記事
ティーエスワンの涙目にソフトサンティアをジャブジャブ使う?
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約5分35秒で読めます.
3,417 ビュー. カテゴリ:ティーエスワンによる眼障害
ティーエスワンの副作用に、流涙(涙が過剰になってしまう状態)などの眼障害がある。
吐き気や下痢などに比べ、眼の異常は内服薬との関係を疑いづらいので、投薬時に注意喚起が必要である。
ティーエスワンにおける流涙は、角膜障害による涙液分泌亢進や涙道障害による涙液排出低下がその原因として疑われます。
角膜障害の原因として、フルオロウラシルは細胞分裂の盛んな細胞においてDNA、RNAの合成障害を引き起こすため、涙液中に分泌されたフルオロウラシルが、活発に分裂している角膜上皮細胞や輪部の角膜上皮幹細胞を障害することで発症すると考えられています1)。
また、涙道障害の原因として、フルオロウラシルを含んだ涙液が涙道を通過することで涙道粘膜の炎症、涙道扁平上皮の肥厚と間質の線維化をきたし、その結果涙道狭窄・閉塞が生じると考えられます2)が、完全には解明されていません。
角膜障害では流涙以外の症状として眼痛、異物感、視力低下、霧視などがあり、涙道障害では眼脂(めやに)などがあります。
眼科的処置として角膜障害に対しては、防腐剤を含まない人工涙液によりWash out (抗癌剤を洗い流す)を行います。障害の程度によっては抗菌薬やステロイドを投与することもあります。
涙道障害については、まず通水試験を行い、涙道の狭窄や閉塞の程度を調べます。軽度の場合には角膜障害の場合と同様に、防腐剤を含まない人工涙液によるWash outを行います。
「防腐剤を含まない人工涙液」というのは、市販のソフトサンティアのことです。
ヒアレインミニなどの防腐剤無添加使い捨て製剤でもいけるのかも知れませんが、ジャブジャブ洗い流す(Wash out)には適していない。
保険請求上も問題がありそうです。
また、洗い流すというとアイボンなどの洗眼薬がありますが、以外と色んな成分が入っているので、Wash outには適していません。
アイボンの成分
成分(100ml中) | 分量 | はたらき |
---|---|---|
イプシロン-アミノカプロン酸 | 200mg | 抗炎症作用 |
アラントイン | 30mg | 角膜修復作用 |
グリチルリチン酸二カリウム | 10mg | 抗炎症作用 |
クロルフェニラミンマレイン酸塩 | 3mg | 抗ヒスタミン作用 |
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6) | 10mg | 代謝促進作用 |
トコフェロール酢酸エステル | 5mg | 血行促進作用 |
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム | 50mg | 角膜保護作用 |
添加物として、ホウ酸、ホウ砂、ポリソルベート80、エデト酸Na、l-メントール、d-ボルネオール、pH調整剤を含有する。
ティーエスワンによる眼の異常に対して、ソフトサンティアをおすすめしてみる。
ティーエスワンで涙目?
