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緑内障に抗コリン薬は禁忌?
公開. 更新. 投稿者:下痢/潰瘍性大腸炎.この記事は約6分58秒で読めます.
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緑内障に抗コリン薬は禁忌?
抗コリン作用を持つ薬(抗コリン薬のほか、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン系薬剤、抗不整脈薬など)は緑内障症状を悪化させる可能性があるため、緑内障患者への使用は注意を要します。
抗コリン作用をもつ薬剤は、副交感神経末梢のムスカリン作用を遮断することで散瞳を引き起こします。散瞳すると、相対的瞳孔ブロックにより隅角閉塞が引き起こされ、眼房水の排泄がスムーズに行われなくなって眼圧が上昇し、緑内障の発作を起こすと考えられています。
添付文書の記載には、「緑内障」とだけ書かれている薬もあれば、「閉塞隅角緑内障」「急性狭隅角緑内障」と記されているものまでさまざまでしたが、2019年7月に禁忌の記載が「緑内障」のものが「閉塞隅角緑内障」に変更となりました。
緑内障に禁忌だった薬
PL顆粒
フスコデ、アストフィリン
ポララミン、ペリアクチン、ゼスラン、セレスタミン
トラベルミン
ロートエキス、ブスコパン、トランコロン、チアトン、コランチル
ポラキス
トリプタノール、アナフラニール、アモキサン、ルジオミール
アーテン、アキネトン
リスモダン
緑内障と抗コリン薬
以前は、抗コリン薬は緑内障に禁忌とされていたが、同薬で眼圧上昇の可能性があるのは閉塞隅角緑内障のみである。
ただ、開放隅角緑内障の眼が加齢とともに閉塞隅角の要素を伴うことがある。
また、虹彩光凝固術や眼内レンズの挿入により使用できるようになる。
禁忌は未治療の閉塞隅角緑内障だけ?
緑内障は、隅角の閉塞がない「開放隅角緑内障」と、虹彩根部によって閉塞している「閉塞隅角緑内障」の2種類があります。
多くみられるのは、開放隅角緑内障で、眼の排出管が数カ月から数年かけて徐々に詰まっていきます。房水は正常に産生されているのに排出が少しずつしか行われないため、眼圧が徐々に上昇します。
閉塞隅角緑内障は、開放隅角緑内障に比べるとはるかに頻度の低い病気で、房水の排出管が突然詰まり、あるいはふさがってしまいます。房水の産生は続いているのに排出が突然止まるため、眼圧が急に上昇します。
抗コリン薬が禁忌なのは、未治療の閉塞隅角緑内障のみです。
閉塞隅角緑内障では、隅角の閉塞により眼内からの房水の流出が滞り、眼圧が上昇すします。この状態で抗コリン作用のある薬剤を使用すれば、散瞳により隅角がさらに閉塞し、眼圧上昇が亢進する危険があります。
しかし、隅角の閉塞がない開放隅角緑内障や、閉塞隅角緑内障でも既にレーザー虹彩切開術などの手術を受けている患者では、抗コリン薬の投与で隅角が閉塞しても眼圧上昇が起こるリスクはないため、禁忌ではありません。
催眠鎮静剤・抗不安剤のベンゾジアゼピン系薬剤の抗コリン作用については、弱い抗コリン作用を有するという報告がある一方で、作用を有していないとする報告もあり、結論は出ていないようです。緑内障に対して禁忌とする実験的報告も症例もないのが現実です。
以上を考えると、緑内障の患者であっても眼科医に診てもらっているような患者に対しては抗コリン作用を持つ薬でも処方して問題ないと思われます。
狭隅角緑内障と閉塞隅角緑内障
これまで、狭隅角緑内障と閉塞隅角緑内障という病名は同一視され、混在して使用されていました。しかし、狭隅角緑内障という病名は、閉塞隅角がある緑内障であるのか、閉塞隅角がない緑内障であるのかがあいまいであるため、緑内障診療ガイドライン第2版(2006年)において、「狭隅角は隅角が狭いという状態を表現するにすぎず、隅角閉塞機序が存在することを意味しない。狭隅角の原発開放隅角緑内障はありうるので、狭隅角緑内障の用語は用いるべきではない。」と記載し、日本緑内障学会から、狭隅角緑内障という診断名は閉塞隅角緑内障に対する診断名として用いることは適切ではないと提言されました。
PL顆粒は緑内障に禁忌?(過去記事)
緑内障は眼圧上昇機序により「開放隅角」と「閉塞隅角」の2種類に大別される。
薬理学的には、抗ヒスタミン薬の抗コリン作用により眼圧が上昇するのは閉塞隅角緑内障のみとされており、PL配合顆粒は開放隅角緑内障に使用しても問題はないはずである。
