2025年8月21日更新.2,591記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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遮光保存すべき薬

遮光保存

みなさんの薬局ではどのくらい遮光保存に気をつけているだろうか?

添付文書上遮光保存となっている薬は、遮光袋に入れて保管しているだろうか?
引き出しに保管している薬なら箱に入っていなくても遮光は不要だろうか?

正直言って、どこまで遮光が必要なのかという判断は難しいだろう。

昔はPTPシートの色が赤ければ遮光保存だろう、と注意していたが、現在では透明のPTPシートでも遮光になっているものもある。

添付文書上「遮光保存」となっている薬は、極力遮光袋に入れているが、処方頻度の高い薬だといちいち袋に戻すのが手間になる。

私の中で、絶対遮光保存したほうがよい薬、というのがある。

それは、「変色する薬」である。
変色するだけで、含量に変化はみられない、という薬であっても変色することが問題なのである。変色が患者に与える印象は大きい。

レザルタス、メキシチール、フルイトランなど、変色の強い薬は必ず遮光袋に入れるようにする。

光によって大幅に含量が低下する薬。。。というのは知らないので、あれば教えてほしい。

薬は光で分解される?

湿気や熱の影響は容易に想像できます。
例えば、パソコンが水に濡れたり、高熱の場所に置かれたりすれば壊れてしまうかも知れないと思います。

しかし光で物が壊れてしまうかも、とは考えません。

薬の成分には、湿気や熱に弱いものだけでなく、光に弱いものもあります。

光の影響でどのくらい分解されるかはわかりませんが、遮光保存が指示されているものはある程度分解されるのでしょう。

苛酷試験では光の影響単独で試験しているので、それに熱や湿度が加わった真夏の炎天下は苛酷試験以上に苛酷です。
気をつけましょう。

光の影響を受ける薬?受けない薬?

ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗剤では、ジヒドロピリジン環が光エネルギーを吸収すると容易にピリジン環に変換されることが知られています。そのため、カルブロックなどの添付文書の取扱い上の注意には、開封後も遮光して保存することと記載されています。

一方フルイトラン錠も淡赤色の外観が光により退色することがありますが、これは、成分中の赤色3号と呼ばれる添加物が光により変化するためで、主薬の含量に影響はないとされています。

そのほか、光や湿気の影響を受けやすい薬として、バクシダールなどのニューキノロン系抗菌剤、メチコバールなどのビタミンB12製剤、ワンアルファなどのビタミンD3製剤、パーロデルなどのパーキンソン病治療薬などが知られています。

貯法に「遮光保存」と記載されている薬は意外と多く、インタビューフォームを見て調べてもほとんど影響無いんじゃないかと思われるものも多い。

引き出しに保管していれば問題は無いのだろうが、棚に保管してある場合は、可能な限り100錠包装で購入して箱ごと棚に置いておいたほうが無難かも。

光を避けて保存すること

貯法で「遮光保存」と記載されていない薬でも、取扱い上の注意に「光を避けて保存すること」と記載されている薬がある。

リフキシマ錠200mgは、貯法に、

気密容器,室温保存
(「取扱い上の注意」の項参照)

と書かれており、指示通り「取扱い上の注意」を参照すると、

開封後は湿気,光を避けて保存すること.

と書かれていた。
なんだこの、答えは裏側、みたいなまどろっこしい書き方は。

SPトローチ0.25mg「明治」も貯法に、「室温保存(「取扱い上の注意」の項参照)」
取扱い上の注意に「アルミピロー開封後は、光を避けて保存すること。」と書かれている。

ナトリックス錠2は貯法に、「気密容器・室温保存」とだけ。
取扱い上の注意に「光によりわずかに退色(有効成分の含量に影響はない)することがあるので、開封後は光を避けて保存すること。」と書かれている。

そもそも、「開封後は」ってなんだ?
開封前から光を避ける必要のある薬なんてあるのか?
と、いちゃもんをつけたくなる。

ループ利尿薬と遮光保存

三和化学研究所のホームページに以下のような資料があった。

ループ利尿薬といえば、ラシックス、ルプラック、ダイアート。

ラシックスの貯法は「遮光して室温保存」
ルプラックの貯法は「室温保存」
ダイアートの貯法は「室温保存」

ダイアートだけじゃなくて、ルプラックも遮光しなくていい。

では、これはラシックスに対する優位性を示したかったものなのか?

