2024年12月2日更新.2,476記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ゾフルーザは耐性率が高い?

ゾフルーザ耐性インフルエンザウイルス

新規作用機序の抗インフルエンザ薬として、期待されているゾフルーザですが、耐性ウイルスが出やすいという話がある。

ゾフルーザ投与患者におけるアミノ酸変異(耐性)の出現率は、ノイラミニダーゼ(NA)阻害薬に比べてかなり高い。
A香港(H3N2亜型)では、成人の10人に1人、小児の4人に1人の割合で罹病期間が延び、小児では発熱期間も延びる。

ゾフルーザの添付文書にも耐性について以下のように書かれている。

12歳未満の小児を対象とした国内第III相臨床試験において,本剤が投与された患者で,投与前後に塩基配列解析が可能であった77例中18例(いずれもA型インフルエンザウイルス感染症患者)にバロキサビル マルボキシル活性体の結合標的部位であるポリメラーゼ酸性蛋白質領域のI38のアミノ酸変異が認められた。成人及び12歳以上の小児を対象とした国際共同第III相臨床試験において,本剤が投与された患者で,投与前後に塩基配列解析が可能であった370例中36例(A型インフルエンザウイルス感染症患者)にI38のアミノ酸変異が認められ,そのうち1例はA型及びB型インフルエンザウイルスの重複感染患者で,両型においてI38のアミノ酸変異が認められた。また,いずれの臨床試験においても,本剤投与中にI38のアミノ酸変異を検出した患者集団では,本剤投与から3日目以降に一過性のウイルス力価の上昇が認められた。

タミフルやラピアクタは1~2%の耐性率ということで、それに比べると相当高い。

体内でウイルスが増殖中に耐性ウイルスが増えていって、罹病期間が延びる。
耐性菌とか耐性ウイルスの問題は、社会的な影響を考えていましたが、個人の体内でも急速に耐性ウイルスが出来てしまうことによる影響というのがあるんだと思った。

タミフルなどのノイラミノダーゼ阻害薬は、ウイルスが細胞から出て周囲に広がるのを防ぐことで、ウイルスの増殖を抑えるという仕組み。
それに対しゾフルーザは、感染した人の細胞に入り込んだインフルウイルスが増殖するときの働きを阻害する仕組み。つまり細胞内で増殖するのを防ぐ仕組みだ。
ウイルスが体内から消えるまでの時間を比べたところ、タミフルの72時間後に対し、ゾフルーザは24時間後だったという。
よく効く薬は耐性ウイルスも出やすいということだろうか。
強いライバルがいるほど強くなるみたいな。

日本感染症学会のページには、

変異ウイルスは、Baloxavirに対する感受性が50倍程度低下するが、臨床効果への影響、周囲への感染性は、現在のところ不明である。今後の臨床症例を蓄積して、当薬剤の位置づけを決めていく必要がある。

と書かれている。
50倍低下というのは大きく感じるが、「感受性の低下幅は、比較的小さいもので、耐性というよりも、低感受性ウイルスという呼称が適切という考え方もある。」と書かれている。

確かに、耐性ウイルスというと、薬が効かないというイメージですが、低感受性といえばそれなりに効く気がする。

今後ゾフルーザの使用量が増えてくると、耐性ウイルスも増えてくるだろうし、あまりゾフルーザに処方が集中するのもよくないということで、処方に慎重になるのはよい傾向なのやも。

分類名商品名一般名適応症規格剤形用法用量
ノイラミニダーゼ阻害薬タミフルオセルタミビル塩酸塩A型又はB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防カプセル:75㎎
DS:3%
1回75mgを1日2回、5日間
リレンザザナミビル水和物A型又はB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防吸入:1BL 5㎎1回10mg(5mg×2BL)を、1日2回、5日間
イナビルラニナミビルオクタン酸エステル水和物A型又はB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防吸入粉末剤:20㎎
吸入懸濁用セット
40mgを単回吸入
ラピアクタペラミビル水和物A型又はB型インフルエンザウイルス感染症点滴静注液
RNAポリメラーゼ阻害薬アビガンファビピラビル新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)錠:200㎎1日目は1回1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回600mgを1日2回
キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬ゾフルーザバロキサビル マルボキシル〈ゾフルーザ錠20mg、ゾフルーザ顆粒2%分包〉
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防

〈ゾフルーザ錠10mg〉
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症
錠:10㎎、20㎎
顆粒分包:2%
80kg以上:20mg錠4錠又は顆粒8包
80kg未満:20mg錠2錠又は顆粒4包
M2蛋白阻害薬 シンメトレルアマンタジン塩酸塩パーキンソン症候群
脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下の改善
A型インフルエンザウイルス感染症
細粒:10%
錠:50㎎、100㎎
1日100mgを1〜2回

ゾフルーザはエンドヌクレアーゼ阻害薬?

