ただ、頓用で用いられることがほとんどなので問題になることは少ないと考えられます。
メイロン
めまいの発作の治療として注射で使用します。作用機序については明らかではありません。経験的に汎用されていますが、めまい症状の抑制効果については疑問視されるようなことはありません。メイロンは炭酸水素ナトリウムの濃度が下がると効果が減弱するとされているので、他の輸液や薬剤に混合して投与すると効果が少なくなるので注意です。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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