ティーエスワンを飲むと涙が出るという患者がいた。
癌になったことがやっぱり悲しいんだな、と思っていたら、ティーエスワンの副作用に流涙というのがありました。
発現率としては結構多いようです。添付文書に「製造販売後に実施した切除不能又は再発胃癌症例を対象とした臨床試験のTS-1単独投与においては、流涙16.0%と副作用発現率が高かった。」と記載されている。
ティーエスワンにおける流涙は、角膜障害による涙液分泌亢進や涙道障害による涙液排出低下がその原因として疑われます。角膜障害の原因として、フルオロウラシルは細胞分裂の盛んな細胞においてDNA、RNAの合成障害を引き起こすため、涙液中に分泌されたフルオロウラシルが、活発に分裂している角膜上皮細胞や輪部の角膜上皮幹細胞を障害することで発症すると考えられています。また、涙道障害の原因として、フルオロウラシルを含んだ涙液が涙道を通過することで涙道粘膜の炎症、涙道扁平上皮の肥厚と間質の線維化をきたし、その結果涙道狭窄・閉塞が生じると考えられますが、完全には解明されていません。
TS-1|注意すべき自覚的副作用とその対応|流涙
抗癌剤は活発に分裂している細胞、骨髄とか毛根の細胞に影響を与えやすいが、角膜上皮細胞も活発に分裂している細胞の一つらしい。
角膜障害で涙液の分泌が亢進する。
また、ティーエスワンが涙道を刺激して炎症をきたして、涙道が閉塞する、などの原因が考えられる。
ティーエスワンの涙系の副作用としては、
重大な副作用に、「涙道閉塞(頻度不明)があらわれ、外科的処置に至った例が報告されている。流涙等の症状があらわれた場合には、眼科的検査を実施するなど適切な処置を行うこと。」との記載がある。
その他の副作用に、「0.1~5%未満 流涙、結膜炎、角膜炎、角膜びらん、眼痛、視力低下、眼乾燥」とある。
薬の副作用が原因であれば、減量または中止という手段が考えられるが、物が物だけに流涙程度では服用継続させたいと思うかな。
とりあえず眼科を受診させて、角膜障害であれば、ドライアイに準じた治療を行うということになるのかも。
ティーエスワンと角膜障害
抗癌剤の副作用はターンオーバーの早い器官で起こりやすい。
骨髄、毛、皮膚、爪など。
眼の角膜上皮もターンオーバー速い組織であり、約1週間程度で入れ替わるといわれている。
ティーエスワンの角膜障害に対し、ヒアルロン酸点眼液が処方される。
また、涙液中の傷害性物質を洗い流すために、人工涙液点眼液(マイティア)も処方される。
ティーエスワンによる涙道障害にヒアルロン酸はNG?
TS-1による涙道障害の発症機序としては、テガフールから変換されたフルオロウラシルが涙液中に移行し、細胞分裂の活発な角膜上皮細胞や角膜上皮幹細胞を傷害することにより、角膜障害が発症し、涙液分泌亢進が起こることが原因の1つとされている。また、フルオロウラシルを含んだ涙液が涙道を通過することで、涙道粘膜の炎症、涙道扁平上皮の肥厚と間質の線維化を来し、涙道狭窄・閉塞が生じることで、涙液排出低下が起こるのではないかと考えられている。
軽症であれば、抗癌剤の成分を洗い流す目的で、生理食塩水または防腐剤なしの人工涙液(ソフトサンティア等)を1回2~3滴、1日6回以上点眼する。
ただ、ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアレイン)などの点眼液は、その粘稠性の高さから、抗癌剤成分を含有する涙液の停滞を起こし、角膜上皮障害を増悪させるので使用しない方が良い。防腐剤入りの点眼薬も、角膜障害を悪化させるリスクがあるため適さない。また水道水は、滅菌水ではないため、抗癌剤を洗い流す目的での使用は推奨されない。
参考文献
1)細谷友雅:抗癌剤による角膜および涙道の障害-Corneal and lacrimal ducts disorders associated with anticancer drugs-. 眼科 54 (1) 27-32. 2012
2)柴原弘明,久世真悟・他:S-1療法により流涙がみられた症例における眼病変の検討. 癌と化学療法 37(9)1735−1739,2010.
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
3 件のコメント
いつも大変勉強になる記事を更新していただいて、本当にありがとうございます。
TS-1の流涙のSEについて、本日大学病院で行われた勉強会に行ってまいりましたので、ついコメントをしてしまいました。
大学病院の眼科のDrによると、人工涙液による早期対策はとても重要のようで、ソフトサンティアは勧めて欲しいと言われておりました。
私はいつも下痢や皮膚障害、食欲不振のSEにばかりとらわれていたので、自分の勉強不足に反省していたところです。
yakuzaic様はいつもどのように日々勉強しておられますか??
コメントありがとうございます。
ソフトサンティアの件については、患者さんから教えてもらいました。そのあとMRから詳しく聞きました。
患者さんから教えてもらう、というところで薬剤師失格ですね。
勉強不足を痛感する日々です。
勉強方法は、「興味のあることを調べる」ことだけです。そのため、知識は偏っています。常に勉強方法模索中です。逆に教えてほしいです。
改善しませんでした。