2025年10月8日更新.2,645記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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タリージェとリリカの違いは?

末梢性神経障害性疼痛治療薬:タリージェとリリカの違い

末梢性神経障害性疼痛は、糖尿病性ニューロパチーや帯状疱疹後神経痛、坐骨神経痛など、多くの患者を悩ませる慢性疼痛の代表格です。通常の鎮痛薬(NSAIDsやアセトアミノフェン)では十分な効果を得にくいため、神経に直接作用する薬剤が必要になります。

その中で長年第一選択肢として用いられてきたのが リリカ(プレガバリン) です。そして2019年2月、新たに承認された タリージェ(ミロガバリン) が登場しました。両薬は作用機序が似ている一方で、適応症、副作用プロファイル、使い勝手などに違いがあります。両薬の特徴を整理し、現場でどう使い分けるべきかを考えていきます。

有効成分と作用機序の違い

リリカ(プレガバリン)
・有効成分:プレガバリン
・作用機序:電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットに結合し、カルシウム流入を抑制。結果として、興奮性神経伝達物質(グルタミン酸、サブスタンスPなど)の遊離を抑え、疼痛伝達を抑制する。
・特徴:ガバペンチンの改良版として登場し、世界的に使用経験が豊富。

タリージェ(ミロガバリン)
・有効成分:ミロガバリン
・作用機序:同じくα2δサブユニットに結合するが、特に疼痛伝達に関わる α2δ-1 への親和性が高く、鎮痛作用に関与しにくい α2δ-2 への親和性が低い。
・特徴:理論的には、鎮痛効果を維持しつつ中枢性副作用(めまい、ふらつき)を減らせると期待されている。

適応症の違い

リリカ
・神経障害性疼痛
・線維筋痛症に伴う疼痛
→ 適応が広い。中枢性神経障害性疼痛(脳卒中後痛、脊髄損傷後痛など)にも使える。

タリージェ
・末梢性神経障害性疼痛のみ
→ 帯状疱疹後神経痛や糖尿病性末梢神経障害性疼痛などに使用可能。
※今後の追加適応に期待されるが、現時点では中枢性疼痛や線維筋痛症には使えない。

用法・用量

リリカ
・通常、1日150mg~300mgを2回に分けて経口投与。
・最大600mg/日。
・腎機能低下例では減量が必要。

タリージェ
・初期:1回5mgを1日2回。
・1週間以上の間隔で5mgずつ漸増し、1回10~15mgを1日2回が常用量。
・漸増投与が必須であり、副作用を見極めながら増やしていく点が特徴。
・腎機能低下例では減量が必要。

副作用の比較

タリージェの臨床試験データ
・糖尿病性末梢神経障害性疼痛を対象とした試験(854例)
・副作用発現率:31.3%
・主な副作用:傾眠12.5%、めまい9.0%、体重増加3.2%

リリカの国内試験データ
・投与例302例
・副作用発現率:65.9%
・主な副作用:傾眠24.5%、めまい22.5%、浮腫17.2%

タリージェはリリカに比べ、副作用発現率が明らかに低い。特に高齢者では転倒リスクを下げられる可能性がある。

剤形・薬価・実務上のポイント

タリージェ
・剤形:2.5mg/5mg/10mg/15mgの錠剤。
・薬価:やや高め。後発品は未登場。
・調剤上の懸念:規格が細かく、在庫や調剤ミスのリスクがある。

リリカ
・剤形:カプセル、OD錠。
・薬価:後発品が出ており安価。
・OD錠は高齢者や嚥下困難患者に便利。

臨床現場での使い分け

第一選択としてのリリカ
・適応が広く、エビデンスも豊富。
・コストが安く、ジェネリックもある。

リリカで副作用が出た場合のタリージェ
・特にめまい・ふらつきでリリカを中止せざるを得なかった患者に。
・高齢者や転倒リスクがある患者にも選びやすい。

調剤・在庫面の課題
・タリージェは規格が細かく、薬局での扱いに注意。
・医師が細かく漸増していく処方を出すため、薬歴でのチェックも重要。

今後の展望

・タリージェは現在「末梢性神経障害性疼痛」のみの適応だが、中枢性疼痛や線維筋痛症への拡大が期待されている。
・臨床試験で副作用が少ないという結果がさらに積み重なれば、リリカからの切り替え需要が拡大する可能性が高い。
・一方で薬価や在庫の問題が解決しない限り、薬局現場での普及には一定の制約がある。

まとめ

・タリージェ(ミロガバリン)とリリカ(プレガバリン)は同系統の薬だが、適応、副作用、使い勝手に違いがある。
・リリカは適応が広く、コストが安いが、副作用が多い。
・タリージェは副作用が少なく高齢者に使いやすいが、適応が狭く薬価が高い。
・現場では「リリカで副作用が出た患者への次の選択肢」としてタリージェが処方されるケースが多い。

患者さんへの説明としては、

「どちらも神経の痛みに効く薬ですが、新しいタリージェは副作用がやや少ないと言われています。リリカでふらつきが強かった方などに向いています。」

と伝えると理解しやすいでしょう。

7 件のコメント

  • くぼちゃん のコメント
         

    タリージェは一包化の条件が厳しそうです

  • さくや のコメント
         

    タリージェ服用して4ヶ月ですが服用開始3日後眩暈吐気の副作用あり、主治医に報告・相談し0.5錠を朝夕食後に暫らく継続。症状治まり1錠を朝夕食後服用。それでも腰部から下肢の痺れ疼痛軽減せず2錠に増量しました。症状は少々治まりましたが体重増加(6㎏)常に倦怠感あります、主治医は体重増加症状の緩和のどちらの選択をするか?で現在のところ2錠でお願いしてます。漢方薬で症状の軽減できるでしょうか?

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    下肢のしびれ疼痛お辛いと思います。タリージェの副作用が気になるので、漢方薬を検討しているとお見受けいたしましたが、漢方薬がどの程度効くかはわかりません。
    お役に立てずに申し訳ありません。

  • さくや のコメント
         

    大変遅くなりましたが、ご返答ありがとうございます、季節的に毛髪の抜けるのが気になりますが最近それどころじゃない程の脱毛があり毛量が3分の2位になりました。これって副作用でしょうか?受診日は11月上旬ですので、主治医に相談しますが心配です。因みに数年前、スルピリド錠を服用し半年程で異常な脱毛があり服用中止となりました。薬剤には必ず副作用はあると思いますが下肢の痛みが酷い時は、ロキソニン錠を服用して過ごしています。介護職の「さくや」でした!

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    タリージェの添付文書上の副作用には毛髪関係のものは見られないので、恐らく関係ないとは思いますが。。。まだ判明していないものもあるかと思うので、医師の判断に従った方が良いでしょう。

  • やよい のコメント
         

    腰椎椎間板ヘルニアの手術を5月に受け、しびれだけがいまだに残り、プレガバリン75mgOD錠を服薬しておりましたが、7月上旬にタリージェ5mgに変更しました。でも、気持ち悪いし、ふわふわした感覚がひどく、先生に相談し結局プレガバリンに戻りました。タリージェはしびれに効いて良かったですけど、副作用が強かった・・・

  • コアラ のコメント
         

    リリカ200mgを朝夕2回飲んでました、1か月~2か月経過後夜中に左胸が苦しくなって、やめましたが朝だけ200mg飲むことにして夕方前後はデパス1~2mgにしてます。
    心臓検診しましたが、まあ問題なしということでした。ということはリリカのふくさようですか。

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