しかし、2004年8月に行われた添付文書改訂で、重大な副作用に「緑内障」が追記された。
これは、PL配合顆粒との因果関係が否定できない緑内障の報告が3例集積されたことを受けたものである。
また、開放隅角緑内障であっても、毛様筋の弛緩により眼圧が上昇する場合があるとの報告もある。
見解は様々であるが、添付文書で「緑内障に禁忌」となっている以上 、開放隅角緑内障でも疑義照会の対象になる。
頻尿治療薬と緑内障
ベシケア(コハク酸ソリフェナシン)は、抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状が悪化するおそれがあることから、閉塞隅角緑内障の患者には禁忌である。
「閉塞隅角緑内障」患者においては、抗コリン剤使用によって、副交感神経末端のムスカリニックアセチルコリンレセプターを遮断することで瞳孔括約筋を弛緩させ、散瞳を引き起こしやすくなると考えられる。
散瞳すると虹彩が縮んで隅角を物理的にふさぎ、房水の流出が妨げられるため急激な眼圧上昇を誘発し、緑内障を悪化させる可能性がある。
一方、「開放隅角緑内障」では、抗コリン薬を投与してもほとんど問題ない。
本緑内障は、線維柱帯での房水の流出が滞ることで起こるため、散瞳しても隅角に十分な隙間があるため、房水の流れが妨げられるとは考えにくい。
「閉塞隅角緑内障」の患者は、全緑内障患者の約1割程度にすぎない。
大半は眼圧が正常な「開放隅角緑内障」(正常眼圧緑内障)である。
「閉塞隅角緑内障」との診断がなされていてもレーザー虹彩切開術などの予防的処置が施されている患者においては、抗コリン作用や交感神経刺激作用を有する薬剤の内服により眼圧が上昇して緑内障悪化を招く可能性はほとんどないと言われている。
しかし、「閉塞隅角緑内障」の患者の中には、合併症のリスクへの配慮からレーザー虹彩切開術などの治療をせずに経過観察しているケースもまれにあるので、基本的には、「緑内障に禁忌の薬剤」が処方された場合には、必ず眼科医へ問い合わせるべきである。
ブラダロン(フラボキサート塩酸塩)は、弱い副交感神経抑制作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させるおそれがあることから、緑内障患者には慎重投与となっている。
しかし、ベシケア等と比較してブラダロンの抗コリン作用は弱いので変更の選択肢の1つである。
目の形状が球体に保たれている理由
目の形状は、眼圧(目の硬さ)が一定であるために球体に保たれています。
これは毛様体でつくられる房水が水晶体や角膜に栄養を補給して、隅角から流れ出ることにより一定量に保たれることで、眼圧が一定になっています。
毛様体筋と瞳孔括約筋は、副交感神経の刺激により収縮します。
毛様体筋の収縮は、房水の流出抵抗を少なくし、瞳孔括約筋が収縮すると、瞳孔も収縮し隅角が広がり、その結果房水が移動するので眼圧が低下します。
そのため抗コリン成分(抗ヒスタミン薬など)は副交感神経の抑制作用があるので眼圧を上昇させます。
緑内障
通常、毛様体の上皮細胞から房水が分泌され、角膜や水晶体への栄養補給と代謝産物の除去を行い、眼球内の圧力を一定(正常の眼圧は10~20mmHg) に保っています。
緑内障は房水の産生と排泄のバランスが崩れて眼内圧が亢進し、視野が欠損する疾患で、一度視神経が障害されると元には戻らないため、早めの治療が大切です。
閉塞隅角緑内障
房水の出口である隅角が虹彩によってふさがれ、水品体と虹彩の間が狭くなり、房水が抜けにくくなることで眼圧が上昇するのが閉塞隅角緑内障です。
「緑内障に禁忌」とされる薬物がありますが、特にこの閉塞隅角緑内障では薬物が引き金になり、急激な眼圧上昇を起こす急性緑内障発作( 眼痛、頭痛、吐き気などの激しい自覚症状。眼圧は50mm Hg、極端な場合はlOOmmHg) を起こすことがあるので注意が必要です。
治療が遅れると失明することもあります。片目だけに起こるのが特徴です。
開放隅角緑内障
隅角は開いていますが、房水排出路の一つである線維柱帯とその奥にあるシュレム管が目詰まりを起こし、うまく房水が流出されないために眼圧が上昇するのが開放隅角緑内障で、全体の約90%を占めます。
緑内障に禁忌の薬は無くなった。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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