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イトリゾールとラミシールの違いは?
公開. 更新. 投稿者:皮膚感染症/水虫/ヘルペス.この記事は約5分31秒で読めます.
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イトリゾールとラミシールはともにケラチンに対して親和性が高いので、皮膚や爪へ早く移行し、一度爪に入ると長期間そこに貯留するという特性も有しているため、爪白癬に頻用されます。
ラミシールは白癬菌に対してより強い抗菌活性を有していますが、抗菌スペクトルは狭いため、癜風や内臓真菌症には適応がありません。
また、ラミシールは重篤な肝障害のほか、血液障害をきたすこともあり、死亡に至った例もあることから、投与中は定期的な肝機能・血液検査など、観察を十分に行う必要があるとして警告が発せられています。
イトリゾールには併用禁忌薬・注意薬が多く、慎重な投与が必要です。
両剤は投与方法、薬剤費、使用上の注意事項なども異なるので、投与時にはこれらに十分な注意を払う必要があります。
イトリゾールとラミシール
日本皮膚科学会ガイドライン(2009)では、抗真菌薬の内服療法において短期間で投薬を終了させたい場合はITCZパルス療法が、治癒率を優先する場合はTBFが望ましいとされている。
また、英国の爪真菌症ガイドラインではTBFが第1選択薬、ICTZは代替治療薬とされている。
これは、英国を含めた諸外国のTBF常用量(250mg/日)とわが国における常用量(125mg/日)が異なること、海外でのTBF投与期間が3ヶ月間であるのに対し、わが国では6ヶ月間投与となっているなどの違いがあるためと考えられている。
TBFはITCZと比べ抗菌活性が強いとされ、皮膚糸状菌(白癬)が原因菌であれば治療において第1選択薬となる。
TBFは承認時、海外において重篤な肝障害および汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少での死亡例の報告があったため「警告」が設定され、投与前と最初の2ヶ月は月1回の肝機能検査および定期的な血液検査を行う必要がある。
TBFにはCYP2D6阻害作用のあることが知られており、CYP2D6によって代謝される薬剤(抗うつ薬など)の併用には注意が必要となる。
ICTZはケラチンとの結合率が99.8%と高く、投与後速やかに血漿中から爪に移行して持続的に効果を及ぼす。
どっちがいい
若年者では服用期間の短いパルス療法のほうがコンプライアンスがよい。
既に複数の薬剤を常用していることの多い高齢者では、併用禁忌・注意の多いイトラコナゾールよりもテルビナフィンの継続投与が選択されることが多い。
イトリゾール
トリアゾール系の抗真菌薬で、幅広い抗真菌スペクトルをもつことから、表在性皮膚真菌症のみならず、深在性皮膚真菌症、内臓真菌症にも有効です。
真菌のチトクロムPー450を特異的に阻害することにより、真菌細胞膜の主要成分であるエルゴステロールの合成を阻害し、低濃度では膜透過性の変化を起こし静菌的に、また高濃度では殺菌的に作用します。
脂溶性で消化管からの吸収が悪いので、食直後に内服します。
投与中止後も、爪内には6〜9ヶ月間残存し、効果を発揮します。
爪白癬に対するイトラコナゾールのパルス療法は400mg/日を1週間連日服用し、その後3週間休薬、これを3サイクル繰り返します。
ラミシール
アリルアミン系の抗真菌薬で、白癬菌に対してきわめて強力な抗真菌活性をもっています。
本剤はスクワレンエポキシダーぜを選択的に阻害し、膜の構成成分であるエルゴステロールの合成阻害をもたらすとともに、蓄積したスクワレンが細胞膜に障害作用を及ぼすことにより、強い殺真菌作用を示します。
脂溶性でケラチン好性のため、爪に蓄積しやすく、爪内には数ヶ月間残存し、効果を発揮します。
通常、爪白癬に対し125mg /日を連日3〜6ヶ月内服します。
アリルアミン系抗真菌薬はイミダゾール系抗真菌薬とは異なり、真菌細胞内のスクアレンエポキシダーゼを選択的に阻害して、スクアレンの蓄積ならびにエルゴステロール含量の低下をもたらし、抗真菌作用を発揮するという特徴がある。
イトリゾールの服用は6ヶ月まで?
イトリゾールの添付文書には、以下のように書かれている。
爪カンジダ症、カンジダ性爪囲爪炎に対して、長期(6ヵ月程度)にわたって投与しても症状の改善が認められない場合には、本剤の投与を中止する。
6ヶ月で治らなければ中止。
ラミシールにはそのような記載は無い。
しかし、6ヶ月もすれば爪は生え変わるだろう、と推測はされる。
6ヶ月飲んで何の変化もみられなければ、投与は中止したほうがいいだろう。
長期投与をしてはいけない理由
①もったいないから。
②耐性菌が増えるから。
③副作用の恐れ。
ただラミシールの添付文書には、
サルへの長期大量(150mg/kg以上)経口投与により網膜上に黄白色点が発現したとの報告があるので、本剤を6ヵ月以上の長期にわたり投与する場合には眼科学的検査を実施することが望ましい。
と書かれている。
ラミシールによる肝機能障害からくる黄疸の兆候とは違うのかな。
イトリゾールと下痢
抗菌剤の副作用では下痢が多い。
抗菌剤が腸内細菌もやっつけてしまうためだ。
抗真菌薬は腸内細菌に働くわけではないのですが、イトリゾール内用液では下痢の副作用が多いらしい。
イトリゾール内用液の添付文書の副作用には、
下痢・軟便(5.6%)
と、多めの頻度。
「重要な基本的な注意」にも以下の記載が見られる。
添加物であるヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンに起因する胃腸障害(下痢、軟便等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
その理由は、溶解補助剤として含まれているヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)にあるらしい。
HP-β-CDはブドウ糖を構成単位とする環状オリゴ糖であり、腸管内で浸透圧亢進により水分を保持する作用がある。
そのため、アスパルテームやキシリトールなどの難吸収性の多糖類を大量に摂取したときと同様に、下痢や軟便などの症状を起こすことがある。
国内での治験では、内用液はHP-β-CDによるものとみられる下痢や軟便などの胃腸障害が26.4%と、カプセル剤より頻度が高かった。
この胃腸障害は通常、投与中止または止痢剤投与によって治まるとされている。
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