2025年7月4日更新.2,509記事.

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ロキソニンテープは患部で効くのか?プロドラッグの外用薬

ロキソニンテープは患部で効くのか?プロドラッグの外用薬の真実

「ロキソニンテープは貼ると痛みが和らぐけれど、あれって本当に患部で効いているの?」
そんな素朴な疑問を抱いたことはありませんか?

ロキソニンは鎮痛薬として有名で、飲み薬も貼り薬も広く使われています。
しかし、飲み薬は「プロドラッグ」という性質を持つため、「外用薬は直接効かないのでは?」という誤解が根強くあります。

ここでは、ロキソニンの仕組みを改めて整理しながら、経皮吸収後にどうやって効果を発揮しているのかを勉強します。

そもそもロキソニンとは何か?プロドラッグとは?

ロキソニンの有効成分はロキソプロフェンナトリウム水和物です。

「ロキソニン錠」の添付文書(公式の薬の説明書き)には、薬効薬理の欄にこう記載されています。

ロキソプロフェンナトリウム水和物は、優れた鎮痛・抗炎症・解熱作用を有するが、特に鎮痛作用が強力である。本剤はプロドラッグであり、消化管から吸収された後、活性代謝物に変換されて作用する。

この「プロドラッグ」という言葉がポイントです。
プロドラッグとは、「そのままでは活性を持たず、体内で代謝されて初めて薬効を発揮する薬」のことを指します。

ロキソニンの場合、消化管(胃腸)から吸収された後に、カルボニル還元酵素という酵素の働きで活性代謝物(trans-OH体)に変換されます。
この変換を経て、痛みや炎症を鎮める作用を発揮します。

プロドラッグだから貼り薬は効かない?

プロドラッグ=飲んで吸収されて代謝される。
このイメージがあると、「外用薬は患部に直接効かないのでは?」と思ってしまいます。

これは多くの医療関係者や患者さんが一度は疑問に感じる点です。

例えば、ロキソニンテープやロキソニンゲルは、皮膚に貼ったり塗ったりして使います。
「皮膚から吸収されて、そのまま血流に乗って全身に行ってしまうのでは?」
「肝臓で変換されないなら活性代謝物にならず、意味がないのでは?」
こうした声は現場でもしばしば聞かれます。

しかし、実際にはきちんと皮膚から吸収された後に活性代謝物へ変換される仕組みが備わっています。

ロキソニンテープの添付文書を確認する

ロキソニンテープの添付文書の薬効薬理には、以下のように書かれています。

ロキソプロフェンナトリウム水和物は皮膚から吸収された後、活性代謝物trans-OH体に変換され、急性炎症・慢性炎症、疼痛に対して優れた抗炎症・鎮痛作用を示す。

つまり、飲み薬と同様に、経皮吸収後も活性化のプロセスを経て効果を発揮していることが明記されています。

皮膚にもカルボニル還元酵素がある?

では、どこでプロドラッグが活性代謝物に変換されるのでしょうか。

カルボニル還元酵素という酵素は、主に肝臓で働くと考えられていますが、実は皮膚や筋肉にも存在することが分かっています。

経皮吸収製剤(貼り薬・塗り薬)に関する研究では、皮膚組織中でもロキソプロフェンが活性化されることが確認されています。

つまり、ロキソニンテープを貼ると、その場で有効成分が吸収され、局所や周辺組織、血中でも変換が進みます。このため、患部の炎症や痛みの原因に対して局所的に作用することができます。

血中移行と局所作用のバランス

ロキソニンテープは「全身作用」もゼロではありません。
皮膚から吸収された薬剤の一部は血中に移行し、体内を循環します。

しかし、経口薬より血中濃度はずっと低く抑えられています。
それにより、胃腸障害などの全身性副作用が少ないというメリットがあります。

実際に、ロキソニンテープの血中濃度は飲み薬の1/10以下であることが多く、主に局所の高濃度部位で鎮痛・抗炎症作用が期待されています。

飲み薬との比較:どちらが効く?

「貼るだけで痛みが取れるなら飲み薬はいらないのでは?」
そう思う方も多いでしょう。

しかし、作用の強さ・即効性・持続時間は経口薬のほうが優れているケースもあります。
たとえば、急性の激しい痛みには経口薬が推奨されることが多いです。

一方、慢性の筋肉痛や関節痛など、局所的な痛みに繰り返し使う場合には、外用薬が非常に有効です。

患者さんの状態や痛みの性質に合わせて、医師や薬剤師が適切に使い分けています。

実際にロキソニンテープを使うときの注意点

●長時間貼りっぱなしにしない
・添付文書では1日1回、12時間程度の使用が推奨されています。
・肌荒れやかぶれを防ぐために、貼り替えのタイミングを守りましょう。

●副作用に注意
・貼り薬であっても、湿疹・かゆみなど皮膚のトラブルは起こります。
・赤みが強い場合は中止し、医師や薬剤師に相談を。

●全身性の副作用もゼロではない
・飲み薬より少ないものの、まれに胃腸障害や腎機能への影響が報告されています。
・長期使用の際は、定期的に医師の診察を受けることが大切です。

結論:ロキソニンテープは患部で効く

まとめると、ロキソニンテープは

・経皮吸収後にカルボニル還元酵素の働きで活性代謝物に変換される
・局所に高濃度で作用し、痛みや炎症を抑える
・一部は血中移行し、全身作用も補助的に働く

という仕組みで効果を発揮しています。

つまり、プロドラッグだからといって「貼っても効かない」わけでは全くなく、患部でしっかり効いているのです。

痛み止めの貼り薬は、飲み薬に比べて安全性が高いイメージがありますが、きちんとしたメカニズムを理解し、使い方を守ることがとても大切です。
気になる症状があれば、自己判断せず専門家に相談してください。

2 件のコメント

  • 匿名 のコメント
         

    すっきりしました。ありがとうございます。

  • 匿名 のコメント
         

    ずっと疑問でした。ありがとうございました。

コメント


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プロフィール

yakuzaic
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職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
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