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複合ビタミン剤の成分知ってますか?
公開. 更新. 投稿者:栄養/口腔ケア.この記事は約2分20秒で読めます.
4,904 ビュー. カテゴリ:複合ビタミン剤の成分、知ってますか?

「ノイロビタン?アリナミン?……まぁビタミンB群でしょ」
そう思って、何となく調剤していませんか?
複合ビタミン剤は、風邪や末梢神経障害、皮膚炎、口内炎、栄養補給など様々な目的で頻繁に処方されます。しかしその反面、「有効性が曖昧」「似たような薬が多く内容を把握していない」「気付かぬうちに重複投与」といった落とし穴が潜んでいます。
よく処方されるビタミン剤の成分一覧
分類 | 医薬品名 | 成分 |
---|---|---|
ビタミンB1製剤 | アリナミンF | ビタミンB1(フルスルチアミン) |
ビタミンB2製剤 | フラビタン | ビタミンB2(フラビンアデニンジヌクレオチド) |
ハイボン | ビタミンB2(リボフラビン) | |
パントテン酸製剤 | パントシン | ビタミンB5(パンテチン) |
ビタミンB6製剤 | ピドキサール | ビタミンB6(ピリドキサール) |
ビタミンB12製剤 | メチコバール | ビタミンB12(メコバラミン) |
複合ビタミン製剤 | ノイロビタン | ビタミンB1(オクトチアミン)・ビタミンB2(リボフラビン)・ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)・ビタミンB12(シアノコバラミン) |
ビタメジン | ビタミンB1(ベンフォチアミン)・ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)・ビタミンB12(シアノコバラミン) | |
ビタノイリン | ビタミンB1(フルスルチアミン)・ビタミンB6(ピリドキサール)・ビタミンB12(ヒドロキソコバラミン) | |
パンビタン | ビタミンA(レチノール)・ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)・ビタミンE(トコフェロール)・ ビタミンB1(チアミン)・ビタミンB2(リボフラビン)・ビタミンB6(ピリドキシン)・ビタミンB12(シアノコバラミン)・ビタミンC(アスコルビン酸)・ニコチン酸アミド・葉酸・パントテン酸 | |
ビタミンC製剤 | シナール | ビタミンC(アスコルビン酸)・ビタミンB5(パントテン酸カルシウム) |
ビタミンE製剤 | ユベラ | ビタミンE(トコフェロール) |
疑義照会や査定リスクに注意
複合ビタミン剤の多剤併用には、以下のようなリスクがあります:
● 疑義照会される主な理由
・明確な投与目的がない(「ビタミンだから…」は通用しない)
・同系統ビタミン剤の併用
・頓用と常用で併用されているが、説明がない
● 査定される可能性のあるケース
・B₆重複(高用量で末梢神経障害の副作用リスクあり)
・単味製剤との重複(フラビタン+ノイロビタンなど)
複合ビタミン剤の併用は、成分の重複による副作用や、目的不明な漫然投与として疑義照会や査定の対象になる可能性があります。処方意図の確認と薬歴記載を徹底し、必要性の根拠を明確にすることが重要です。
市販薬や栄養ドリンクとの併用にも注意
患者さんによっては、処方薬に加えて市販の栄養ドリンクやマルチビタミン剤を服用しているケースもあります。
・栄養ドリンク → B₁~B₆を中心に配合
・マルチビタミン → 上限超過の危険あり
・特にB₆は過剰で神経障害のリスクあり
⇒ 服薬指導では、追加のサプリ・市販薬の確認を忘れずに
ビタミン剤の重複による過剰症リスク
「ビタミンだから飲みすぎても大丈夫」そんな誤解が、過剰症を引き起こす原因になっています。
ビタミンには脂溶性(A・D・E・K)と水溶性(B群・C)がありますが、複合ビタミン剤に含まれるのは主に水溶性ビタミンです。一見、体に不要な分は尿中に排出されるため安全と思われがちですが、特定のビタミンでは過剰摂取による健康被害も報告されています。
特に注意すべきは、ビタミンB₆(ピリドキシン)です。末梢神経障害を引き起こす可能性があり、数ヶ月〜年単位で多量に摂取し続けた場合には、手足のしびれや感覚異常といった神経症状が現れることがあります。実際、処方薬と市販薬(サプリメントや栄養ドリンクなど)を併用していた患者で、副作用が発現した例も報告されています。
また、ナイアシン(ニコチン酸)は高用量摂取で皮膚の紅潮(ナイアシンフラッシュ)、肝機能障害、胃腸障害などを引き起こすことがあり、こちらも注意が必要です。
処方薬同士の重複だけでなく、患者が自己判断で市販のビタミン剤を追加しているケースも珍しくありません。服薬指導時には、食事・サプリ・ドリンクの摂取状況も含めて確認し、過剰摂取のリスクを回避することが求められます。
・ビタミン剤は「軽く見られがち」だが、重複投与や査定リスクは高い
・処方頻度の高い複合ビタミン製剤の成分構成は把握しておくべき
・同系統の成分が重なっている併用は、目的の明確化と記録が不可欠
・疑義照会・薬歴・服薬指導に活かせる知識として、日常的に確認を