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クローズドマウス法とオープンマウス法、どっちがいい?
公開. 更新. 投稿者: 59 ビュー. カテゴリ:喘息/COPD/喫煙.この記事は約4分51秒で読めます.
目次
オープンマウス法とクローズドマウス法― MDI(定量噴霧式吸入器)における吸入指導

吸入療法は、喘息やCOPD治療において中核をなす治療手段です。
なかでも MDI(定量噴霧式吸入器) は長い歴史を持ち、現在でも多くの患者に使用されています。
しかし、MDIは
「薬剤そのもの」よりも「使い方」で効果が大きく左右される薬剤
であり、薬剤師の吸入指導が治療成績を左右すると言っても過言ではありません。
その吸入指導の中で、しばしば話題になるのが、
・オープンマウス法
・クローズドマウス法
という、口元の構え方の違いです。
・両者は何が違うのか
・それぞれのメリット・デメリット
・吸入ステロイド(ICS)との関係
・薬剤師としてどう説明・使い分けるべきか
を、勉強していきます。
オープンマウス法とクローズドマウス法とは何か
MDI吸入における「口元の構え方」の違い
オープンマウス法とクローズドマウス法は、
MDIで薬剤を吸入する際の「口元の構え方」の違いを指します。
クローズドマウス法(閉口式)
・吸入口(マウスピース)を直接口にくわえる
・噴霧と同時に吸気する方法
オープンマウス法(開口式)
・吸入口を口から数cm離す
・噴霧されたエアロゾルを空気と一緒に吸い込む方法
どちらもMDIで実際に用いられてきた吸入方法であり、
一概に「正しい・間違い」と断定できるものではありません。
クローズドマウス法の特徴と利点
① 薬剤の空気中への損失が少ない
クローズドマウス法では、
噴霧された薬剤が直接口腔内に入るため、
・空気中への拡散が少ない
・吸入量が安定しやすい
という特徴があります。
② 手技が簡便で理解しやすい
患者にとって、
「くわえて吸う」
という動作は直感的であり、
・高齢者
・吸入指導が初めての患者
にとっても理解しやすい方法です。
③ デバイス設計と親和性が高い
多くのMDIは、
マウスピースをくわえる前提で設計されているため、
構造上はクローズドマウス法との相性が良いと考えられます。
クローズドマウス法の課題
一方で、クローズドマウス法には明確な注意点もあります。
① 噴霧と吸気の同調が必須
MDIは、
噴霧と吸気のタイミングが合わなければ、効果が大きく低下します。
同調が不十分な場合、
・薬剤が口腔内に噴射されるだけ
・咽頭部で沈着してしまう
といった問題が生じます。
② 口腔内・咽頭沈着が増えやすい
特に吸入ステロイド薬では、
・嗄声
・咽頭違和感
・口腔カンジダ
といった局所副作用が問題になることがあります。
クローズドマウス法では、
粒子速度が速いまま咽頭に当たりやすく、
口腔内沈着率が高くなる傾向が指摘されています。
オープンマウス法の特徴と利点
① 粒子速度が低下し、咽頭沈着が減りやすい
オープンマウス法では、
・噴霧されたエアロゾルが一度空気中で拡散
・粒子速度が低下
するため、
口腔内・咽頭への衝突が減少しやすい
という利点があります。
② 吸入ステロイドの局所副作用軽減が期待できる
特定の吸入ステロイド製剤(例:オルベスコ、フルティフォームなど)では、
・嗄声
・のどの違和感
といった副作用が問題になることがあります。
これらの製剤では、
オープンマウス法によって口腔内沈着を減らすことが、
副作用軽減に有利に働く可能性が指摘されています。
※ただし、すべてのICSで同様に推奨されるわけではありません。
オープンマウス法の注意点
① 薬剤の空気中損失が生じやすい
吸入口を口から離すことで、
・噴霧が周囲に拡散
・吸入されずに失われる薬剤が増える
可能性があります。
② 一般的な手技としてはやや特殊
吸入口をくわえない吸入方法は、
・すべてのMDIで一般的に推奨されているわけではない
・患者にとって分かりにくい
という側面もあります。
「どっちがいい?」への答え
ここまでを整理すると、答えは明確です。
オープンマウス法とクローズドマウス法に、
一律の優劣はありません。
視点①:確実に吸入できるか
・同調が取れる患者 → クローズドマウス法でも問題なし
・同調が難しい患者 → 他の工夫(スペーサー等)を検討
視点②:副作用が問題になっているか
・嗄声・咽頭症状が強いICS使用患者
→ オープンマウス法が検討される余地
視点③:使用薬剤・デバイス
・製剤特性
・添付文書
・医師の意図
を必ず優先する。
薬剤師の吸入指導で重要なスタンス
薬剤師として重要なのは、
・「どちらが正しいか」を決めつけない
・患者ごとの吸入成功率を高める
という姿勢です。
確認すべきポイント
・噴霧と吸気は合っているか
・吸入後に息止めができているか
・口の中に薬が残る感覚はないか
これらを確認することで、
方法論以上に治療効果を高めることができます。
まとめ
・オープンマウス法とクローズドマウス法は、MDI吸入時の口元の構え方の違い
・クローズドマウス法:薬剤損失が少なく、手技が簡便
・オープンマウス法:口腔内沈着を減らし、特定ICSで副作用軽減に有利
・一律の推奨はできず、薬剤・患者・目的に応じた使い分けが重要
吸入指導は、
薬剤師が治療効果に直接関与できる貴重な場面です。
「どちらが正しいか」ではなく、
「この患者にとって、どの方法が最も確実か」
という視点で、吸入指導を行っていきましょう。




