記事
調剤時の取り扱いに注意する薬
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約5分55秒で読めます.
4,849 ビュー. カテゴリ:危険な調剤
調剤事故による健康被害、ではなく、調剤そのものによる健康被害、つまり調剤者が受ける健康被害のリスクについて。
調剤時に注意すべき薬には以下のような薬がある。
医薬品 | 添付文書の記載 |
---|---|
アボルブ | 本剤は経皮吸収されることから、女性や小児はカプセルから漏れた薬剤に触れないこと。漏れた薬剤に触れた場合には、直ちに石鹸と水で洗うこと。 |
ウインタミン細粒 | 調剤時:ときに接触皮膚炎等の過敏症状を起こすことがあるので,本剤を取り扱うときにはゴム手袋等を使用するなど,直接の接触を極力避け,付着のおそれのあるときはよく洗浄すること。 |
サレドカプセル | 服用時にはカプセルは開けずに服用するよう患者を指導すること。また、やむを得ず本剤を脱カプセル調剤する場合には、医療関係者の曝露を防止するために安全キャビネット内で調製を行うこと。 |
ニューレプチル | 調剤時 ときに接触皮膚炎等の過敏症状を起こすことがあるので、特に細粒剤を取り扱うときにはゴム手袋等を使用するなど、直接の接触を極力避け、付着のおそれのあるときはよく洗浄すること。 |
パンクレアチン | 投与に際しては、粉末を吸入しないように注意すること。〔本剤の吸入により気管支痙れん、鼻炎をおこしたとの報告がある。〕 |
ヒルナミン | 調剤時:ときに接触皮膚炎等の過敏症状を起こすことがあるので,特に散剤・細粒剤を取り扱うときにはゴム手袋等を使用するなど,直接の接触を極力避け,付着のおそれのあるときはよく洗浄すること |
プロペシア | 本剤を分割・粉砕しないこと。 本剤が粉砕・破損した場合、妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳中の女性は取扱わないこと。本剤はコーティングされているので、割れたり砕けたりしない限り、通常の取扱いにおいて有効成分に接触することはない。 |
催奇形性があり女性が触ると危険なものだったり、粉塵によるアレルギー、摂食性皮膚炎などのリスクがあるものがある。
ヒルナミンとかウインタミンとか何にも気にせず調剤してますが。
薬塵によるアレルギー
散剤の調剤をするとき、細かい粉だと舞って、くしゃみ・鼻水で大変な思いをすることがある。
そのため、基本的にマスクをして調剤をしている。
散剤台に集塵機が付いているものもあるので、集塵機のスイッチをオンにして調剤する。
頻繁に手洗いとうがいをする、などの対応が必要になる。
とくに注意を要する散剤として、「パンクレアチン」がある。
添付文書には、以下のような注意書き1)がある。
投与に際しては、粉末を吸入しないように注意すること。
〔本剤の吸入により気管支痙れん、鼻炎を起こしたとの報告がある。〕
意外と怖いですね。
また、散剤による接触性皮膚炎というのもある。
「ウインタミン細粒」の添付文書には以下のような注意書きがある。
調剤時:ときに接触皮膚炎等の過敏症状を起こすことがあるので,本剤を取り扱うときにはゴム手袋等を使用するなど,直接の接触を極力避け,付着のおそれのあるときはよく洗浄すること。
同じく精神系の「ニューレプチル」の添付文書にも同様に以下の注意書きが書かれている。
調剤時
ときに接触皮膚炎等の過敏症状を起こすことがあるので、特に細粒剤を取り扱うときにはゴム手袋等を使用するなど、直接の接触を極力避け、付着のおそれのあるときはよく洗浄すること。
帽子をかぶって、マスクをして、手袋をして調剤する姿は、無菌調剤室でもなければ見かけない完全防備ですが、体質によってはそうしたほうが良いのかも。
精神科の門前で働く人たちは、アレルギーもそうですが、微量の薬でも毎日吸い込むことによって向精神薬の影響が現れてきそうな怖さもあったりなかったり。
プロペシアを妊婦に触らせてはいけない?