というよりも、ジェネリックのアゾセミド錠30mg「JG」に対する優位性を示したかったものだと思われる。

先発のダイアートは遮光保存ではない、にも関わらず、ジェネリックのアゾセミド錠「JG」の貯法は、「遮光保存、室温保存」と書かれている。

アゾセミド「JG」のインタビューフォーム1)には、

苛酷試験の結果,光により分解物の増加が認められること及びアゾセミドの貯法が遮光保存であることから,貯蔵方法に「遮光保存」の条件を付した。

と書かれている。
アゾセミドの貯法は遮光保存なのらしい。ダイアートが特別ということなのだろうか。
ダイアートのインタビューフォームをみると、苛酷試験でも類縁物質の増加はみられたが、規格範囲内のようだ。

遮光保存のためアゾセミド「JG」にはバラ包装がない。ダイアートにはバラ包装がある。

ダイアート錠60mgは以前は赤色のPTPシートでしたが、添加物を光の変色に強い三二酸化鉄に変更したため、無色透明のものに変更されたという。30㎎は以前から遮光保存ではなかったようだ。

バラクルードは遮光保存?

バラクルードは2015年7月に添付文書が改訂され、遮光保存となった。

この度、弊社製品であります、B 型肝炎ウイルスの増殖抑制薬「バラクルード錠0.5mg」(承認番号:21800AMX10614000)のPTP 包装された製品が長時間光に当たった場合、純度試験(類縁物質)が承認規格を満たさない可能性がある事が判明いたしました。
従いまして今後、箱を開封した後のPTP 包装された製品は、遮光保存をお願い申し上げます。なお、当該製品の箱を開封して光が当たった可能性のある製品については、交換させて頂きたいと存じます。

バラクルード錠0.5mg の「遮光保存」に関するお願い

交換まで行うという対応は異例。
それほど光によって劣化するのか?と思い見てみると、

承認申請時には未包装の錠剤に対する光安定性試験を実施し、今回問題となっている類縁物質が発生しないこと等、品質に影響がないことを確認し、光に対して安定であると判断していました。このため、当該製品を遮光保存とはしておりませんでした。

しかしながら、当該製品のPTP シートの変色に関する苦情を受けており、錠剤の変色も懸念されるとのお申し出がありました。これを受けて弊社は、PTP 包装された当該製品への光の影響を確認するため、光安定性試験を実施いたしました結果、照度120 万Lux・hr + 総近紫外放射エネルギー200W・hr/m2(一般的な薬局の明るさとされている500Lux の部屋で24時間光を当て続けた場合の100 日間に相当する)の条件において、純度試験(類縁物質)が、承認規格(0.5%以下)を満たさない結果(0.67%:N=3 の平均)となりました。
なお、箱に入っている製品の光安定性試験結果は承認規格内であり、品質に問題の無いことが確認されております。

光の影響を受けて増加する類縁物質は、有効成分のエンテカビル水和物と錠剤のコーティング剤に使用されている成分が光により分解した物質と反応して生成した物質であると特定しております。この物質の人体への影響は、極めて少ないと判断しており、これに起因する重篤な健康被害が発生する可能性は低いと考えております。なお、現在までに本件に起因する健康被害の報告は受けておりません。また、有効成分含量は承認規格の範囲内であることを確認しており、有効性に影響を及ぼす可能性は無いと考えております。

変色があるかも知れないけれど、有効成分の含量は規格範囲内で問題は無い。
薬局内では箱に保管して、長期処方でもされていない限りは大して問題無さそうな気がする。
とりあえずメーカーからもらった遮光袋をつけて渡しますが、処方の長期化に伴い、遮光袋に入れて渡したほうが良い薬はもっと他にもあると思われる。

参考文献
1)アゾセミド「JG」 インタビューフォーム

2 件のコメント

  • 匿名 のコメント
         

    アミノフィリン注と生食混注
    遮光必要ですか

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    病院勤務経験無いので知識がありません。

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