話題のインフルエンザ治療薬ゾフルーザについて。

1回飲み切りで効く、経口インフルエンザ治療薬。
1回で効くといえばイナビルですが、吸入剤である点が難点。うまく使えない患者も多い。

その点では錠剤であれば、難なく飲める。

効能・効果は、A型又はB型インフルエンザウイルス感染症。
10mg錠と20mg錠がある。

ゾフルーザは用量に気を付ける必要がある。
小児と成人、体重によって投与量が異なるので、体重確認が必要になる。体重を伝えることに抵抗のある女性もあるが、そこは必要性を伝え聴取する。

成人及び12歳以上の小児には1回40mg(20mg 2錠)、ただし体重80kg以上は80mg(20mg 4錠)。
12歳未満の小児は、体重40kg以上で1回40mg(20mg 2錠)。体重20〜40kgで1回20mg 1錠体重10〜20kgで1回10mg 1錠

恐らく、イナビル、タミフル、リレンザを抑え、第一選択薬になるだろう。
ただ、シェアが急激に増えると、副作用も色々出てくる可能性はあるね。

バロキサビルマルボキシルの作用機序

2018年3月に発売されたゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)は、インフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害し、ウイルスのmRNA合成を阻害することで増殖を抑制する、新たな作用機序を有する抗インフルエンザ薬である。

ゾフルーザの一般名はバロキサビルマルボキシル。
作用機序は、エンドヌクレアーゼ阻害作用。
細胞内でのキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害することで、ウイルスのmRNAの複製段階においてその複製を阻止する。

タミフル・リレンザ・イナビルはノイラミニダーゼ阻害薬ですが、これらの薬は、ウイルスを感染細胞表面から遊離させるノイラミニダーゼの働きを阻害する、つまり、ウイルスを細胞内に閉じ込めてウイルスの拡散を防止する薬です。
それに比べて、ゾフルーザはウイルスの増殖そのものを阻害するため、より早い、より高い抗ウイルス効果が期待できる。

作用機序が違うのであれば、ノイラミニダーゼ阻害薬とゾフルーザの併用、なんて強業をする医師も出てきそうですが。

ゾフルーザは単独で使うべきではない?

インフルエンザ治療薬ゾフルーザで耐性ウイルスが相次いで報告されていることを受け、日本感染症学会は2019年4月5日、同薬を慎重に使うよう使用基準に関する提言を策定することを決めた。

インフルエンザに詳しいけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫参事は「重症患者やほかの薬に耐性がある場合に、併用してゾフルーザを使うことは有効だ」とした上で「軽症の外来患者に単独で使うべきではない」と述べた。

ゾフルーザ使用基準策定へ 耐性問題で感染症学会  :日本経済新聞

つまり、タミフルとかリレンザとかに併用する形でゾフルーザを処方するということか。

現状ではありえないだろう。

初回から抗インフルエンザ薬2種類処方することは無い。保険請求的にもひっかかかりそう、だけど、ガイドラインに記載されれば認めざるをえないのかも知れない。

タミフル耐性の仕組み

インフルエンザウイルスはまず、ウイルス表面にあるヘマグルチニンと、ヒトの細胞表面にあるシアル酸がくっつきます。
そしてウイルスが細胞の内部に侵入します。細胞の内部で増殖します。
増殖したウイルスが放出されて他の細胞にも感染しようとします。

しかし、はじめに感染した細胞の表面にはまだシアル酸が多数あるため、放出されたウイルスはまた同じ細胞に感染してしまいます。
これではそれ以上増殖することができません。

そこで働くのがノイラミニダーゼ。細胞表面にあるシアル酸を切り離す酵素です。
タミフルはこのノイラミニダーゼを阻害する薬です。
タミフルはシアル酸と似た構造でノイラミニダーゼとくっついて離れません。
そのためにウイルスが増殖できなくなる、というメカニズム。

耐性を獲得するために、ノイラミニダーゼの形を変えてタミフルとくっつきにくくしますが、それだとシアル酸ともくっつきにくくなってしまうので、通常感染力が低下します。が、感染が拡大しているという不思議。

ノイラミニダーゼの特定の3カ所に変異が起きることが原因という。
ノイラミニダーゼの274番目のほか、222番目と234番目のアミノ酸も変異したウイルスを細胞に感染させたところ、通常のウイルスと同等に増殖し、タミフルを加えても増え続けた。

リレンザ耐性ウイルスは出現しにくい

リレンザ耐性ウイルスが出現しにくい理由は、感染部位の薬剤の濃度の違いにあるといわれます。

リレンザは吸入により、MICをはるかに越えた濃度で感染部位に到達します。ウイルスが低濃度の薬剤にさらされて耐性化することがありません。

また作用機序の違いもウイルスの耐性化に影響していると言います。

タミフルとリレンザ、どちらもノイラミニダーゼ阻害薬ですが、リレンザは酵素の構造に変化を起こさないのに対し、タミフルの場合、 その結合により活性部位の構造を変化させ、新たな疎水ポケットを形成します。

この機序に関わるアミノ酸残基の変異が耐性獲得に繋がることが解っており、単純にはまり込むだけの機序であるリレンザと比べ、耐性化を起こしやすい原因の一つであると考えられています。


薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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