前立腺肥大症治療薬のアボルブ、脱毛症治療薬のプロペシア、ザガーロは、男性ホルモンの一種であるテストステロンをジヒドロテストステロンに変換する酵素を阻害する5αリダクターゼ阻害薬です。
男の子を妊娠している女性の体内にこれらの有効成分が入ると、それが口から入った場合であっても、皮膚に付着して吸収された場合であっても、男の子の生殖器に異常を起こすおそれがあると言われています。
プロペシアの重要な基本的注意には以下のことが書かれている。
①本剤を妊婦に投与すると、本剤の薬理作用(DHT低下作用)により、男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがある。
②本剤を分割・粉砕しないこと。
本剤が粉砕・破損した場合、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人および授乳中の婦人は取り扱わないこと。
本剤はコーティングされているので、割れたり砕けたりしない限り、通常の取り扱いにおいて有効成分に接触することはない。
フィナステリドを用いた生殖発生毒性試験において、雄性胎児外部生殖器の雌性化が認められている。
本剤は女性への適応を目的としておらず、また、妊婦または妊娠している可能性のある婦人および授乳中の婦人についてはとくに禁忌となっている。
本剤に曝露された場合の経皮的な吸収の程度は明らかでなく、その結果生じる男子胎児および乳児への危険性を否定できないため、妊婦または妊娠している可能性のある婦人および授乳中の婦人は、粉砕または破損した本剤の取り扱いを避けるべきである旨が明記されている。
本剤はその有効成分に触れることのないよう、フィルムコーティングされているが、(故意であれ、偶発的であれ)割れたり砕けた場合、有効成分に曝露される可能性があるので十分に注意する必要がある。
アボルブと女性
アボルブなどの5αリダクターゼ阻害薬は抗アンドロゲン薬と比べ、中枢性の副作用である性機能の低下の頻度が少ないとされています。
アボルブは、女性の使用が禁忌である。
また、小児に対する有効性および安全性が確認されていないため、小児の使用も禁忌とされている。
これは、動物実験で雄胎児の外性器雌性化が認められたことや、妊婦への暴露により血中ジヒドロテストステロンが低下し、男子胎児の外性器の発達を阻害する可能性があることが指摘されているためである。
同薬は経皮吸収され、消失半減期は89~174時間と長いことから、添付文書には「女性や小児はカプセルから漏れた薬剤に触れないこと。漏れた薬剤に触れた場合には、直ちに石鹸と水で洗うこと」という記載がある。
女性は触れないこととなっているが、妊娠・出産の可能性の無い女性であれば触れても問題ないハズである。
しかし、その線引きは難しいので全ての「女性」は触れないこととなっているのであろう。
プロペシアは粉砕不可?
MSDからプロペシアの適正使用のお願い、が来ております。
― 錠剤を分割・粉砕しないこと! ―
(分割・粉砕した本剤に妊婦が接触した事例がありました)
「使用上の注意」の項で、本剤を分割・粉砕しないよう注意喚起しておりますが、分割・粉砕して服用している事例が集積されており、その中には妊娠している方を含む女性が分割・粉砕した粉に接触した事例も報告されております。妊婦が本剤の有効成分を吸収すると、本剤の薬理作用(DHT低下作用)により、男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがあります。
本剤を分割・粉砕しないよう、調剤される方や患者様へ再度ご注意下さいますようお願い申し上げます。
1mg錠と0.2mg錠の有効性に差がなかったという話もあり、どっちの価格も参考薬価¥250/錠なので、1mgを半分に割る、ということをしている人は多いかも。
中には粉砕して1/5量をちまちま飲んでる人もいるんだろうな。
高いから、そうしたい気持ちもわかりますけど。
0.2mgを1錠50円で売ってくれればいいのにね。
プロペシアは妊婦に禁忌です。
プロペシアを妊婦に投与すると、DHT低下作用により、男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがあります。
男性の脱毛症にしか適応が無いので、妊婦に処方する医者はいないかと思いますが。
注意したいのが、皮膚からの吸収です。
この薬をもし女性が触ってしまったら、胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。
通常の取扱いにおいては、コーティングされているので問題はありませんが、割ったり砕いたりした場合、有効成分に接触する恐れがあります。
もし妊娠中の女性薬剤師がプロペシアを粉砕して、有効成分に接触してしまったら・・・
という恐れもあるので、粉砕は不可。
参考文献
1)パンクレアチン 添付文書
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。