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鉄剤をお茶で飲んじゃダメ?
公開. 更新. 投稿者:血液/貧血/白血病.この記事は約3分17秒で読めます.
9,369 ビュー. カテゴリ:鉄剤をお茶で飲んじゃダメ?
鉄剤を飲んでいる間は、お茶を飲んだらダメ、とよく言われます。
お茶に含まれるタンニンと鉄がくっついて吸収が悪くなるためです。
飲むときには2時間は空けたほうがいい。と、昔はよく説明されていました。
しかし、現在はこのように説明することはあまりありません。
鉄剤に含まれる鉄の量は多いので、吸収が阻害されてもほとんど問題が無く、お茶で飲んでも大丈夫という見解です。
しかし添付文書には、併用注意としてタンニン酸を含有する食品が挙げられています。
「お茶を飲んだから薬を飲まなかった。」ということになってはいけませんが、お茶が鉄剤の吸収を阻害するのは事実ですので、水で飲むように啓蒙することも薬剤師的には必要。
あと、タンニンを含有する下痢止めでタンナルビンという薬がありますが、この薬は鉄剤との併用が禁忌になっています。鉄のほうには問題ないけど、タンニンの働きは妨げてしまいます。
お茶に含まれるカテキンはタンニンと同じような性質なので、健康にいいという理由でお茶を飲んでいる方には「カテキンの吸収を妨げます」と言ったほうがよいのかも知れません。
薬をお茶で飲んじゃダメ?
薬をお茶で飲んではいけません、という理由にはいくつかあります。
鉄剤のように、お茶に含まれるタンニンと結合して吸収が妨げられてしまう場合。
テオフィリン製剤のように、お茶に含まれるカフェインの影響が考えられる場合。
影響はそれほど大きくないとして、何で飲んでもいいよ、と説明するケースが多いですが、やはり基本は水で飲むのが常識です。
まだまだ未解明の相互作用もあるので、リスクはなるべく減らすためにも、水で飲むのが無難です。
鉄剤をコーヒーで飲んじゃダメ?
お茶と言うと、緑茶を想像しますが、コーヒーやその他のお茶類にもタンニンは含まれる。
各種飲料のタンニン含有量は以下の通り。
品名 含有量(㎎/dL)
コーヒー 110
インスタントコーヒー 52
うすい緑茶 18
濃い緑茶 100
紅茶 37
煎茶 31
ウーロン茶 32
麦茶、はと麦茶、あまちゃづる茶はタンニン含有量 0
鉄剤の吸収を妨げるのはもちろん、食品中の鉄の吸収も妨げるので、貧血気味の患者はお茶を飲むのを控えたほうがよいという話もある。
鉄分を多く含む食品は、レバー、カキ(牡蠣)、カツオ、納豆、小松菜、ヒジキなど。
鉄分(鉄)には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類がある。
前者は、肉や魚など動物性食品に多く含まれる吸収率の良い鉄分。
後者は、野菜や豆類、海藻など植物性食品に多く含まれるが、ヘム鉄に比べて吸収率が格段に低い。
非ヘム鉄を効率よく取るには、「ビタミンC(野菜、果物)やタンパク質(肉、魚)と一緒に食べると吸収が良くなります。
両方の鉄分をバランス良く取ることと、1日3食こまめに取るようにすることが大切です。
食事中や食後すぐのお茶やコーヒーは、タンニンが鉄分の吸収を妨げるので避けたほうが良い。
鉄剤の併用注意
鉄剤の添付文書には併用注意として制酸薬、タンニン酸を含有するもの(濃い緑茶、コーヒーなど)が記載されており、いずれも「同時に服用することを避ける」とあります。
制酸薬(酸化マグネシウム、プロトンポンプ阻害薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬)は胃内pHの上昇により難治性の鉄重合体を形成し、鉄吸収が阻害されます。
牛乳は添付文書に記載がありませんが、牛乳中のリン酸塩やホスホプロテインと鉄が結合して高分子のキレート化合物を形成し、鉄吸収が阻害されると考えられています。
ただし、理論上と実際の臨床とは相違があります。
・鉄欠乏性貧血の患者は体内の鉄量が減少しているため、腸管からの鉄吸収が亢進しており、吸収率が良い。
・徐放性鉄剤は短時間で制酸薬などと混ざっても大きな問題にはならない。
・鉄剤には吸収量よりも過剰量の鉄が含まれている。
以上から、臨床上では「徐放性鉄剤と制酸薬、お茶、牛乳との服用間隔を空ける必要はない」との見解も出てきています。
徐放性製剤ではなく、普通錠のクエン酸第一鉄(フェロミア)ではどうでしょうか。
非イオン型鉄剤であるフェロミアは、クエン酸と鉄が低分子キレート化することにより、酸性から塩基性に至る広いpH領域で溶解するので、硫酸鉄やフマル酸第一鉄より腸管からの吸収が良好な製剤となっています。また、イオン型鉄剤と異なり、鉄イオンを放出しないで低分子ポリマーとして吸収されるので相互作用を受けにくいと報告されています。その報告では、アスコルビン酸を併用しても吸収効率は変わらないと記載されています。
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